「よう、ルル。久しぶりだな」
「そうだねー」
白髪ロングと赤紫色の瞳と目の下にあるクマが特徴的な白魔女ルル=メタル=ホワイトは女の子座りをした状態でそう言った。
「えーっと、まずは自己紹介してくれ」
「うん、いいよー。えーっと、私の名前はルル=メタル=ホワイトだよー。金属系魔法のスペシャリストだよー。モンスターチルドレン育成所に三人いる副社長の一人だよー。チャームポイントはこの赤紫色の瞳だよー。よろしくねー」
ルルがそう言うと、ナオトはパチパチと拍手をした。
「いやあ、なんというか……相変わらず棒読みだな、お前は」
「まあ、昔からそうだからねー。しょうがないよー」
ルルはそう言いながら、人差し指で頬をポリポリと掻《か》いた。
「さてと……それじゃあ、そろそろ本題に入ろうか。なあ、ルル」
「んー? なあにー?」
「最近、困ってることとかないか?」
「うーん、そうだねー。ナオトが私に構ってくれないってこと以外は何もないねー」
「そ、それはその……色々あったから仕方ないというかなんというか……」
「ナオト、言い訳は良くないよー?」
「そ、そうだな。言い訳は良くないよな。ごめんよ、ルル」
「ううん、別に気にしてないからいいよー」
「そうか……。なら、いいんだが……。えっと、他に何かないか? 俺にしてほしいことがあれば、遠慮せず言ってくれ」
「うーん、そうだなー。じゃあ、一緒にお風呂入ろう」
「え? お風呂?」
「うん、お風呂ー」
「なるほど。裸《はだか》の付き合いってやつだな。よし、分かった。じゃあ、ちょっと待っててくれ」
彼がお風呂場に行こうとした時、彼女は彼を呼び止めた。
「ナオトー、ちょっと待ってー。私も行くー」
「いや、お前はここで待っててくれ」
「どうしてー?」
「それは……色々と準備があるからだよ」
「いーやーだー。私も行くー。一緒じゃなきゃヤダー」
彼女が彼に抱きつきながら、|駄々《だだ》をこね始めたため、彼は仕方なくルルも連れて行くことにした。
「分かったよ……。連れて行けばいいんだろ? 連れて行けば……」
彼がそう言うと、彼女はギュッと彼を抱きしめた。
「わーい、ありがとう、ナオトー。お礼に背中流してあげるよー」
「そりゃどうも。じゃあ、行くぞ」
「うん、分かったー」
その後、二人は風呂場に向かった……。(速攻で浴槽を洗って、速攻でお湯を張《は》った)
ルルは黒いローブを脱ぐと、ナオトの頭に被《かぶ》せた。
「あははははは、ターバンみたーい」
「ルル。頼むから今は俺で遊ばないでくれ」
「えー、なんでー?」
「ミノリたちの視線が怖いからだ」
「そんなの無視すればいいじゃん」
「まあ、それはそうなんだが……」
「ほら、早く入ろう」
「お、おう……」
彼はルルに手を引かれながら、浴室に入った。
「ルルの髪って、きれいだな。いつもどうやって手入れしてるんだ?」
「それはもちろんナオトの……」
「俺の?」
「えっと、やっぱり秘密ー」
「あははははは、なんだよそれー」
彼がルルの髪を洗っている時、そんなことを話していた。(そのあと、体も洗った。ただし、背中だけ)
「ナオトの髪って、女の子みたいにサラサラだよねー? どうしてー?」
「ん? あー、それはな。これは、お袋《ふくろ》の髪だからだ」
「え? そうなの? じゃあ、前はハゲてたの?」
「いや、ハゲてはないけど……。うーん、なんて言えばいいかな……。えーっと、接《つ》ぎ木って分かるか?」
「うん、分かるよー。二つ以上の植物の体に、えいやーって切断面を作って、それらをそいやーって引っ付けるやつでしょー?」
「うん、まあ、だいたいそんな感じだ。えー、まあ、要するに、お袋《ふくろ》は自分の髪でそれをやり遂げたってことだ」
「それって普通、不可能だよねー?」
「あの人はあらゆる不可能を可能にするんだよ。そのうち、イメージするだけで人を殺せるようになったり、クシャミをするだけで嵐を起こせるようになるかもしれない」
「あははははは、そうなったら全人類を敵に回すことになるねー」
「そうなんだよ……。俺はそれが心配で仕方ないんだよ」
「でもまあ、その時はその時だよー」
「そうだよな……。今からあれこれ考えても仕方ないよな。ありがとう、ルル。少しスッキリしたよ」
「どういたしましてー」
ルルが彼の頭を洗っている時、そんなことを話していた。(そのあと、彼の体も洗った。ただし、背中だけ)
「あー、いい湯だなー」
「そうだねー」
「ずっと入っていたいなー」
「そうだねー」
「すっごく気持ちいいなー」
「そうだねー」
ルルのやつ……さっきから同じことしか言ってないな。
けど、ちゃんと肩まで浸《つ》かってるから良しとするか。
ナオトとお風呂に入るの久しぶりだなー。
ちょ、ちょっとくらい甘えても平気……だよね?
