テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
ぽつぽつと地面に落ちる冷たい粒。それがやがて大きいものになり、量を増して青空を覆い隠す。
「ひぇ、土砂降りだぁ、」
外を見ては驚嘆の声を上げる右隣。さっきまで晴れていた空が突然暗くなればそうなるのも当然だ。それに天気予報も午前は雨が降ると言っていたので妥当だろう。
「だね。傘持ってきた?」
「持ってきたー…はず、」
といってカバンを漁るがお目当てのものがなかったのだろう、肩を落としてこちらを見る。
「忘れたの?」
「…忘れたみたい、」
はぁ、とひとつ小さくため息が零れる。何かを持ってきたら、何かを忘れる。彼はそういう人間だ。昔からなのでもう怒ったりしないが。
「しょうがないな、帰りは入れてあげるよ。」
「え、ほんと!?」
嬉しそうにこちらを見るので、照れから顔を逸らす。彼の笑顔はまるでさっきまで地面を照らしていた太陽みたいだ。
「今日だけね、次雨降った時は逆に入れてもらうから。」
「もちろん!大きい傘持ってこないとね!」
両手でこれくらい!と傘の大きさを示している彼を見ていると無邪気で愛おしいけど、どこか儚い印象がある。
「そんな大きかったら通行の邪魔になるでしょ。」
「あ、そっか…それはダメだなぁ、」
しゅん、と分かりやすく落ち込むので思わず口元が緩んでしまった。
「ふはっ、ねえそれどういう顔?」
「落ち込んでます…って顔、」
あまりにそのまんますぎる。彼のこういう発送が可愛くてしょうがない。
「は〜…もう、りょうちゃん面白すぎ、お腹痛いんだけどほんと、」
「そんな面白かったー、!?…んふふ、でも元貴が笑ってくれてよかった。」
「ん、なんで?」
彼はひと息置いた後、ふっと微笑む。
「元貴、雨の日は少し寂しそうな顔するから。」
気付かなかった。見てるのは自分だけだと思っていたけど、りょうちゃんも僕を見てくれているんだ。そう感じると嬉しくて、こちらも笑顔を見せた。
「今は隣にりょうちゃんが居るから。」
「僕、元貴の太陽になれてる?」
「うん。とっくに」
昔からずっとステージの真ん中に立つ僕を照らす太陽は彼しかいない。
「えへへ、よかった。僕にとっても、元貴は太陽みたいな人だからっ」
なんて地面に咲く一輪の花のような笑顔に掴まれた心はきっと、彼がその笑顔を枯らしても離されることはないんだろうな、と暗く澄んだ空を見上げた。
はじめまして、███と申します。
今年の4月頃からこちらの界隈を好きになりまして、特にボーカルさん×キーボードさんのペアを好んで書かせていただいてます。明るい作品より暗い作品を好む性質です。作品の殆どがボーカルさん×キーボードさんになると思いますが、たまに好みでフェーズ1のメンバーさんのお話も書かせていただきます。ただの自分の好みですので気に入って頂けるかは不安ですが、何卒よろしくお願いします。