コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
立て続けに発生した襲撃事件は、全て相手が真正面から攻めてきたこともあり施設に被害はなかったが人的な被害が出ていた。ただでさえスタンピードで甚大な被害を受けた警備隊はその戦力を著しくていたので、その損害は軽視できるものではなかった。
そこでシャーリィは警備隊に幹部を投入して質で対抗することとした。
具体的にはカテリナ、ルイス、そしてエレノアと海賊衆である。更にシャーリィの護衛であるベルモンドも巡回に参加。シャーリィが手薄になることを皆が危惧したが、ベルモンドが警戒中シャーリィはダンジョンに滞在することで安全性を確保することに成功する。
「一番の安全地帯ですからね。万が一の時はお願いします、マスター」
『うむ』
ワイトキングであるマスターが支配するダンジョンは、内装なども自由自在で鉄壁の防御を誇るといって良い。
シャーリィの後を付けてダンジョンへ侵入した『血塗られた戦旗』の構成員が三人程居たが、全て用意されたトラップや魔物の餌食となった。
ごきげんよう、シャーリィ=アーキハクトです。人手が足りないのでベルも警備隊に組み込んだら業務が終わるまでダンジョンに放り込まれることになりました。私が館でじっとしているとは思えないとの事。解せぬ。
『勇敢なる少女よ、スタンピードを乗り越えたこと。称賛に値する』
マスターからお褒めの言葉を頂きました。
「はい、皆と力を合わせて乗り越えることが出来ました。しかしながら、自分自身の無力さを思い知らされました」
私が勇者様の力をもっと上手く使うことが出来れば、被害も最小限に留めることが出来たでしょう。これは、痛恨の極みです。
『その目映いばかりの光。勇者の剣を得たか』
私の腰に吊るした柄を見てマスターが感慨深そうに呟かれた。光を発しているわけではありませんが、魔力を見ることが出来るマスターにはその様に見えているのでしょう。
「はい、勇者様と心を交わすことも出来ました。ただ、それ故に弊害もありまして」
『申してみよ』
私はマスターに促されて、マリアとの出会いと確執をお話ししました。私個人としての想いもありますが、マリアを直視すると平静を失ってしまうのです。心を埋め尽くすような、憎しみの感情を制御することが難しい。
『ふむ、魔王様の力を持つ少女か。そなたと相反する存在故、その様なこともあろう』
「私は勇者様ではありませんし、マリアも魔王ではありません。それでも、ですか?」
『因果とはその様なものである。そなたらが持つ力が、互いに反発するのだ』
傍迷惑な因果ですね。この力には感謝しますが、それによって帝国最大の宗教組織である『聖光教会』を敵に回す可能性が出てきたのですから。本当に世界は意地悪です。普通逆でしょうに。
『なればこそ、そなたは更なる鍛練を望むか』
「はい、より強い力を。でなければ、また私は大切なものを失ってしまう」
本来抗争など不本意です。売られた喧嘩は買いますけどね。
それに、『飛空石』を使った空飛ぶ箒についてはまだまだ試作段階。戦力の建て直しを図るためドルマンさん達には武器弾薬の増産を最優先にして貰っていますから、無理もありませんが。
『そなたは放出系統の魔法を不得手としていた。が、勇者は問題なく使えた。すなわち、そなたも扱える素養はあろう』
それは良いことを聞きました。私は放出系の魔法が苦手で、広範囲に渡る攻撃手段が貧弱。そのためせっかくの魔力等を十全に活かせていないのが実情です。先の戦いでも、その辺りはレイミに任せて私は突っ込んだだけですからね。
電流を放つことも出来ますが、射程は頑張って五十メートル。弓矢以下です。
「そうだと良いのですが」
『素養はある、ならば残された道は一つである』
おっと、不穏な空気ですよ。マスターのスパルタ教育が始まりますね。
『そなたには些か疲れが残っているように思える。故に此度は手軽なものとしようではないか。先のスタンピードと同数である。造作もあるまい。無事に切り抜けることを期待するものである』
魔物四百以上と連戦ですか!?それのどこが手軽なんですか!?死にますよ!?
マスターに抗議する暇もなく私は転移魔法で魔物で満たされた修練の間に飛ばされました。ファック。
でも、マスターの試練は乗り越えないと絶対に終わらない鬼畜仕様。ならば立ち向かうまでです!
私は勇者様の剣を抜いて魔力を込め、光の刃を顕現させて身構えます。
「更なる力を得るために、糧となりなさい!」
そして私は魔物の群れに向かって飛び込んでいきました。うん、地獄です。
ウッス、ルイスだ。シャーリィの奴がダンジョンに籠るようになって三日が経った。その間にも『血塗られた戦旗』の奴らは町に襲撃を掛けてきた。昨日なんて十人以上の纏まった数で攻め込んで来やがった。
これまでの戦いで奴らの腕が良いのは良く分かってたからな、俺達幹部連とエルフの姉さん達で迎え撃った。
正直傭兵だけあってかなりの腕前だったが、怪我人を出すこと無く追い払うことが出来た。
連中も傭兵らしく強かで、エルフの姉さん達が加勢に現れると一気に退いていった。『エルダス・ファミリー』は雑魚の集まりだったけど、コイツらはちょっとやり難いな。
「此方の出方を見てるんだろうな。命を粗末にしないところも厄介だ」
「『エルダス・ファミリー』は馬鹿ばっかりだったから楽だったんだな」
「そう言うことさ、ルイ」
後始末をしながらベルさんと話をする。コイツら装備が良いんだよな。銃を持ってるし、剣なんかも質が良いのが一目で分かる。
シャーリィは『血塗られた戦旗』が金を貰ってるって話をしてたが、これは間違いなさそうだ。
「良い武器持ってるよなぁ。それに、弾も予備をたくさん持ってやがる」
「ドルマンの旦那が喜びそうだな。ほら、そっちを持ってくれ」
「あいよ。せーのっ!」
俺達は死体を漁った後に掘った穴に捨てて埋めた。処理をしないで埋めるとアンデッドになるらしいんだが、何故かここ黄昏じゃそれが起きない。『大樹』の影響があるからなんだろうな。
「二人とも、片付けは終わりましたか?」
「終わったよ、シスター。今回は六人だな」
残念だけど他は取り逃がしちまった。
コソコソやられるのも嫌だけど、真正面から堂々と来るからそれはそれで困るんだよなぁ。
「片付けが終わったなら、巡回を再開しますよ。人が足りないのですから」
「分かった。いくぞ、ルイ」
「あいよ」
三者連合は気味の悪い攻撃をしてきたけど、『血塗られた戦旗』相手だと俺個人としてはやり易い。
シャーリィの奴も色々考えてるみたいだし、俺はいつも通りアイツの邪魔をする奴を蹴散らすだけさ。
シャーリィの奴が普通に暮らせるその日までな。