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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
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書斎から自分の部屋に戻り、とりあえずベッドに飛び込んでみる。


……いやぁ、朝っぱらから色々とあるものだ。

結果としては何というか、ミュリエルさん頑張れ……的な内容で終わったんだけど。


まぁ、人が集まればどんな場所でも問題は起こるわけで、ひとまずはこの程度の話で終わったことを喜んでおこう。


ミュリエルさんの気持ちも分かるんだけどね。

誰からも認められなかったことが、誰かに認められる。それはとっても嬉しいことだから。



少しまどろむ感覚を味わってから、このまま眠るのはまずいと思い、ベッドを出ることにした。


エミリアさんの話によると、ちょうど1週間前、ジェラードがお屋敷を訪れたらしい。

1週間後にまた来るということだったので、まったく同じ時間なのであれば、まだ少し時間がある。


「――それではお待ちかねの! 神器の素材を確認することにしよう!」


早速、エミリアさんを呼んで――

……うーん? いや、どうしよう。


変な素材が入っていたら嫌だし、先に見ちゃおうかな……。

うん、そうしよう。賑やかに楽しくというよりは、ここは厳かな気持ちで確認しよう。


それではこのまま、『創造才覚<錬金術>』の結果をオープン!!


──────────────────

【『名称未定神器』の作成に必要なアイテム】

・オリハルコン×10

・ミスリル×3

・光竜の魂×1

・浄化の結界石×3

・光の魔導石×32

・生命の実×1

・宝飾剣×1

・特殊条件<透色の瞳>

・特殊条件<調和と力の宣言>

・特殊条件<自由意志の宣言>

──────────────────


……何となく視覚的に見たかったので、ウィンドウは頭の中ではなくて、宙に出すことにした。

最近はさすがに慣れたけど、頭の中よりも目で見る方が、やっぱり分かりやすいんだよね。


というわけで早速、内容を確認していこう。


まずは安定の『オリハルコン』。

個数は10個。……ちなみに『1個』あたりの量は、鉱物系の場合は市場に流通している鋳塊……いわゆるインゴットを基準に換算しているようだ。

そして当然のことながら、オリハルコンはまだ持っていない……っと。


次も安定の『ミスリル』。

これは宗教都市メルタテオスのアーチボルドさんから、育毛剤の代金として確保済みだ。

そういえば一緒に『光の封晶石』をもらっていたけど、今回の神器では使わないみたいだね。


3つ目は『光竜の魂』。

……やはり来たか、といった感じの素材だ。これが一番、入手経路が全く分からないんだよね……。

『オリハルコン』とは違って、作り方も所在も分からないし……。いや、作るだなんて、多分できないと思うけど。


4つ目は『浄化の結界石』。

まだ持ってはいないけど、エミリアさんの話によれば、大聖堂で作ってもらえるらしい。

寄付という名のお金は掛かるから、錬金術師ギルドの依頼をこなしてお金を稼いでおかないとね。


5つ目は『光の魔導石』。

個数が32個と多めだけど、これもメルタテオスの魔法のお店でぴったり買っているから大丈夫。

正直なところ、使うことになっても余ると思っていたから……全部買っておいて正解だったかな。


6つ目は『生命の実』。

これは先日、錬金術師ギルドで買ったばかりのレア物。私の冴えた勘に感謝したいところだね!

ビンゴ、ビンゴ……っと♪


7つ目は『宝飾剣』。

これは『なんちゃって神器』の剣のことだ。


8つ目から10個目は、どこかで見たことがあるような……。

……いや、どこかでというか、明らかに夢の世界に出てきたものだけど。


より詳細に見てみると、『透色の瞳』は『条件』として既に達成済みらしい。

ゲームで言うところの、フラグみたいな感じかな?

素材があってもこのフラグが立っていないと作ることはできない……そんな感じなのだろう。


『調和と力の宣言』と『自由意志の宣言』については、呪文のようなものらしい。

鑑定スキルで具体的な内容は出てきたし、神器を作る途中のどこかで唱えるのだろうか。


さすがに呪文をアイテムボックスに入れることはできないから、ここの手順だけは省略できそうにない……?

うーん、やってみないと分からないなぁ……。いつでも唱えられるように、ひとまず暗記しておくことにしよう。



「……まとめると、あと揃えなければいけないのは――」


『オリハルコン』『光竜の魂』『浄化の結界石』……の3種類!


