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#高校生
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第6話 「最初の答え」日曜日の朝。
柳城高校グラウンドには、久しぶりに緊張感が漂っていた。
練習試合――
相手は中堅校・南筑高校。
決して全国レベルではない。
だが、今の柳城にとっては“試金石”だった。
「いいか」
試合前、福間監督が選手たちを前に言う。
「勝ち負けはどうでもいい」
ざわつく空気。
「今日見るのは、“やってきたことが出るかどうか”や」
視線が一人ひとりに向く。
「整備も、声も、準備も」
一拍置いて。
「全部、試合に出る」
プレイボール。
1回表(柳城守備)
初球。
――パシッ!
小早川のミットに、乾いた音が響く。
「いいぞ!」
自然と声が出る。
内野も連動して動く。
ゴロをさばき、確実にアウト。
3人で攻撃終了。
ベンチに戻ると、小さなどよめきが起きる。
「……なんか違くね?」
守備が、揃っていた。
2回裏(柳城攻撃)
先頭の田村が打席に入る。
カウント2-2。
外角の球を、逆らわずに流す。
――カキン!
打球はレフト前へ。
クリーンヒット。
ベンチが沸く。
「ナイスバッティング!」
以前の田村なら、引っ張って凡打していた球だった。
だが今は違う。
送りバント成功。
進塁打。
そして――
タイムリー。
1点先制。
「おお……」
スタンドからも声が漏れる。
繋がっていた。
野球になっていた。
中盤
試合は互角。
柳城は守備で踏ん張り、攻撃で確実に走者を進める。
派手さはない。
だが崩れない。
小早川はマスクの奥で感じていた。
(ちゃんと、野球になってる)
6回表
二死一三塁のピンチ。
ここで相手4番。
緊張が走る。
(準備……)
福間監督の言葉がよぎる。
配球を組み立てる。
インコース。
外。
最後は――
「ここだ」
――ズバン!
見逃し三振。
ミットの音が響く。
ベンチから大歓声。
小早川は思わず拳を握った。
(やれた……!)
最終回
スコアは2対2。
同点。
柳城の攻撃。
一死満塁。
打席には――小早川。
(ここで打てば……)
息を吸う。
振りかぶる投手。
初球。
振り抜く。
――カキン!
いい当たり。
だが――
セカンド正面。
ダブルプレー。
試合終了。
2対2。引き分け。
ベンチに戻る。
誰も笑っていない。
勝てた試合だった。
「……くそっ」
小早川が小さく呟く。
そのとき。
「顔上げろ」
福間監督の声。
全員が顔を上げる。
「今のが“今のお前ら”や」
静かに続ける。
「確実に良くなっとる」
一拍置いて。
「でも、勝ちきれん」
その言葉が重く落ちる。
「ここからや」
グラウンドを見渡す。
「あと一歩を埋めるのは、これからや」
選手たちはうなずいた。
悔しさはある。
でも――
手応えもあった。
帰り道。
啓介は空を見上げる。
(届きそうで、届かない)
その距離が、はっきり見えた。
水路に夕日が映る。
柳城はまだ途中だ。
だが確実に、前に進んでいた。
第6話 終
ここで
👉「変わったけど、まだ足りない」
がはっきりしま