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森の奥での任務を終えた夜。鬼との激しい戦いの後、炭治郎は木の根元に腰を下ろし、深呼吸していた。
「はぁ……やっと終わった……」
その隣に、勢いよくドサッと座り込んだのは伊之助だった。
上半身裸のまま、汗に濡れた身体が光っている。
「ふん、弱っちい顔してるくせに、よくやったじゃねぇか」
「ありがとう、伊之助。君がいなかったら危なかった」
炭治郎がにこりと笑うと、伊之助は胸の奥がざわついた。
あの笑顔は誰にでも向けている――わかっているはずなのに、妙に悔しい。
「おい、炭治郎」
「ん?」
「……オレのことだけ見ろ」
唐突に腕を引かれ、炭治郎はそのまま伊之助の胸に押し付けられる。
「わっ、伊之助!? ちょっと、近いよ……」
「うるせぇ! オレが守ったんだから、オレのもんだ!」
顔を赤くしながら叫ぶ伊之助に、炭治郎は困惑しつつも、頬を染めてしまう。
「伊之助……俺はものじゃないよ。でも……君がそう思ってくれるのは、嬉しい」
その言葉に、伊之助の心臓はどくんと跳ねた。
理屈なんて分からない。ただ、炭治郎を自分のものにしたい、その衝動だけが胸を満たしていく。
「じゃあ、オレから離れるな。……他のやつに笑うな」
真剣な声音に、炭治郎は驚きながらも、静かにうなずいた。
「うん。伊之助がそう望むなら……俺は、君の隣にいるよ」
その瞬間、伊之助は勢い余って炭治郎を地面に押し倒す。
「い、伊之助!?///」
「離さねぇって言っただろ!!」
月明かりの下、二人の距離は一気に縮まり――炭治郎の心臓は激しく打ち鳴った。
伊之助に押し倒された炭治郎は、戸惑いながらも逃げようとはしなかった。
「い、伊之助……。こんなの、だめだよ……」
「だめじゃねえ!」
伊之助の瞳は獣のようにぎらぎらしているのに、その奥にあるのは不器用な真剣さだった。
「オレはお前が欲しいんだ……炭治郎」
熱を帯びた声に、炭治郎の胸が大きく揺れる。
戦いの最中でも仲間を信じて支えてくれる伊之助。
そのまっすぐな想いが、今は自分ひとりに向けられている。
「伊之助……俺は……」
言葉を探そうとする炭治郎の唇を、伊之助の影が塞いだ。
不器用で荒っぽいけれど、真剣な口づけ。
「ん……っ……!」
驚きで目を見開いた炭治郎は、やがてそっと瞼を閉じ、受け入れてしまっていた。
「……はぁ……っ」
唇が離れると、伊之助は荒い息をつきながら炭治郎を見下ろした。
「オレのこと、ちゃんと見てろ。他のやつに笑うな……」
炭治郎は頬を赤らめ、月光に濡れた瞳で伊之助を見返した。
「……伊之助のこと、ちゃんと見てるよ。ずっと……」
その言葉に、伊之助の胸は熱く爆ぜる。
衝動のまま、炭治郎の手を強く握りしめ、再び唇を重ねた。
今度は迷いなく、深く――。
炭治郎の背を荒々しく引き寄せる伊之助に、炭治郎も抵抗はしなかった。
むしろ、伊之助の激しい温もりに身を委ねるように、そっと目を閉じる。
夜の静けさの中、二人の呼吸だけが熱を帯びて響いていた。