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「なぁシャービット。パフィのやつは、どうしてうかんでるんだ?」
「青い葉の力なん」
ピアーニャは、生身でふよふよ浮かぶパフィを眺めつつ、色々知っていそうなシャービットに、今の状況がどういう事なのかを尋ねた。
シャービットは先程までメレンゲを使って空を飛んでいたのだ。この中では、現在最も7色の葉を使った不思議現象に詳しい。
「それって、やっぱりアリエッタちゃんの木なの?」
「そうなん。葉っぱの力は凄いん。例えばー…この赤い葉は甘いん」
「甘いの? このまま齧ってもいいの?」
「うん。んふふ、総長さん食べてみるん?」
「わちか? まぁアマいのはすきだから……」
ちょっと不安に思いながらも、気になって了承する。
その態度に気づいたシャービットは、持っていた赤い葉をひと齧りした。
「ん~♪ 甘いん~」
「ほう、それがあのピンクのメレンゲにつかわれたのか」
一瞬で緩むシャービットの顔。その口からほのかに香る甘い匂い。しかし、葉の方からは一切匂いがしない。ピアーニャもサンディも不思議に思うが、アリエッタに関する事だからと、一旦考えるのをやめた。
「食べさせてあげるん。はい、あ~ん」
「いやべつに……あ~…ん」
一瞬断ろうとしたが、差し出された赤い葉は既に口元にあった為、諦めてひと齧り。
「ふぼっ!? にがっ!?」
「うええっ、きちゃなっ!」
噛んだ瞬間、その味に驚いて噴き出してしまった。口から勢いよく飛んだ葉は、なんとなく近くに寄っていたラッチに命中。
「ぺっぺっ…なんだコレ。アマいんじゃなかったのか?」
「総長さんひどい~……」
「あぁすまん。おいこらシャービット」
2人の惨事に、シャービットは笑い転げ、サンディは指差して笑っている。
イラっときたピアーニャは、2人の頭に拳の形にした『雲塊』を落とした。
「ったぁ~ん! 頭ヘコむん~」
「いたたた……なんで私までなの~」
「いいからセツメイしろっ」
「はぁーい」
怒られたシャービットは、気を取り直して赤い葉の説明を始めるのだった。
「この赤い葉っぱは、味を変える事ができる葉なん。これを持って甘くなれーって願うと、甘くなるん」
「素敵な葉っぱなの~」
(あいかわらず、よくワカランな。やっぱりアリエッタだからか?)
赤い葉の効能は、シャービットの言う通り味の変化。葉の状態で味を想像し、ある程度自由に味を変える事が出来るのだ。ただし、それにも制限があるようだ。
「味の種類を決めて、どれくらいの濃さ?にするか決めると、出来上がるん。まだアリエッタちゃんと一緒に実験してたんだけど、甘いのと苦いのと酸っぱいのは出来たん」
「いつのまに……」
「なんだか素敵な調味料なの。後で私も研究するの。今夜何作るか迷うの~」
赤い葉で盛り上がり、なんとなくのんびりとした雰囲気になってきた。
上空では、パフィに抱きかかえられたアリエッタが、再び雹の天気記号を使い、ケインに攻撃を仕掛けている。元々大人しい性格のアリエッタの、数少ない直接攻撃では、戦い慣れているケインに痛手を負わせる事は難しい様子。
ケインの方は、降り注ぐ雹を防ぎつつ、チラチラと見た目で一番頼りになりそうなオスルェンシスを見ている。その目は『足止めしてるから早くなんとかしてくれ』と力強く語っている。
「で、なんで浮かんでるの?」
『あ』
うっかり忘れられていた本題は、ラッチによって呼び戻された。
その後シャービットが、メレンゲを浮かべていた方法と、ヴェリーエッターの腕が妙に重かった理由を話していった。
「なるほどな。パフィのスイソクはあたっていたのか。おもさをかえるアオいハか……」
「でも、パフィはそれを持ってないの。どうやって飛んでるの?」
「へ?」
サンディがパフィをジッとみつめている。青い葉を探しているようだ。
「そういえばストレヴェリー様は何も持っていなかった。アリエッタちゃんが持ってたら、体の表面に葉っぱを貼り付けてるかと思ったけど」
「葉っぱそのままだと味だけしか変わらないん。加工すると味以外だけをしばらく変えれるようになるん。でもお姉ちゃんは葉っぱを加工してないん」
「……ナニをいってるんだ?」
真剣な顔でパフィが浮かんでいる原因を探す一同。その中で、ピアーニャだけがその流れに困惑している。
ピアーニャの目には、パフィの緑色の髪の毛にくっついたピンクと青のメレンゲが、ハッキリ見えている。シャービットとの対立が始まった時に、投げつけられてくっついたメレンゲの塊である。
「いやほら、パフィのアタマにメレンゲがついているだろ?」
「……何言ってるの? パフィはいつも通りのモコモコなの」
「いったいパフィさんに何が……」
「フェリスクベル様に続いて、ストレヴェリー様も神であったリムか。であれば、空を飛ぶのも無理からぬ事リム……ふっ」
「えぇぇ……」
他の全員は、パフィのモコモコヘアーに違和感を感じていない様子。訳が分からないまま再度パフィを見るピアーニャだったが、やはり頭にピンクのメレンゲがついている。
(え、なに? わちがおかしいのか? メレンゲがみえるのがおかしいのか?)
