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ニンゲンという生き物は、少なからず闇を抱えないと生きていけない生き物だと思う。
二十数年生きてきて、実感したこと。
…あと数十年は、生かされたと言う方が正しいな。
…元社員くんは、どう思う?
割れたガラス、蜘蛛の巣だらけの壁、ヒビの入ったテレビジョン。
『うわぁ…懐かしい…』
人間という生き物は中々優秀な様で、
これだけボロボロになった元勤務先も
在りし日の美しい状態の記憶で現実を補完する。
『ハギーのイラストも剥げちゃったなぁ…ごめんね…』
Helloと手を伸ばす、会社のマスコットハギーワギー。
この子のおかげで、会社は財政難を乗り越えたとか。
悪いけど、子供達の趣味は不思議としか言いようがない。
『にしても…たった数十年でここまでひどくなるとは思わなかったな…』
目線をずらし、荒れた室内を見渡す。
…散らばったおもちゃに、血がついている気がするが、…
『…気のせいだよな…。…早く進もう。』
迷いなくギフトショップに向かい、
宙に浮くレールを走るファンシーな記者を見上げる。
『…緑、ピンク、黄色、赤だね…』
なぜ汽車が動いているのかは考えないように、
向かいにある事務室に向かう。
…視線はきっと気のせいだと思いながら。
『……よし、あいた…』
カラーパネルに色を打ち込むと、すぐに軋んだ音を立てて扉が開く。
目の前にはロビーと同じように荒れた部屋。
『ここもか…なんで椅子まで倒れたりしてるんだか…』
そう呟きながら、壁に設置されているグラブパックを出そうとする。
『…あ、説明見ないと開かないんだっけ…動くかなこのテレビ…』
伸ばした手を止めて、壁に繋がれたテレビを見上げる。
ヒビが入ってはいるが、断線したりしていなければおそらく使えるだろう。
落ちていたVHSを拾い上げ、再生機に入れる。
『…不気味だなぁ…古いからそう思うだけかな…』
少し掠れたBGMと、
なかなかにグロテスクな3Dの説明。
…初めて見た時は驚いた。
『あ、開いた…うわ〜懐かしい感覚…』
ガラスの扉がゆっくり開き、
赤と青の基本的な状態になっているグラブパックに触れる。
背中に背負うと触れる人工的な冷たさは、昔と変わらなかった。
『これで大体どうにかなるし…よし、進もう。』
動かない入場ゲートを飛び越えると、
青いグラブパックがキーの扉。
『…よ…』
さて、花とやらを探さないと。
「おかえり、そしてようこそ。」
「この地獄へと。元会社員くん。」
「ポピープレイタイムは、」
「心からの喜びを君に伝えよう。」