「ねぇ~!!すずちゃ~ん!!」
「あ、なぁーにー?」
「この写真見てよ笑」
あ、これは私の友達が写っている写真だ。そう思い私は麗羽からスマホをぶんどった。私の友達は加工詐欺かってくらい加工している。
「いやぁ⋯⋯これはないよね笑」
頷いても話を聞き流していても、どうにも腑に落ちなかった。なぜなら、加工されていたのは友達ではなく私だったから。まるでブスということを突きつけられているかのように。友達というのは明香里、美佳、その他諸々。本当に残念な美人だ。人のことを陥れることにしか興味がない自己中クソ女。
「麗羽、ごめんね⋯⋯恥ずかしいよね。」
「んーん、鈴鳴よりもあいつらの方がブスだから笑」
麗羽、私のたった一人の友達。気がつけば明香里にも美佳にも嫌われていた。私が誰とでも分け隔てなく接している『八方美人』だから。
「見返してやる。絶対に⋯⋯」
「その勢いよ!!!さっすが鈴鳴!!」
あたしの友達は陰湿ないじめを受けている。そんなあたしの友達は肌が色白で容姿端麗だ。正直、加工なんて要らないくらいには美人だ。それを気づいていない。夕暮れに赤く染まるあたしの友達。あたしが窓を開けるとそよ風で髪をなびかせている。優しい柔軟剤の香りがあたしと友達の間をすーっと通っていった。
「あのさ、すず」
「あ、うん!なーに?」
これだけは言わなければならなかった。
「あたしね、転校するんだ。中学生になる前に隣街へ引越しが決まったんだ。だから⋯⋯」
「うん。私⋯⋯」
友達は泣き出してしまいそうなほど顔を歪ませて無理矢理笑顔をつくっていた。
「麗羽が居なくたってやってけるし笑」
「うん、寂しいんでしょ?」
本心を隠した友達に抱きついて高校は一緒がいいねなんて夢みたいなことを言った。すると鈴鳴は笑顔をつくらず
「え?麗羽と同じところに転校するから、絶対お金だけはあるし頭も悪くないし⋯⋯」
と、真顔でスマホを取り出した。自然な笑みが夕暮れの太陽に溶けていった。
榎木鈴鳴、15歳、高校一年生、ようやく志望校に受かった。しかも麗羽と一緒に。高鳴る胸の鼓動を制服の浮き沈みで感じつつ爪と爪をかつかつと近づけて音を鳴らしていると隣の席に綺麗な女の子が座った。そして、運の良い事に麗羽と同じクラスになれた。斜め左上に中学校から友達になった咲月と加奈が座った。もう一人イツメンと呼ぶほど仲がいい友達がいるがその子は上の階に行ってしまった。上に行った子の名前は絵里香だ。
これからとてもとても楽しい高校生活を送れるのかなぁと、妄想を広げては隣にいる女の子に興味を持った。
あの時の転校は間違いではなかった。絶対にそうだ。小学生時代が酷すぎたからこそ今がある。そんなことを考えてはにやけてしまうのだ。