テラーノベル
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面接の当日、昼過ぎにトモエとイオンはホワイト・リズムの事務所で待ち合わせた。相手に二人の素性をけどられないように、電車で港区の倉庫街の指定された場所へ行く事にしていた。
四月にしてはやや肌寒い日だったので、トモエは地味目のブラウスとひざ丈のスカート、足元はヒールが低いパンプスという服装だった。マウンテンパーカーを肩に引っかけてやって来たイオンのいで立ちを見てトモエは思わず目を見張った。
イオンは、胸元が大きく開いたタンクトップ、デニムのショートパンツ、赤いスニーカーという服装でトモエの前に立った。ショートボブの茶髪と似合ってはいたが、トモエは遠慮がちに言った。
「イオンさん、いつにもまして露出度高いですね。寒くないですか?」
イオンは右手を乳房の下にあてて、見事なサイズのバストをゆさゆさ揺らしながら言った。
「この方が馬鹿っぽく見えていいでしょ? 狙いが狙いだからねえ」
それから電車で、なるべく周りに人が少ないスペースに立ち、トモエがどうすれば怪しまれる事なく、途中で出て行く事ができるか、イオンはトモエに入念にセリフを教え込んだ。
倉庫街に入ると海からの風が重いの他強く、トモエは首筋までの長さの自分の髪が跳ね上がらないように押さえながら歩いた。やがて倉庫が並ぶ谷間のような場所にプレハブの小さな小屋のような建物が見えた。
スマホの地図と照らし合わせてその場所に間違いない事を確認すると、イオンが先に立って入り口のドアを少し開き、中にいた中年の目つきの鋭い男に声をかけた。
「こんちわあ。バイトの面接に来たんですけど、ここで合ってますか?」
男はパイプ椅子から立ち上がってドアを大きく開き、イオンに訊いた。
「昨日テレグラムで連絡して来た人かい?」
「そうだよ、これ」
イオンがにこやかな笑みを浮かべてスマホの画面を男の目の前に差し出した。男はそれを見て、二人を手招きした。
「ああ、ここだよ。そっちが一緒に応募する友達かい?」
トモエは精一杯の作り笑いを顔に浮かべたが、その笑顔が引きつっていないかどうか、自信がなかった。中に入って安っぽい机の前の椅子に座るや否や、イオンはマウンテンパーカーを脱いで露出した肌を見せつけた。
男が無遠慮にイオンの体を眺めているのにトモエは気づいた。トモエは春物のコートを脱がずに、イオンの隣に座った。男が机の反対側に腰かけて話を始めた。
「さて、バイトの内容なんだが、簡単に言えば男性のお相手をしてもらうんだよ。出来るかな?」
やっぱりそう来たか、とトモエは思って身を固くした。イオンはニコニコした表情を崩さず、はしゃいだ声で訊いた。
「で、いくらぐらいお金もらえるの?」
男はにやりと笑って答えた。
「君たちにとっちゃ、かなりの大金のはず、とだけ言っておくよ。これ以上の詳しい事は、引き受けるという返事の後でなきゃ話せない」
「え、ええと……」
トモエは電車の中でイオンに言われたセリフを必死に思い出しながら、懸命に言葉を発した。
「その相手ってどれぐらいの年の人ですか? おじさんじゃないでしょうね」
男は少し唇を歪めて答えた。
「まあ、君たちから見りゃおじさんだろうな」
トモエは声が裏返りそうになるのを必死に我慢しながら言葉を続けた。
「え~。あたし、おじさんは無理。すいません、あたしはパスしていいですか?」
男が別に残念そうでもない口調で言った。
「ああ、いいよ。やる気が大事だからねえ、どんな仕事でも」
イオンが打ち合わせ通りに声を上げた。
「ええ? やらないの? いい話だと思うけど」
トモエも打ち合わせ通りに演じた。
「あたしはあんたほど金に困ってないから。ごめん、あたし先に帰るね」
そう言ってトモエは立ち上がり、男にちょこんと頭を下げてプレハブの事務所を出た。残ったイオンに男は訊いた。
「で、君はどうする?」
イオンはニコニコしたまま即答した。
「ボクはやるよ。要するに、どっかのおじさんと一回エッチすれば大金もらえるって話だよね?」
男はにやりと笑って答えた。
「ほう、察しがいいねえ。ま、そんなとこだ。じゃあ詳しく説明するけど、こっから先はさっきの友達にも話しちゃいけないよ。いいかい?」
「もちろん! やる、やる。今マジで金欠でホストクラブの推しに貢ぐお金が要るんだ、ボク」
トモエがホワイト・リズムの事務所に戻ると、ヒミコとトワノが待っていた。早速ヒミコが訊いて来た。
「どないやった? 面接の様子は?」
トモエは大きく安堵の息を吐きながら答えた。
「多分上手く行ってると思います。面接した男の人、いやらしい目でイオンさんの方ばっかり見てましたから」
トワノがノートPCの画面を見ながらトモエとヒミコに言った。
「イオンさん、潜入成功したみたいですよ。事務所とは反対の方向に移動してますから」
トモエがPCをのぞき込むと、赤い点が地図の上をゆっくり動いていた。イオンのスマホからのGPS位置情報らしい。トモエがヒミコに訊いた。
「イオンさん、ここには帰って来ないんですか?」
ヒミコは椅子の上でパンツスーツの脚を組み替えながら答えた。
「この件が片付くまで、イオンはウチが用意した新宿の安アパートに滞在する。ここに戻って来たら尾行しとる奴にウチらの居場所を知らせる事になるさかいな。トモエ、数日中にイオンから、一緒に外で晩御飯食べようという電話があるはずや。連絡係の役目、頼むで」
コメント
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おおおおお待ってました第33話!!😭💕 トモエとイオンの服装対比めっちゃ面白かった〜!イオンの「馬鹿っぽく見える作戦」、確かにそういう手もあるのかって納得しちゃったよ笑 面接シーン、めっちゃ緊張した…!トモエが必死に台詞思い出してるところとか、こっちまでドキドキしたよ。イオンさんの「推しホストに貢ぐ金が要る」ってアドリブ感ある台詞も良きでした✨ GPSでちゃんと動き追えてるの見てちょっと安心したけど、今後の飯の誘いがどう転ぶか…続きが気になりすぎる!!!