思わず自分の目と常識を疑っていた。
そこへ、オスルェンシスから助け船が入る。
「ええと、今はどうやって飛んでいるのかは問題ではないでしょう。あの2人を捕獲しなければ、周囲の家がさらに壊れていきます」
「そうそう、それだ! とりあえずつかまえるぞ!」
「どうしたん、総長さん」
「なんでもない!」
なんだか気分的に寂しくなったピアーニャは、ヤケクソ気味に『雲塊』を2つ広げた。
乗るのはオスルェンシスとラッチ。雲を操る本人は、アリエッタに近づくのを嫌がって、下から操作する事にしたようだ。
「いやいや、ピアーニャ総長? 一番アリエッタちゃんが大人しくなる為の生贄が行かないでどうするんですか」
「イケニエいうな! わちをナンだとおもってるんだ!」
思わず反論するピアーニャだったが、
『アリエッタちゃんの妹』
「オマエらああああああ!!」
全員一致の妹認定によって、あえなく敗北。そして絶叫。
ラッチに抱えられて結局雲に乗り、アリエッタを止める為に向かう事になってしまった。
その様子を、ケインは横目で見ていた。氷の塊を撃たれながら空中に跳び上がるような真似はしたくないと思っていた所に、『雲塊』という空飛ぶ足場を見つけたら、やる事は決まっている。
「俺様もいくぜ! 片方に乗せてくれ!」
「ちょっと、囮が来てどうするんですか!」
「いいじゃねえか。ちゃんと弾いてやるからよ」
実際、雹を全て拳で弾いているので、オスルェンシスもその辺りの心配はしていない。しかし狙われると怖いものは怖いのだ。
ここで揉めても仕方ないという事で了承し、オスルェンシスとケインが1つの雲に同乗した。
上空から雹を撃っているアリエッタも、オスルェンシスやピアーニャが動いた事を見ていた。
「むー?」
「だ、大丈夫なのよ? なんか総長まで来ちゃってるのよ……」
「だいじょうぶ!」(ぴあーにゃには絶対に当てないから!)
「そっかー、なら大丈夫ね~♪」(えっ、総長をやっつけるの? アリエッタ本気?)
「にへー」
アリエッタの根拠も意味も無い保障で、プカプカ浮かんでいるパフィの顔は一瞬で蕩けてしまい、深く考える事が出来なくなって、アリエッタの頭をナデナデした。順調にアリエッタ絶対主義っぷりが成長しているようだ。
空中で和む危険人物達を見据え、ピアーニャは『雲塊』を発進。2方向から攻め込んだ。
「あっ! めーっ!」(変態だけは絶対に撃ち落とす!)
「……ぷにぷになのよぉ」
再び雹を撃ち出すアリエッタ。その標的は、もちろんケイン。しかしピアーニャの操縦で、大部分の雹は躱され、ケインによって殴り落とされる。
対してパフィは全力で現実逃避をする事にした。アリエッタのお腹を優しく撫でて悦に浸っている。
ピアーニャは開き直ってアリエッタに近づこうとするが、そう簡単には近づけない。アリエッタが左手で侵入禁止の記号を書いた札を持ち、構えているのだ。むやみに近づいても確実に防がれるであろう。
「どうするの総長さん!」
「むぅ……」(もうかえりたい……)
やる気は全く無いが、アリエッタを止める事が最優先である。渋々オスルェンシス達の乗る雲を操り、接近する隙を伺っている。
しかし、絶対防御ともいえる進入禁止の能力を持つアリエッタには、なかなか近づけない。
やむなく一旦接近を諦め、アリエッタから離れた上空へと2つの雲を寄せた。
「どうするかー……」
「あの塊が結構デカくて、近づけねぇんだよな」
実際に動いている2人は、忙しくてうまく考えがまとまらない様子。しかし、同じ場所から静かに見ていたオスルェンシスとラッチは、お互いを見て頷き合った。
「ピアーニャ総長、私に良い考えがあります」
「ほう?」
4人の作戦会議が始まった。アリエッタはそんなピアーニャ達を見上げ、周囲に霰の天気記号を増やしていた。牽制用である。
そして作戦が決まった。
「な、なぁ……これダイジョウブなのか?」
「大丈夫ですよ。アリエッタちゃんを信じてください」
「いやだぁ……」
「さぁ、最終決戦の準備は整った。もう負ける事は許されないリムな」
「ははは……マジでやんの?」
今度はピアーニャとオスルェンシス、ラッチとケインの組み合わせとなった。
それぞれの雲の前方には、影で縛られて掲げられたピアーニャと、ラッチの水晶の体で足を固定されたケインがいる。
「行きますよ!」
「アリエッタちゃん捕獲作戦、いざ開始リム!」
先程と同じく二手に分かれ、今度は両方ともアリエッタに向かって真っすぐに進む。
「!? おいシス!? 見えないんだが!?」
開始直後、オスルェンシスの影が、ピアーニャの視界を塞いだ。作戦で説明されなかった想定外の行動に、思わず叫び声を上げるピアーニャ。
アリエッタからはその様子が見え、突っ込んできたら危ないからと進入禁止の使用も止め、攻撃をケインだけに絞ろうと狙いをつける。
「大丈夫です! そのまま両方とも突撃を!」
「大丈夫じゃねええ! 流石に防ぎきれなダァッ! いてえええ!!」
ラッチに動きを半分封じられているケインは、なんとか雹を弾こうとするが、自分に向かってくる雹に向かって自分からも突っ込んでいるので、その接近速度はかなり速くなり、弾ききれなくなる。徐々に直撃数が増え、防御態勢になった。
オスルェンシスとラッチが考えた、アリエッタ捕獲作戦とは……
「変態を盾に突っ込む!」
「総長を盾に突っ込む!」
『ひいいいいいい!!』
絶対に狙われるついでにアリエッタの怒りを解消する筋肉の盾と、絶対に狙われずアリエッタが無防備にならざるを得ない妹分の盾を使って、強引に懐に飛び込むという外道な力技だった。