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そのまま何も言わず家までかっ飛ばし、福は自宅がある通りを自転車を押しながら歩いていた。

この通りに福の家も颯真の家もある。

だから、福が中学生だった時も、こうして二人で自転車を押しながら帰っていた。

「なんだか変な気分すね。」

「なにが?」

「半年くらい前もこんなふうに歩いてたのになあ。福さんが高校生になっちゃっただけで、こうして二人で歩くのが特別なことみたいに感じちゃって……」

恥ずかしそうにはにかみながら、颯真は自身の頭をかく。

「何言ってんだ、お前は。……待ってくれたら、これからも一緒に帰るよ」

すると、福に覆い被さっていた影がなくなり、福の左頬に夕日が当たる。

真夏だからか、かなり熱くて、手で覆いを作る。

すると、颯真が福の顎を優しくつまんだ。

その目は熱を帯びていて、まるで、情事を行っている時の獣のようだった。

「……福さん、キス、してもいい?」

些か唇が震えている。そういえば付き合ってから、颯真とは手を繋ぐ以外のスキンシップを取ったことがなかった。だから、緊張しているのだろう。……可愛いと、思ってしまった。

「いいよ」

颯真の汗ばんだ手が両頬に触れる。

少しだけ背伸びをして、唇を差し出す。そして、ハンドルから手を離し、颯真の首に手を回す。自転車が倒れた。それでも構いなしに彼の唇に唇を重ねる。ぎゅっと抱きしめる。颯真の手が両頬から腰へと降りていった。そしてぐっと引き寄せられる。

そんな時だった。

見知った声が自宅の方から聞こえてきたのだった。

福は慌てて颯真を引き剥がす。

そして、声の聞こえた方に目をやると、思った通り、そこには葛西の姿があった。

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