「……ここが、ヘビの国……?」
すまないは光を失った瞳で目の前の城壁を見上げる。ヤマタノオロチはすまないをここまで連れて来ると消えてしまった。自分の住処に戻ったのだろう。一応連れて来るという事は言ってあるため大丈夫らしいが。
(……入り口……どこ……?)
かれこれ一時間程ここに突っ立っていた。ヤマタノオロチはここから真っ直ぐ行けば着くと言っていたのだ。しかし真っ直ぐ行った先には高々とした城壁が聳え立つばかり。すまないはそれを見て首を傾げていた。
トコトコ……
「……?」
足音が聞こえすまないは緩慢な動作で足音の方に顔を向ける。白い髪を下の方で2つに纏め、空色の瞳をした可愛らしい少女がすまないの方に歩いて来た。
「どうしたの?」
その少女はすまないに問うた。すまないはただぼんやりと少女を見つめていた。
「……迷子?」
少女____エウリは自分でも何でこんな事を聞いたのか分からなかった。しかし、目の前少年____すまないは答えず首を傾げるばかり。エウリは何故すまないが何も答えないのか分からなかったが、とりあえずすまないの手を引いてヘビの国の城の城門へと歩き出した。
ガシャンッ!
「なんだ貴様は!」
城門を警備する衛兵に槍を突き付けられたすまない。エウリは慌てて止めようとしたがすまないは眉ひとつ動かさない。それどころか当たる寸前で止められた槍の切っ先を不思議そうに見ている。まるで『何故止めたの?』と言わんばかりの表情だ。
「ま、待ってください!その人は悪い人ではないです……!」
エウリはやっとそれだけ言った。なんとも陳腐な説得力の欠片もない言葉だったが、衛兵達はエウリの言葉に従って槍を下ろした。この時エウリは人生で初めて自分の生まれに感謝した。エウリは蛇一族の中でも地位の高い貴族の生まれだったため、衛兵相手なら言葉一つで従わせる事も可能なのだ。衛兵はすまないを軽く睨みながら
「エウリ様に感謝しろ」
と言って通してくれた。
「ごめんね、今日の衛兵さんあんまり良い人じゃなかったみたい」
そう言いながら城へと足を運ぶ。その時初めてすまないが声を発した。
「……どうして」
「ん?」
「……どうして、俺にそこまでしてくれるの」
エウリはその言葉が信じられなかった。
「どうして……って、私がしたいからよ」
「……俺は、敵なんだよ」
すまないはエウリの手を振り解く。しかしエウリは再びすまないの手をしっかりと握る。
「貴方が敵か味方かなんて関係ない。それに貴方からは敵対心が見えない。なのに本当に私達を敵として見ているの?なら“なんで私を倒さないの”?」
すまないは詰め寄られても顔色ひとつ変えなかった。
(……なんでだろう……)
頭の中でその疑問がぐるぐると回る。
「……それは、俺にも分からない……」
エウリは微笑み
「なら良いじゃないの」
と言って再び城の方へと、すまないを連れて歩き出した。
コメント
2件
エウリってこのお話でも良いやつなのかな?今の所は優しそうだけど…すまない先生を警備の人から守ってくれたしね!続き楽しみー!
おお、これはこれであり。