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俺は今、ミノリたちが作った料理を堪能している。よって、今回は料理の話だけで終わらせ……られるわけないよな。

ミノリ(吸血鬼)のカレー、マナミ(茶髪ショートの獣人)の春巻、シオリ(白髪ロングの獣人)のおむすび、ツキネ(変身型スライム)の味噌汁、そしてコユリ(本物の天使)の肉じゃが……。

どうやら、それぞれが違うものを作ったようだな。ん? これはいったいなんだ? 漬物が入っていそうな壺を見つけた俺は、蓋を開けようとしたが。


「ナオ兄、これはまだ開けちゃダメだよ」


シオリが蓋を開けようとした俺の手を握りながら、そんなことを言ってきたため、断念した。


「……そ、そうか。それじゃあ、その時になったら教えてくれ」


「うん、分かった」


本当は気になって仕方がなかった。しかし、可愛いシオリのお願いを聞かないわけにはいかない。

うーん、どうしたものかな……。二つの気持ちが俺の中を駆け巡ったが、俺は後者を選ぶことにした。

そうしないと、ミノリたちに何か言われそうだからだ。俺はシオリのふわふわとした髪を撫でると箸を手に持った。


「よし、それじゃあ、食べるか」


「うん。まだまだたくさんあるから、どんどん食べてね! ナオ兄!」


「ああ、そうさせてもらうよ」


こんな感じで『異世界へようこそ会』は『例の二人』(ミノリとコユリ)による争いが始まることなく終了した。ぜひ、また開いてもらいたいものだ。


「はい、みんな! ちゅうもーーーーーく!!」


後片付けなどを済ませた俺たちに、ミノリは右手の人差し指を立てて、左手には『例の水晶』を持った状態でそう言った。

ちなみに『例の水晶』とは『パーフェクトクリスタル』のことである。(俺が適当に考えた。だから名前があるのかすら分からない)有効範囲内(どこまでかは知らない)なら、あらゆる情報が手に入る便利な代物なのである。

そんな便利な水晶を使ってミノリが何を始めようとしているのかは分からないが、何かろくでもないことを始めそうだなと思った……。

今のミノリは自由の女神のようなポーズをとっている。もし、それを意識してやっているのなら、せめて水晶を聖書に変えてほしいと思った……。


「急にどうしたんだよ、ミノリ。そんな大声出したら近所の人に迷惑だぞ。もう少し静かにしてくれよ」


「え? あんた、何言ってんの? 近所に住んでる人なんていないじゃない」


「そうだとしても、これから俺たちはこっちでお世話になるんだから、そういうのは大事だと思うぞ? それにいつまでもここにいるわけにはいかないだろ?」


「…………」


「な、なんだよ」


「え、えーっと、その……一つだけ言わせてもらっていい?」


「ん? なんだ?」


ミノリは俺に言いたいことがあるようだが、どうも様子がおかしい。

こちらをチラ見しながら、どう言ったらいいのかしら? という顔をしているからだ。

俺の後ろにいる他の子たちのヒソヒソ声も少しだけ気になったが、それよりもミノリの困った顔の方が気になったため、もう一度訊いてみることにした。


「なあ、ミノリ」


「…………」


「おい、ミノリ」


「……………………」


「おーい、ミノリさーん、聞こえてますかー?」


「………………………………」


ダメだ。まったく反応がない。困ったな、このままでは話が一向に進まないぞ。さてさて、どうしたものかな……。

あっ! そうだ、あの手を使おう! よおし、そうと決まれば、さっそく実行に移すとしよう。

え? 何を思いついたのかって? それは、これから分かることだから、もう少し待っててくれ。

俺は同じ場所を行ったり来たりしているミノリをひょい、と俺の肩に乗せた。


「ミノリ、あまり深く考えるな。あと、今は自分が今置かれている状況を理解した方がいいぞ?」


「えっ? 何? あたしになんか用? ……って、あたし、どうしてあんたに肩車されてるの?」


「お前、さっきから、ずーっと何か考えてただろ?」


「え、ええ、まあ、そうだけど……。それがどうかしたの?」


「まあ、要するに……『人は集中すると周りが見えなくなる』っていうことだ」


どうやら、モンスターチルドレンになっても、人間の本能や性質などを抑え込むことはできないようだ。さて、そろそろ下ろしてやらないとな。


「へえ、そうなんだ……。というか、早く下ろしなさいよ!」


「嫌だ、と言ったら?」


「そ、その時は……あたしの足であんたの首を締め付けて、気絶させるまでよ!」


「うーん、それは……無理だな」


「ど、どうして?」


「それはだな…………」


俺が答えを言おうとした時、何者かに脇腹をくすぐられた。


「ふぁ! や、やめろ! く、くすぐったいから!」


ミノリ(吸血鬼)を肩車しているのと、ミノリの足が俺の首を絞めつけているせいで抵抗できない俺をその手は容赦なく、くすぐる。

俺には、なんとなくその手の持ち主が誰なのか分かった。


「な、なあ、もしかして、シオリ……なのか? あははははは!」


「ナオ兄、私も乗せてーー!」


「いや、定員オーバーだから、それは無理だ! というか、いい加減やめてくれよ! ミノリを支えきれなくなるから!」


俺は必死に逃れようとするが、相手は触れている物体の重力を自在に操れる魔法の使い手。

いつ魔法を使用されるか分からないこの状況では、どうすることもできなかった。

なら、コユリの魔法でなんとか……って、あれ? メモ用紙に何か書いてるな。いったい何を書いてるんだ?

俺はギャー! ギャー! と叫びながら暴れるミノリを落とさないように、そっとコユリに近づいた。


「おい、コユリ。何書いてるんだ? というか、お前の魔法で二人をなんとかしてくれないか?」


「……ふふふふふふ」


「おーい、コユリー」


またか、またなのか! 今日は『モンスターチルドレンが何かに集中する日』なのか?

というか、コユリ(本物の天使)は、いったい何を書いてるんだ?

俺は先ほどよりも足音を忍ばせながら、コユリに近づいた。(いつのまにかシオリはマナミの膝枕で寝ていた)


「マスターは脇腹が弱いと。……ふふふ。これでマスターを攻略するための材料は残りわずかですね。揃うのが待ち遠しいです。ふふふ……ふふふふふふ」


『………………』


今、俺とミノリはきっと同じことを考えている。

それは……コユリの趣味が悪すぎる、ということについてだ。

俺たちは、何も見なかったことにして、その場を離れた。そして何事もなかったかのように、俺はそっとミノリを肩から下ろした。


「……その、分かってると思うが、さっきのは」


「あたしたちは何も見なかった。そういうことにしておきましょう……」


「ああ、そうだな」


急に気まずい雰囲気になってしまったのでミノリの勢いがなくなってしまった。(それと同時に水晶が消えた)

何を言おうとしたのかは知らないが……今、話さないということは、それほど重要なことではなかったのだろう……。

まあ、知らなくてもいいことを知ってしまった人の気持ちがよく分かったな。(正直、知りたくなかった)

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