/s/[storyId]/_components/heading/assets/back_arrow_icon.4081080bcaba67b8.svg){kind=icon}
/s/[storyId]/_containers/report-container/assets/more-icon.20cfac1b79e24f56.svg){kind=icon}
電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい！がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。
テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
タイトル、作家名、タグで検索
ストーリーを書く
テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
タイトル、作家名、タグで検索
ストーリーを書く
電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい！がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。
ラズールは朝には熱が下がるけど昼からまた上がるという毎日を繰り返して、僕の心配が尽きなかった。
長い間伏せっているためにラズールの体力はどんどんと落ちていく。十日目にしてようやくベッドから下りて自分の足で立つラズールを見て、僕は心から喜んだ。
そしてラズールの背中を貫いた矢尻に何が塗られていたのかが判明した。医師が詳しく調べて、あるものが見つかった。毒とは別に病原菌が塗られていたのだ。
医師から話を聞いたトラビスが、苦々しい顔で僕の部屋に報告に来た。
「病原菌？」
「そうです。今現在バイロン国でしか発生していない病気だそうです」
「もしかして…ラズールの背中がところどころ白くなってるのは、それ？」
「はい。身体の一部分に雪のような斑点が現れることから雪斑症と呼ばれているらしいですよ」
「雪斑症…治るの？」
「薬を飲めば治るそうです。しかし治療薬がバイロン国にしかありません」
「薬がなければどうなる？」
「熱が続き白い斑点が焼けつくように痛み体力がなくなる。身体の弱い子供や老人の中には、死ぬ者もいるそうです。ラズールは鍛えてますから大丈夫でしょうが」
「でも薬がないと治らないんだろ？早くバイロン国に仕入れに行かなきゃ」
「そう言われると思いまして、すでに人を行かせてます」
「さすが！仕事が早いね。誰が行ってくれたの？」
「ネロです。覚えてますか？」
「ネロ！覚えてるよ。ラズールに同行するために代わりを頼んだ…。戻ってきてからラズールのことで頭がいっぱいで、お礼に行くのを忘れてた」
「今回のことは反省してください。城からあなたの姿が消えて、視察に向かったはずのネロを見かけて問い詰めて、視察を同じ歳の騎士と交代したと聞いた時の俺の気持ちがわかりますか？銀髪を隠して変装までして…」
部屋に入ってきた時よりも更に苦々しい顔をして、トラビスが僕を見る。
僕は椅子に座ったまま小さく頭を下げて「ごめん」と謝った。
とたんにトラビスが、ふ…と目を細めて笑う。
「まあ無事でしたからもういいですよ。それにラズールがすぐに気づいたでしょう？」
「向こうに着いてすぐに気づかれた。でも帰れとは言われなかったよ」
「来てしまったのなら傍で守ろうとするでしょう、ラズールなら。ところであいつの様子はどうですか」
「うん…朝には熱が下がってるんだけど昼になると必ず上がってくる。熱が下がってる間に食べれてるけど少ししか口にしないから…体力も回復しない」
「そうですか。ネロが早く薬を持ち帰ってくれるといいのですが」
「うん…。今からラズールの部屋に行くけど、トラビスも行く？」
「ご一緒します」
トラビスに頷いて立ち上がり、扉に向かう。部屋を出て歩いていると、前方から一人の騎士がひどく慌てた様子で走ってきた。
騎士は僕とトラビスにぶつかる勢いで止まると、片膝をついて肩を上下させながらこちらを見上げた。
トラビスが僕の前に出る。
「どうした？緊急の用か？」
「はいっ…すぐに会議の間へお越しください！大宰相がお待ちですっ」
「大宰相が？」と呟いて僕は首を傾げる。
大宰相は僕がフェリの代わりとして王になることをすすめはしたが、本心では僕のことを認めてはいないらしい。僕が意見を述べても素直に首を縦にふらないのだ。
僕には国を治める知識が圧倒的に足りない。だからどうしても大宰相や大臣達の協力が必要なのだが、彼らは非協力的だ。僕が意見をすることもよく思っていないようだ。
だからといって、身代わりの僕だけどお飾りの王になるつもりはない。
「フィ…フェリ様？どうしますか？」
「…行く。僕は何が起こってるのかを知らないといけない」
「もちろんです。では参りましょう。おまえは下がっていいぞ」
「はいっ」
行き先を会議の間に変える。
歩きながら僕の斜め後ろをついてくるトラビスにチラリと目を向ける。
トラビスも昔は僕のことをよくは思っていなかった。でも僕が姉上の身代わりをしていたと知った今は、僕の力になってくれる。たびたび父親である大宰相に、苦言を呈してくれているみたいだし。
僕の視線に気づいたトラビスが「なにか？」と微笑む。
「別に…」
僕は眉をしかめて前を向いた。
最近は僕に対してすこぶる愛想がいいけど、トラビスの笑顔は胡散くさく見える。昔は会うたびにあんなに僕を睨んでいたのに。昔から変わらず接してくれるのはラズールだけだ。
早く会議を終えてラズールの様子を見に行こうと僕は足を早めた。
会議の間には、すでに大宰相と三人の大臣達が集まっていた。
大宰相が僕に挨拶をして、後ろにいるトラビスに気づく。
「なんだ、王と一緒にいたのか。今おまえの所にも人を行かせたのに」
「それはどうも。他には誰が来るんだ」
「副将軍のレナードだ」
「そんなにも重大なことなのか」
「そうだ」
大宰相と会話をしながら、トラビスが僕を椅子に座らせる。
僕と机の角を挟んだ窓側に大宰相と大臣達が順番に座り、大宰相の向かいの扉側にトラビスが腰を下ろした。
すぐにレナードも来て、僕の前で頭を下げる。
「王もおいででしたか。村より帰ってきて以来ですね。つつがなくお過ごしですか？」
「僕…私は元気だよ。あの時は世話をかけたね」
「あなたが王だと気づけなくて不覚でした。ラズール様は気づいてましたのに」
「あいつの嗅覚は特別だからな」
トラビスがふんと鼻で笑ってレナードに座れと命じる。
レナードが大宰相と大臣達にも挨拶をして、トラビスの隣に座った。
因みにレナードとは、視察に向かった時のラズールの隊の副隊長だ。ラズールは特に役職はないけど、昔から僕の側近をしているために、若い騎士などは敬意を払っている。レナードもそうだ。最近将軍に昇格したトラビスは、ラズールのことをライバルのように思ってるみたいだけど。
そんなことをぼんやりと思っていると、いつも冷静な大宰相が、いきなり僕の方に身を乗り出した。
「王よ、ここ何十年の間で、我が国最大の危機が起こりました」
「どういうこと？」
「先ほど国境警備の者が早馬で来たのです。ひどく慌てた様子でした。その者の報告によれば、隣国のバイロン国が、我が国に攻め入ってきたと」
「はっ？どういうことだ！」
トラビスが激しい音を立てて立ち上がる。
僕は驚きのあまり、すぐに言葉が出なかった。
コメント
2件
90話の時に言いたかったのですが忙しくて出来ませんでした🥲…90話突破おめでとうございます🎉🎊これからも活動頑張ってください！
/s/[storyId]/_containers/next-in-series-container/next-in-series/assets/list-icon.c10ab777f3210550.svg){kind=icon}
作品ページ