今後の動きとしては、まずは大聖堂にお願いして『浄化の結界石』を作ってもらう。

『オリハルコン』は……何とか王様所有のものを分けてもらえないかな? 無理なら諦めて、『賢者の石』から作るしかないけど……。


そして『光竜の魂』は――……ドウシヨウネ、コレ。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




そのまましばらく悩んでいると、ジェラードが来たということで客室に向かった。


「ジェラードさん、いらっしゃい!」


「おぉ、アイナちゃん! こんにちは、身体の調子はどうなの!?」


「一昨日に起きたばかりなので、まだ少し重い感じはしますけど、大丈夫ですよ!」


ほらこの通り、といった感じで身体を少し動かしてみる。


「それは良かった! 先週は寝込んだって聞いて、僕も驚いちゃってさ」


「あはは……ご心配お掛けしました。でも、その成果もばっちりでしたよ!」


「おぉ! それじゃ、神器の素材が分かったんだね。まだ色々と残っているの?」


「大体は揃っているんですけど、難物が2つあって……。

『オリハルコン』と、あとは『光竜の魂』というものが必要でして」


「こうりゅう……光の竜、かぁ……。ふむ……」


ジェラードはそう言うと、少し考えるように宙を仰いだ。


「何かご存知なんですか?」


「ああ、いや……。

この大陸は、竜王の加護を受けているっていう話があってさ」


「竜王の加護、ですか」


「うん。昔からこの大陸は肥沃でね。

農作物なんかも、他の大陸に比べると良く育つんだよ」


「あー……、そういえばエミリアさんも言っていましたね。

雨が降らないって話をしたら、『神様の加護を受けている』って」


「うん、それと同じ話かな。

地域によって神様か竜王かで違いはあるんだけど、竜王は神様の眷属っていう話もあるからね。

大雑把に言って、まぁそういう話だよ」


「むー……。

加護をくれてる竜王サマに、『魂をください♪』なんていう話になるんですかね……?」


「それは酷い話だね♪」


そう言うと、ジェラードは大きく笑った。

魂を求めるということは、つまり『死ね』ということだ。これはどう考えても、酷い話なわけで。


……あ、いや。今回は竜王じゃなくて、普通の竜で良いんだよね?


「冒険者ギルドでも、たまにドラゴン討伐の依頼があるって聞いたことがあるんですが……」


「そうなんだけど、そういうドラゴンは下位の竜が多いんだよ。

光の名前を冠しているドラゴンなんて、今までにいたかなぁ……。


うーん……?

つまり『光竜』という名前の時点で、そこら辺のドラゴンよりも上位の存在……ということか。


「……話していて、さらに絶望的に感じられてきました」


「あはは……。さすがに、神器だからねぇ……」



話の流れが一旦途切れたところで、そういえば本来の目的は……と思い出す。


「ところでエミリアさんから聞いたんですけど、グランベル公爵の欲しがっているものが見つかったんですか?」


「あ、そうそう。そうなんだよ!

大魔法の媒介に使う結晶を探しているらしいんだ」


「なるほど?

そういえば、魔法が得意な家柄なんですよね」


「うん。何か大規模な魔導器を作っているそうで、そこに高品質の触媒が必要らしいんだよ」


「ふむ……。

高品質を求めているのであれば、錬金術で作れる限りにおいては、私にうってつけの話ですね」


「まったくだね!

必要な素材も聞いてきたから、アイナちゃんなら余裕だよ♪」


「えぇ……? 誰から聞いたんですか、それ……」


「公爵の、お抱え錬金術師にお金を握らせて♪」


「うわぁ」


「ついでにその素材も仕入れてきたから、安心してよ!」


「えっ、ありがたい話ですね!?」


「1週間前は、さすがにまだ揃っていなかったんだけどね。

ところで、相場より安くは揃えたんだけど……ちょっと値が張っちゃってさ。

今回は申し訳ないんだけど、代金をくれないかな?」


「もちろんですよ! どれくらい掛かったんですか?」


「えーっと、金貨302枚!」


「おぉう……。ちょっと、手持ちがないですね……」


今はほとんど全額を、錬金術師ギルドへの貸し付けにまわしてしまっているのだ。

さすがに金貨300枚以上を稼ぐには時間が必要だし……、どうしようかな?


「後払いでも良いけど、前みたいにダイアモンド原石で払ってくれても大丈夫だよ。

売る当てはたくさんあるから」


「そ、それじゃ今回はそうしようかな……。

王都ではまだ1つ目だから、大丈夫ですよね?」


「大丈夫、大丈夫♪

それくらいで経済が乱れるほど王都はヤワじゃないよ♪」



……そんなわけで、今回はお言葉に甘えて、手抜きで金策をすることにした。

手抜きを覚えるとそれに頼っちゃうから、またしばらくは封印することにしよう……。

異世界冒険録~神器のアルケミスト~

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