テラーノベル
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「つけ回してはいないから、ストーカーではないだろ」
「じゃあ何?」
「溺愛だろ?あ、ありがとうございます。お会計行きます」
マスターがレジに行くと、アキさんは
「気を悪くしないでね。ストーカーなんて思ってないから」
と、私の隣に立つ。
「はい……」
「でも、直美さん…中西さんの話になると、いつもちょっと表情が硬いから……男から見れば照れているとか、照れ隠しって言っているけど、私は少し気になってね」
……はぁ……
電車で漏れたため息は、仕事の疲れからではない。
また今日も監視されているような気分で、気持ちが上がらないのだ。
その上、アキさんから、夫婦の事情がバレているのかと思うような言葉を掛けられたから、緊張した。
「あ、直美さん。今、帰り?」
「こんにちは、と…ただいまです。風子さんは買い物ですか?」
「そう。今日は足りないものだけ…って思っていたけど、行ってみるとねぇ。今日は鶏肉がお買い得になっていたから急遽からあげに予定変更…とか、結局この荷物になっちゃった」
いいなぁ…
「何が?からあげ好き?」
「…好きですけど……なんて言うか…そうして自由に任される感じが羨ましい…」
ついさっき、買い物には一人で行かなくていい、と夫から釘を刺されたばかりの私は、思わずつぶやいてしまった。
「そう?旦那さんが食べたいものを決めてしまうの?」
「ではないんですけど…」
駅前で会った風子さんと家まで一緒に歩きながら、説明に困ってしまう。
「なんでも“直美、直美…”って…“一緒に”っていう感じで…買い物も……」
しんどい、という言葉は何とか飲み込んだ。
「……それくらい、仲いいエピソードで羨ましいくらいだけど?」
人にわかってもらうのは、難しいな…無理なのだ。
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