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「藍‥‥俺たち別れよう‥」
そう言われたのは代表の合宿の一か月前。
‥‥話があるからと貴方に呼ばれた。大好きな貴方
に呼ばれ、駆け足で俺は、とある体 育館に向かう。
‥最近ずっと多忙だったからなかなか会えなかい
日々 が続いていた。その日のイベントが終わ り、急いで 携 帯を見ると、貴方からの着信‥‥‥
‥‥その日は1日中雨だった。大粒の雨が体育館の大 きな窓ガラスに当たるのを窓越しから一人眺めて いた。
祐希さん、大丈夫かな。
気になって外の様子を見に行こう、と思ったと き、練習場の扉が開く。
「‥待たせてごめん」
全然大丈夫、久しぶりに会えたのが嬉しくて俺は
急いで祐希さんの元に駆け寄る。
近くまで来て自分より少し背の高い顔 を見上げる‥
「一週間ぶりですねッニコッ!」
「‥‥」
笑う俺を見ても、祐希さんの表情はどことなく暗い‥。
‥‥どうしたんやろ?いつもと‥違う?
「‥ゆ、祐希さん?どうしたんっすか?何かあっ
たんですか?」
「‥‥藍、話があるって言ったよね?」
「はい!‥‥話ってなんですか?」
あのさ‥‥そう言うと、祐希さんは少し俯き、沈黙
が続く。俯いてるせいで表情がよく見えない。で
も、漂う不穏な空気に俺の心は次第にザワザワし
始める。
「あっ、あの祐希さ‥」
「藍」
「!!」
急に名前を呼ばれてドキッとする。そんなに大き
な声で呼ばれた訳じゃない。でも、いつの間にか
俺を真正面から見つめる強い瞳に囚われ、心臓が
ドクッと跳ねる。
「藍‥‥俺たち‥‥元の関係に戻ろう‥」
えっ‥‥‥
「‥‥好きな人が出来たんだ」
「‥‥」
「だから、ごめん」
「‥‥」
祐希さんの言葉を 理解するのに俺は必死だった。 突然頭を殴られたような感覚に、クラっとくる。
なん‥て?
祐希さんは‥‥なんて言ったの?
思考が追いつかない。でも、目の前の祐希さんは
確かに言った‥‥
「藍‥‥俺たち別れよう‥」
体育館には大きな雨音だけが響き渡っていた‥‥‥
それからどうやって帰ったのか記憶にない。
祐希さんと交わした言葉も覚えていない。
気がつくと、自分の部屋にたどり着き‥座り込ん
でいた。ポタポタと、髪の毛からもTシャツから
も雫が溢れて床に落ちるのを気になる事もなく、
ただ、床に溜まった水滴を眺めていた‥
‥‥俺、振られたんやな‥祐希さんに‥‥
突然の事に泣くことも出来ず‥ただ、床を眺めて
いた‥‥
祐希さん‥‥‥
俺はふと、思い出す。
ーーー半年前、テレビ番組の収録後に二人で帰る道中‥‥‥楽 しかったっすね!ONAIRなるかな?なんて笑いな がら話していると‥
ねぇ藍‥‥俺を見つめたまま祐希さんは 、そっと手 を握って立ち止まった。
「藍‥‥俺、お前が好きだよ」
「‥‥へ?」
「‥‥す‥‥好き?‥‥あっ、ああ〰俺も好きっすよ!
祐希さんは憧れの先輩っすから」
「‥違う」
「えっ?」
「俺の好きは‥違う。先輩とか後輩とかじゃなく
て、恋愛の意味での好きっていう意味なんだけ
ど‥‥」
だから、付き合って欲しい‥最後の言葉は俯いた
ままボソッと呟くように言われた。そんな祐希さん
の顔を覗き込むように見ると、見んな って//と顔を真っ赤にしていた。
嬉しかった。
とても。
俺も同じ気持ちだっから。
はじめて、出会った時からひと目見て恋に落ち
た。
「よろしくお願いします 」
僕の言葉を聞いて、祐希さんは握ったままの手を
引いて歩きだす。そんな祐希さんの顔を見つめる
と、夕陽に照らされてるせいもあるのか、真っ赤
に染まっていた。首まで真っ赤だ。
それを見て思わず笑みがこぼれてしまう。
笑うなよ‥‥少し口をとがらせて拗ねる貴方を見
て、幸せだなと思った‥‥
いつまでも続けばいいと思った‥‥‥そんなまるで
子供のような恋愛は、たった半年で終わりを迎え
た‥
まるで通り雨のように‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥。