テラーノベル
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その後も俺は変わらない日々を送っている。
あの雨の日事なんてもう頭になかった。
「ふぅ……帰ろ。」
俺は少し残業をして会社を後にした。
「今日はアイス食べちゃうもんね。」
俺は冷凍庫にあるちょっといいアイスを思い出しながら帰路につく。
楽しみだと思いながらルンルンで歩いていた。
「お兄さん。」
そうすぐ後ろで言われて俺か?と思い振り返った。
そこには見覚えのある男性が立っていた。
「こんばんは。」
キャップを上にずらし顔を見せる。
あの時スーパーでぶつかった男性だ。
「あえ、と、こんばんは……。あの時の……。」
俺はスーパーでのことを思い出し男性に挨拶をした。
いつから後ろにいたのか。全く音がしなかった。
「こんばんは。あの時のお兄さんだと思って声掛けちゃいました。」
そう可愛らしくニコっと笑って言った。
「あぁ、よく分かりましたね……!」
俺は笑顔て返す。
彼は笑顔のまま
「ええ。そりゃ。ね?」
と言う。
「え……?」
と不思議そうに俺は彼へ言う。
彼は静かにこう言った。
「ねぇ、お兄さん、吸血鬼、見た事ありますか?」
俺は思わずギクッとしてしまった。
思い出したのだ、あの日を、あの時の記憶を。
「え、や……な、ないで、す。」
俺は目を泳がして答える。
そんな俺を見た彼は言った。
「へぇ……。」
そう言ってニィと笑った彼の犬歯は、鋭く尖っている。
「えっ……?」
俺は理解が出来ず固まってしまった。
彼の目も赤くなっている。
この人、吸血鬼だ。そう理解に時間がかかってしまった。
「あ……あ……。」
俺は恐怖で震え始める。
後ずさりをしていつ逃げようかタイミングを見ていた。
「はは……可愛い……。見つけた……。俺の運命の人……。」
そう言って近付いてくる。
「やめっ……っ……。」
俺が大きい声を出そうとした瞬間彼は手を俺の前に出した。
その瞬間、俺の意識は無くなった。
「っ……!」
俺は勢いよく身体を起こす。
夢か、夢だったのか。
しかし部屋が違う。
「起きた……?」
そう声が聞こえてばっとそちらへ向く。
先程の彼だ。
俺は焦って部屋の隅まで後ずさりをして逃げた。
恐怖で堪らない。
「大丈夫。あの時みたいなことしないよ。」
あの時、それは雨の日に目が合った時の事。
「か、帰る……っ。帰らせてっ……。」
俺は震える声で彼に言った。
彼は俺を見て
「それは出来ないな……。」
と静かに答えた。
「噛まないよ。噛まないから、話、聞いて欲しい。」
そう続けて言う。
信じられるわけがない。
「やだ……帰りたい……。」
俺は恐怖で泣いていた。
30代でこんなにも泣いたのは初めてだ。
「ごめんね……。」
彼は俺を見て悲しそうにそう答える。
「忘れるっ……誰にも言わないからっ……!」
俺は必死に彼を説得しようとした。
恐怖で全身が震えている。
「……」
彼は黙って俺を見ていた。
逃げなきゃ、そう思ってなんとか足を動かして玄関へ行く。
何故か開かない。鍵はかかっていないのに。
「……っ!」
俺は絶望と共に力が抜けてその場に座り込む。
「お願い。俺の話、聞いて。」
後ろから彼がそう静かに言った。
コメント
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また新作ですか?!! 続きが気になりすぎます🫣💕 美味しく読まさせて頂きます🙌🏻✨