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【序章】
出会いは、あの冬の日。
真っ白な雪原。
まだ“鬼”なんて知らなかった頃の、10歳の侃。
村の子供たちとは馴染めず、ひとりで山奥へ行くことが多かった。
そんなある日、雪の中で鬼に襲われた。
小さな体で逃げる侃。
血まみれの手、転んだ膝。
「……ダメだ、ここで……死ぬのか……?」
その瞬間、風を切るような音とともに、
鬼の首が――刎ねられた。
立っていたのは、ひとりの男。
雪の中でも裸足。
体には異様な刺青。
でも、少年の目にはただ――“強くて、美しい”と映った。
「……大丈夫か」
「……あ、あなたは……誰……?」
「俺か? ……まあ、通りすがりってとこだな」
そう言って、猗窩座は侃に手を差し伸べた。
⸻
【第一章】
“あの人のようになりたい”
その日から、侃の心には一つの願いが宿った。
「いつか、あの人のように誰かを守れるようになりたい」
彼は剣を持ち、村を出て、鬼殺隊選別試験に挑んだ。
まだ小さな身体で、周囲は年上の男たちばかり。
それでも、彼の剣の冴えは誰よりも鋭かった。
だが――初任務。
そこで出会ったのは、人間の母親を喰う鬼。
「おい、やめろ! その人を……!」
震える声。震える手。
そのとき、鬼は言った。
「人間が、鬼を裁く? お前みたいな小僧に、何ができる?」
侃は動けなかった。
その日の夜、火を囲みながら、彼は自分の無力さを噛みしめていた。
(やっぱり俺じゃダメだ……)
そのとき――夢の中に、あの男の声が響いた。
『まだ、立てるだろ? あの日、お前は立ち上がった』
(……猗窩座……?)
『じゃあ、もう一度立て。お前は“誰かのために”剣を握った。それを忘れるな』
⸻
【第二章】
柱へ――“凛”の意味
何度も何度も挫折して、
血を吐いて、骨を折って、
それでも侃は進んだ。
“自分の弱さ”から逃げずに、“あの日の想い”を剣に乗せた。
やがて、彼は鬼殺隊の頂点――柱になった。
称号は――凛柱(りんばしら)。
由来は、最初の報告書に記された文字。
「彼の剣は、氷のように静かで、月のように凛としている」
そして、彼は今でも探している。
あの冬に出会った“剣士”を――