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ジェラードから素材を受け取ったあと、エミリアさんを呼んで三人で雑談をしていた。
やっぱり人数が多いほど、お喋りするのは楽しくなるよね。
折角なので、エミリアさんとジェラードにも神器の素材を一通り見てもらうことにした。
特に新しい発見は無かったけど、進むべき方向は共有できたかな?
「……さて。それじゃ、僕はそろそろ帰ろうかな」
「あ、そうですか?
もうすぐ昼食ですけど、食べていきません?」
「急に人数が増えるのも、作ってる人に悪いからね。
それに、これから行きたいところもあるしさ」
「ふーむ。それでは引き留めるのも申し訳ないですね」
「うん、また今度お呼ばれするよ。また3日後にくるからね~♪」
ジェラードを玄関まで見送ったあとは、そのままエミリアさんと客室に戻った。
特に戻る必要もなかったんだけど、何となくと言うか、流れでと言うか、そんなふわっとした理由だ。
まだ昼食までは時間があるし、それまではエミリアさんとお喋りをすることにしよう。
「ところでアイナさん、今日の午後はどうするんですか?」
「午後ですか? えーっと……錬金術師ギルドに行って、依頼がないかを見ておきたいですね。
テレーゼさんとダグラスさんにも挨拶をしなければいけないし……」
「それではわたしもお付き合いしますね。
アイナさん、目が覚めてからまだ日が浅いんですから」
「いやぁ、それなりにもう動けるようになりましたよ?
でも、一緒に来て頂けるなら喜んで!」
「はい! それで……錬金術師ギルドの用事が終わってまだ疲れていないようでしたら、わたしの方にも付き合って頂けますか?」
「もちろんです! 何か用事があるんです?」
「ほら、あれですよ。白兎堂に行かないと!」
あー。そういえばエミリアさんの頼んだ服って、もうできてるはずなんだよね。
日数から考えると……あ、私が目覚めた日に出来上がる予定だったのか。
「……すいません、目覚めたのもタイミングが悪かったですね」
「いやいや! そこは服よりもアイナさんが優先だから大丈夫です!
……というわけで、よろしくお願いしますね」
「分かりました。そもそもどんな服かも知らないので、楽しみにしてます!」
「えへへー。あんな服を頼んだのは初めてですから、わたしも楽しみです♪」
特注したものが出来上がるのは、やっぱり想像しただけでも楽しくなってしまう。
元の世界ではこういうのはやったことがなかったから……もっと昔から、挑戦してみれば良かったとも思ってしまうかな。
でも、こういうのはお金が掛かっちゃうんだよね。
お給料もそんなに高くなかったし、その気があっても、結局は断念しちゃっていたんだろうな……。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
昼食のあと、しばらくしてから錬金術師ギルドに向かうことにした。
今日も良い天気だ。こんな温暖な気候でいられるのも、神様とか竜王の加護のおかげなのだろうか。
伝説は伝説として、本当のところはどうなんだろうね?
……しかしそんなことを思っても、調べる術があるわけも無く。
平和ならそれはそれで、その理屈なんてものは偉い人に任せて、一般人の私はその豊かさを素直に享受しておくことにしよう。
……いや、S-ランクの錬金術師は、果たして一般人なのだろうか……。
まぁ、王族でも貴族でも奴隷でもないし、ここは一般人ということにしておこう。うん、それが良い。
頭でそんなことを考えながら、エミリアさんと話しながら歩いていると、無事に錬金術師ギルドに着くことができた。
特に懐かしさは感じられなかったので普通に入って行くと、いつもの通りテレーゼさんの大声から始まった。
「おおおぉ……!?
アイナさーん! おかえりなさああああいっ!!」
例によって周囲の目がこちらに集まるが、そのまますぐに視線を元に戻す人もちらほらいるようだった。
私が来るたびにこの展開だし、常連の中にはもう慣れてしまった人もいるのだろう。
いずれは全員、こちらを見ることもなくなってしまうかも? ……いや、それはそれで望むところか。
「テレーゼさん、お久し振りです。
思ったより早く戻ってくることができました!」
「それは何よりです……!
少し遅い時間ですが、一緒にお昼ご飯なんていかがですか!?」
「あ、すいません。食べてきちゃいました」
「そうなんですか!? 奇遇ですね、私もさっき食べたばかりでして!」
「……え? それなら何で誘ってきたんですか?」
「それはもう、お話をしたいからに決まってるじゃないですか!」
「仕事をしてください」
「うぐっ。そ、それでは仕事の話をします! しちゃいますよ!」
そう言うとテレーゼさんは、引き出しから紙を1枚出して、それを読みながら言った。
「えぇっと、錬金術師ギルドからアイナさんに通達があります。
今日は主任に会っていってください」
「通達……? うーん、何だろう?
どちらにせよダグラスさんとは会っていく予定だったので、早速呼んでもらえますか?」
「えー?」
「『えー?』って……」
「主任を連れてきたら、私の仕事が終わっちゃうじゃないですか!
もう、主任ばっかりアイナさんとお話しててずるい!!」
「仕事だから仕方がないのでは……。
ほら、そうこうしてる間に、ダグラスさんが来ちゃいましたよ」
そう言いながらテレーゼさんの後ろを指差すも、テレーゼさんは振り向きすらしない。
「アイナさん、さすがに私でもその手には乗りませんよ!?」
「こんにちは、ダグラスさん!」
「だからその手には――」
「よぉ、アイナさん!! もう大丈夫なのか?」
「…………」
私とダグラスさんが簡単な身振りでコミニュケーションを取っていると、テレーゼさんは恐る恐るといった感じで後ろを振り向いた。
既に声も聞こえているわけだから、そこにダグラスさんがいるのは疑いようのない現実なんだけど……。
「テレーゼ……、お前は受付だろ? 早く俺を呼べって!」
「うぐぐ……。久し振りの再会だったというのに!」
「確かに久し振りだけど、まだ10日くらいだろ……」
ダグラスさんはテレーゼさんを手で制しながら、改めて私に言った。
「アイナさん、錬金術師ギルドから通達があるんだ。応接室の方にお願いできるかな。
……ああ、そうそう。依頼を受けられるなら依頼書も持っていくけど、今日はどうする?」
「お願いします。できるだけ受けていきたいので」
「本当か? それじゃ準備をするから、先に行っていてくれ」
「主任! 私が応接室までご案内しますねっ!!」
「アイナさん、一人で行けるよな?」
「はーい、大丈夫でーす」
「ぐぬぬ……」
「あ、それじゃテレーゼさん。
エミリアさんにはこの辺で待っていてもらうので、何かあったらよろしくお願いします」
そう言うと、後ろに控えていたエミリアさんも会話に参加してきた。
「テレーゼさん、何かあったらお願いしますね!」
「む、むむ……。これは……断れないッ!!」
「それでは私は、応接室に行ってきます。
エミリアさん、テレーゼさん、またあとで」
「はい!」
「は、はぁい……」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
応接室で一人待っていると、10分ほどしてからダグラスさんが現れた。
どことなく表情が明るいというか、そんな雰囲気を感じさせる。
「アイナさん、お待たせして申し訳ない!」
「いえいえ。ところで通達って何ですか?
そういうの、私は初めてですよね?」
「ああ、うん、そうだな。
アイナさん、おめでとう!!」
「え?」
「Sランクに昇格だ!!」
「え? ……えぇーっ!?」
急に、また何で!?
私、何もしてないんだけどっ!?