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「―――どうして……」
尚子は真っ赤な目と真黒な目で、仙田を見つめた。
「わりぃ。俺、生き残らなきゃいけねえ理由ができた」
「は?」
「生き残るって言うのは、こっちの世界でって意味なんだけど」
「ーー何言ってんの?意味わかんない」
「だよな。いーや、わかんなくて」
仙田は面倒くさそうに頬をポリポリと掻いた。
「でもさ。お前はさ」
仙田は悪びれる様子もなく言い放った。
「もし死にたいなら、生き返ってからもう一度、自分で死ねばいいんじゃね?」
――何言ってんの?
――何言ってんの!?こいつ!!
「土井尚子さん」
アリスが仙田を突き飛ばしながら尚子の正面に立つ。
「花いちもんめは、“あなたの、負けです“」
その瞬間、嘘くさいほどに青く晴れ上がっていた空が真黒な雲に覆われた。
アリスが言うと、その黒い雲の真ん中に、さらに漆黒の穴が現れた。
「やめて……」
尚子は両手で耳を塞いだ。
地震のようにグラウンドが揺れる。
吸い込まれるように砂がその黒い穴に向かって舞い上がる。
アリスが指輪の光る人差し指を口に当てる。
「助けて……!!」
仙田に向かって手を伸ばす。
「――――!」
仙田が戸惑った顔をしながらも手を伸ばす。
しかし二人の指先が触れ合う前に、
――闇が尚子の身体を包んだ。