テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
〜あらすじ〜
手術前夜、恐怖と不安に押し潰されそうになりながらも、翔との冗談で心を保つかもめ。
翌朝、手術室の扉を前に「大丈夫」と強がりつつも、胸には希望と覚悟が燃えていた。
第五話 本編 「暁の炎」
病室の明かりはもう消えていた。
消灯後の静寂は、昨日とは違う圧迫感を帯びている。
明日、手術台に乗る──それだけで、全身がぎゅっと縮こまるようだった。
隣のベッドには翔ちゃんが座っていた。眠れていないのか、目が真っ赤で少し腫れている。
「……大丈夫…?眠れないの、?翔ちゃん」
俺は声をかけたつもりだったけど、声が震えて思わず笑いそうになる。
「いや、かもめんが隣におるから寝れ……んへっ、寝れるわけないやろ!」
翔ちゃん、咳と笑いが混ざったような声で、まるで漫画のリアクションみたい。
つい俺も吹き出してしまった。笑いながら、変に胸が熱くなる。
◆
俺はベッドの上で足をぶらぶら揺らす。
手術前の緊張が全身に回り、呼吸が浅くなる。
それでも、少しでも翔ちゃんを安心させたくて、無理やり明るく振る舞う。
「明日の朝、俺の頭、宇宙人にさらわれてるかもしれないけど……」
冗談を言うと、翔ちゃんが「絶対、俺のせいやん!」と返す。
くだらないやり取りだけど、笑いながらも心臓がバクバクしているのを抑えられない。
ふと窓の外を見ると、夜明け前の空が淡く色づき始めていた。
青とオレンジの混ざった空が、何だか希望のようにも見える。
──こんな色の空を見るために、生き残らなきゃ、って思った。
◆
その夜は長かった。
点滴のチクチクする感覚も、痛いほどの頭痛も、全てがリアルな恐怖として迫ってくる。
でも、翔ちゃんが隣に座っているだけで、少しだけ勇気が湧いた。
「かもめん……約束な」
翔ちゃんが小さく手を握ってくる。
「手術、終わったら一緒にカレー食いに行こ」
そんなふざけた約束に、思わず笑いが漏れる。
「え、胃袋で生き返るんかい……」
緊張の中で笑える自分が、ちょっと誇らしくもあった。
◆
そして朝。
看護師さんに付き添われ、手術室の前に立つ。
白い壁、消毒液の匂い、機械の音。全てが非日常で、心臓の音が大きく響く。
「かもめん、怖ないか?」
手術室の入り口で翔ちゃんが小さく聞く。
俺は深呼吸をひとつ。
「……うん。でも、終わったらカレー、な?」
冗談めかして言ったけど、翔ちゃんは真剣な目で頷いた。
その目に、自分の全ての覚悟を映してもらった気がした。
手術室の扉が開く。
白衣の医師や看護師が迎え、俺の足は自然と前に進む。
ベッドに横たわりながら、最後に心の中でつぶやいた。
「大丈夫、俺……負けないから。」
手術が始まる。意識はまだはっきりしている。
けれど、翔ちゃんと交わした約束の光が、胸の奥で確かに燃えていた。
今回はここまで!
次回、宇宙人にさらわれるかもめんです!嘘です!さらわれません!いつもみたいに閲覧数のいいねお願いしまんもす!