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「……あったわ【巣窟】。洞窟みたいね」
森深くまでやってきた。地面に沈んでいくような洞窟。こんな洞窟見たことがないから少し怖いな。
「当たり前だけど、ゴブリンの巣窟みたいね」
「バブ」
既に6匹のゴブリンを倒してる。この洞窟から出てきてるのは明白だよね。
シディーさんの後ろをついて洞窟へと入っていく。日の光がなくなってきて真っ暗になる。シディーさんが光の魔法球を作って浮かせる。
「魔法球は魔力消費が少ないから使い分けが重要。光はこの通り魔法球にするだけであたりを照らしてくれる。火も同じようにしてくれるけど、熱すぎるからあまり洞窟ではね。因みに私は光と風と火の魔法が使えるわ」
魔法球の説明をしてくれるシディーさん。ということは氷と水は涼しくしてくれるのか。実用的で面白い技だな。
「ミスリル程の強度にできてる私はこれを投げつけたりしても使うの。魔法を使うより魔力を使わなくて済むから重宝すると思うわ」
なるほど、投擲武器にも使えるのか。ホントに便利だ。
シディーさんが魔法球を教える本を書く理由がわかる。魔法の訓練にもなるし、利便性が高い。
「おっと、ゴブリンのお出ましね」
「ギャギャギャ!」
光に連れられてゴブリン達が集まってきた。狭い洞窟内。彼らは錆びた短剣を振り回してくる。
「近づかずに魔法で対処して。火の魔法は危険だからやめてね」
「バブ!」
シディーさんの声に答えて水の魔法を放つ。ついでに魔法球を作って宙に浮かせると突撃させる。
「そうそう、そうすれば魔力消費が抑えられる。って教えてすぐに再現するなんてやっぱり天才ね」
「バブ!」
ゴブリンを5匹倒す。シディーさんは褒めて頭を撫でてくれる。というか頭に乗ってくる。妖精って便利だな。自分で歩かなくて済むし。
『レベルがあがりました』
「バブ!?」
魔石をシディーさんと一緒に拾っていると声が聞こえてくる。
初めてのレベルアップの声。称号の時と同じで女神様の声だな。
「レベルが上がった? ってことは普通の人の倍以上かかるってことね。ステータスを見て見るといいわ」
「バブ?」
「あ、ステータスの見方がわからないのね。ステータスも魔法と一緒よ。自分の能力が見たいと想像するのそうすれば、目の前に透明な窓が現れて数字が描かれる」
シディーさんの説明を聞いて目を瞑る。能力が見たい、僕の才能が見たい。そう思うと真っ暗な視界に数字が映し出される。目を開けても数字が見えるようになった。
ーーーーーー
ステータス
アルス
職業 赤ん坊
レベル2
HP 40
MP 180
STR 20
DEF 20
DEX 17
AGI 15
INT 90
MND 90
称号
【異世界転生者】【翻訳】【言語理解】
【生まれて一年以内に魔法】【MPアップ】
【セブン】【魔法の威力アップ】
【生まれて一年以内にゴブリンを倒した】【ゴブリンへのダメージアップ】
ーーーーーー
なるほどなるほど、これがステータスか。称号は色んな力をくれるんだな。どんどんとっていった方がよさそうだ。
この世界に来て、ルード達の言葉がわかったのはこういうことだったか。異世界転生者の称号が手助けしてたんだな。
でも、称号とは別に魔法関係のステータスが上がってる。訓練の成果と思っていいのかな。
「みれた? どう? 凄いでしょ?」
「アイ!」
シディーさんの問いかけに元気に答える。
ゲームみたいで面白い。友達の家でやらせてもらってゲームは本当に楽しかった。まさかリアルでそれをやるようになるとは思わなかったけどね。
「さて、私はそろそろルード達の所に帰るわ」
「バブ?」
「一人でゴブリン達を討伐しなさい。これが最初の実戦。赤ん坊には酷かもしれないけど、あなたみたいな天才には丁度いいでしょ?」
シディーさんの言葉に首を傾げる。
真っ暗な洞窟の中、前を見ると不安が頭をよぎる。
ここまでは彼女がいたから不安を感じなかったけど、いざ一人でと言われると不安で恐怖が襲い掛かってくる。
「バブ! バブバブ!」
「怖い? 大丈夫よあなたなら大丈夫。自分を信じなさい」
僕の訴えを聞いても彼女はそう言って突き放してくる。
赤ん坊の僕をこんな危険な所に一人で行かせるなんておかしいよ。
「バブ!」
「ふふ、ルードを思い出すわね。私、あの子の事嫌いだったのよね」
「バブ?」
シディーさんの告白を聞いて僕は首を傾げた。
「オリビアみたいな子にあの子は似合わない。そう思って冒険者をやめさせようと思ってルードを指導したの。死ぬかもしれない試練を与えてやめさせようとね。でも、あの子は生き残って強くなって帰って来た。凄い子。あなたはそんなルードの子よ。って別にあなたは嫌いじゃないわ。むしろ好きかも」
「ば、バブ……」
シディーさんはそう言って頬を赤く染める。手のひらサイズの妖精さんが顔を赤くさせるなんて可愛いに決まってる思わず見惚れてしまった。
「じゃあ、頑張るのよ!」
「バブ!」
見惚れているとシディーさんはそう言って消えていく。魔法球もなくなってしまったから自分で作り出してあたりを照らす。
静寂が僕に不安を植え付ける。そして、ゴブリンの鳴き声が近づいてくる。