テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
「僕は残ってこの現場を仕切る。お前んとこのテレパス坊主を使って、皇宮に報告してやるからお前は早く、嫁を追いかけろ」
振り向かないまま、真守に質問する。
「真守。環が土蜘蛛を止めると言った方法以外になにか、いい案は浮かぶか?」
「ない。現状お前の嫁が考えた作戦ぐらいしか、土蜘蛛から帝都を救う解決方法はないやろ」
即答がいっそ心地よかった。
「そうか」
思った通り、都合のいいことは無いと思い知らされる。
じゃりっと音がして、真守が俺の背後へと近づくのがわかった。
「皇宮でもし、お前が嫁さん可愛くて土蜘蛛を逃してたとしても……それはもうお前に任せるわ。帝都の運命お前に預けた」
「真守……」
普段とは違う声の柔らかさに振り向く。
真守は声と同じく珍しく、柔和な笑みを浮かべていたが、俺と視線が合うといつものように、ニヤッと笑った。
「あぁ。そうや。お前が死んだら、あの金色の嫁は僕が貰う。九尾が嫁とかオモロいしな」
「誰が死ぬか! 環は俺の嫁だ」
「そうか。じゃ、せいぜい気張り」
バシンと肩を叩かれ、「あぁ」と短く返事をして大通りの道を見る。
そこは土蜘蛛が通った後で地面はめちゃくちゃ。ところどころ、両脇の建物の一部を脚を引っ掛けたのか、道に木材やコンクリートの塊が落ちていた。
「車で御所まで行くのは無理だな」
とりあえず、前へと走り出す。
その時、道の端に乗り捨てられた|自動自転車《バイク》を見つけた。
「これは|天佑《てんゆう》かっ」
きっとこの辺りの金持ちが逃げるのに使ったが、何らかの理由で乗り捨てたのだろう。
バイクに素早く近づく。
「車輪、タイヤはパンクなし。鍵は付いたまま。これは海外輸入のハーレー。これなら乗れるな」
俺が知っている型のバイクだった。ハンドル付近の手動レバーでキャブレターの吸気量や点火レバーを調整し、エンジン回転数を管理するタイプのもの。
速度は本来ならゆっくりと走行して運転するが、今はそんなことを言ってられない。
倒れたバイクをぐいっと起こして、跨る。
ぐっと両手でハンドルを握り締めて、一気にエンジンを吹かすと低くて、犬が唸るような駆動音と単調な揺れが起きた。
揺れる音はまるで心臓の音のようだ。
「いける。問題なく走れる」
確信して全速力で前に走り出したのだった。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!