心臓が、痛い。
まだ既読の付いていないメッセージが
思考を狂わせる。
今なら、戻れる?
取り消せば、取り消してしまえば。
「………っ、なんで…」
終わりにしたい、そう思っていた。
それならば、何故終わりにする事を怖がっているのか。
取り消そうか、なんて悩む必要は無い。
全部を伝えてそれで終わり。
諦めたいから、伝える。
そとそもそれは俺のエゴでしかなくて。
若井にとって、この感情を向けられる事は
良い迷惑でしかないだろう。
その上でこの選択をしたなら、俺が悩む資格なんてない。
深く息を吐いて、画面を見つめる。
既読。
メッセージが来るまでの時間が、とにかく長く感じる。
「了解〜 通話する?」
この声で、自分の言葉で伝えるのは怖いけど。
履歴すら残したくない程今すぐに終わらせたくて。
すぐ終わるから、と送ったメッセージに既読が付いたのを確認して通話ボタンをタップした。
部屋に響く呼出音が、鳴り止まない鼓動の音を余計に煩くさせる。
伝える事でどうなるかは目に見えて いる。
分かりきっている事なんだから。
ただ、話すだけ。
呼出音が切れ、若井の声が画面越しに聞こえる。
「もしもし」
聞き慣れたはずの声が耳に届いた瞬間、息が詰まる。
「…遅くにごめん。すぐ終わらせる」
「大丈夫だよ。何かあった?」
声が震えてしまいそうで、小さく息を吸った。
「……全部言うから、全部聞いて欲しい。」
後戻りは出来ない。
こんな感情を抱いてしまった時点で、元の関係に戻すなんて事はできなかったと思う。
全て自分で選んだ事。
今更何をしようにも、変わることは無いから。
もう、どうにもならないから。
隠してきた想いを、隠したかった想いを。
「………ずっと、好きなんだよ」
「若井の事が、本気で好き。」
「…メンバーとして、友達としてじゃない。
恋愛感情だから。」
息を吸った。
これ以上余計に言葉を吐いてしまわないように、息を吸った。
返ってくる言葉が怖かった。
その言葉で、全部終わりになるから。
コメント
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いちさんは本当に良き所で区切られるから毎回手に汗を握ってドキドキです。 今日のお話に関係ありませんが、私はいちさんの描写の間が好きなんだと思います。少ない文字ながらも間をとり、でもその光景が浮かぶ。そんな間の取り方が私にドンピシャなんですよ。 ちょっと柄にもなく、何故私はいちさんの作品が好きか分析してみました。笑 失礼しましたっ! また続きを楽しみにしてます。
やばい、めちゃくちゃドキドキする…