ルルはナオトの頬を人差し指でつついた。
「ねえ、ナオトー。こっち向いてー」
「ん? なんだ?」
「ちょっとじっとしててねー」
「ん? あ、ああ、分かった」
彼がそう言うと、彼女は彼の背中に手を回した。
その後、彼の首筋をペロリと舐《な》めた。
「な……何すんだよ! いきなり! さっき体洗ったばかりなんだぞ!」
「ねえ、ナオト。ナオトは私が吸血鬼と白魔女のハーフだってこと覚えてるー?」
「あ、ああ、それはもちろん……って、お前まさか」
「うん、ちょっと我慢できなくなっちゃった。だから、少しでいいからナオトの血を吸わせてー」
彼は彼女の両目にピンク色のハートマークが浮かび上がっているのを目撃した。
「お、俺の血って、そんなにおいしいのか?」
「うん、おいしいよー。いろんな味がするからー」
「そ、そうか……。じゃあ、俺はそろそろ出ようかなー」
彼が湯船から出ようとすると、彼女は彼をギュッと抱きしめた。
「ナオトー、少しだけでいいから吸わせてー。お願いだからー」
あー、これはもうダメだな……。完全にロックオンされてる……。
「はぁ……分かったよ。少しだけだぞ」
「わーい、ありがとうー。ナオトは優しいねー。カプッ!!」
彼女は彼の首筋に噛み付くと、彼の血を吸い始めた。
な、なんだろう。ミノリ(吸血鬼)の時とは吸い方が違うっていうか吸うペースがゆっくりというか。まあ、好きにさせてやろう。
ナオトの血……日に日においしくなっていくからやめられないんだよねー。
彼女が彼の血を思う存分吸い上げると、彼女は彼の首筋に優しくキスをした。
「お、おい、ルル。今のはいったい何のつもりだ?」
「えー? まあ、血を吸わせてくれたお礼かなー。あっ、もしかして意識しちゃったー?」
「バ、バカ野郎! そんなわけないだろ!」
「あははははは、ナオトは可愛いねー」
「か、からかうなよー。まったくもう……」
「あれー? どうしたのー? 顔が真っ赤だよー?」
「う、うるさい! 少しのぼせただけだ!」
「えー、そうかなー? とてもそんな風には見えないけどー」
あー、くそ……。なんか調子|狂《くる》うな……。
ナオトは面白いなー。コロコロ表情が変わるー。
「も、もうそろそろ出るぞ、ルル」
「うん、分かったー。じゃあ、このまま抱っこしてー」
「は、はぁ? 自分で出ろよ」
「私、少しのぼせちゃったから運んでくれないと大変なことになるよー」
「……あー、もう分かったよ! 運べばいいんだろ! 運べば!!」
「ありがとう、ナオトー。大好きー」
彼女はそう言いながら、彼の右耳を優しく噛んだ。
「こ、こら! 耳を噛むな! 力が抜けちまうだろうが!」
「あははははは、ごめんなさーい」
「まったく、お前ってやつは……」
彼はブツブツ言いながらも、彼女を抱きかかえたまま浴室を出た。
ルルは色々済ますとムフー! と鼻息を吐《は》きながら、キミコのところへ向かい、次はキミコの番であることを彼女に伝えた。
キミコ(狐《きつね》の巫女《みこ》)はスッと立ち上がると、彼がいる寝室までスタスタ歩いていった。
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