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10話 「昼下がりのまどろみ」
雲ひとつない午後。
俺は裏庭の木陰に置いた椅子に身を沈め、心地よい風を浴びていた。
ふわりと香る干し草の匂いと、遠くで聞こえる街のざわめき。
――ああ、これだ。このために冒険者やってる。
「……また昼寝?」
ミリアの呆れ声が聞こえた。
「仕事もしてるぞ。ちゃんと依頼受けて、ちゃんとこなして、ちゃんと……寝てる」
「最後のだけ力入れすぎ!」
俺が薄目を開けると、ルーラが家の方から静かにやってくるのが見えた。
手には大きな布を抱えている。
「……掛ける」
そう言って、俺の上にふわりと布を掛けてくれた。どうやら家で干していた毛布らしい。
「お、おお……ありがとな」
ルーラは無言で小さく頷き、また家の中に戻っていった。
あれは気遣いなのか、それとも単に埃が気になっただけなのか……判断がつかない。
ミリアはニヤニヤしながら俺の顔を覗き込む。
「ふーん、あのルーラがねぇ。意外と懐いてるじゃない」
「いや、まだだ。あれは……多分、温度管理だ」
「言い訳が苦しい!」
結局、ミリアの笑い声を子守歌にして、俺は再びまぶたを閉じた。
こうして、何事もない午後は過ぎていく。
――平穏ってのは、案外贅沢なもんだ。