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もはや日常生活のようにしか感じていない職質された後、偶々様子を見に来てくれた金髪少女に目的地へと案内してもらった後の話である。

「…はぁッ、…はぁ…もう少し運動しときゃよかった…」

「まぁそれでも約束の時間よりも10分早く着けてましたし、これは悠寿さんのオカン脳が働いてくれたおかげっすね…」

無事今回の目的地であるオフィス内に入るなり、運動神経の悪い恐神先輩は呼吸を荒くしながらうずくまって乾いた喉を自販機で買った水で潤す。

それに対して何だか周囲の視線が鋭くあざ笑うような、まるで俺達二人を廃棄物や汚物を見るような目で見られている気がするのは一体――

「おやおや…思っていたよりも遅い登場だったね、新人社員の二人共。」

恐神の体調を少し気にしながら様子を見ていると、エレベーターからやや裕福な体型をした男が姿を表した。

「あぁ…すいません。まだ道に慣れていないものでして…」

「今回は此方のミスで遅くなってしまいました、申し訳御座いません。」

まだ顔色が良くない恐神を無視するように、目の前にいるこの場の取締役と思われる男が少々棘のある声で毒を吐く。

表の都会にまだ不慣れな俺でも集合時間だけは脳裏に焼き付けて事務所を後にしたから、集合時間は間違っていなかったはずだ。何かこの会社特有の掟でも存在しているのだろうか。

「まぁ分かってくれてるなら良いんだよ。それじゃあ君達は人事についてくれ給え。忙しいとは思うけれど、君達には期待しているんだ。よろしく頼むよ。」

「…承知しました。」

毒を吐くだけ吐いて、清々しい表情で小太りの豚のような男が目の前を去るなり、恐神の様子をもう一度確認すると、普段の男らしく俺が密かに憧れている特有の強さを隠蔽するような弱さを見せた恐神先輩ではない何かが俺の視界を染色した。

「恐神先輩、どうかしたんすか。何処か辛いなら俺一人でもやれるんで無理しないでくれても…」

「…いや、気にすんな。これはオレ個人の問題なんだ。お前が気にする必要はない。…な、行こうぜ?」

目の前で普段魅せるはにかんだ柑橘のような眩しい笑顔とは違う、刺繍糸で無理矢理表情筋を引き上げたような表情をした恐神先輩は、俺を引き連れて生まれたての子鹿のような歩き方で指名された人事部へと鉛よりも重い足引きずりながら前へ進めた。

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