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瑞希くんの本心だね…😢
瑞希くんから何も連絡が来ない。
もう日付が変わってしまった。
いつもなら「遅くなる」っていう連絡はくれるのに。どうしたんだろ、何かあったのかな。
落ち着かず、部屋をウロウロしてしまう。
「スマホと睨めっこしたって何も変わらないし……」
瑞希くんのプライベート用スマホに
<お疲れ様。今日は帰り遅いね。何かあったの?大丈夫?>
メッセージを送った。
しかし一時間ほどしても既読にならない。
うーん。
明日は私も仕事だ。そろそろ寝ないと、支障が出るかもしれない。
瑞希くんからも遅くなる時があるから、葵のタイミングで先に寝ていいと言われている。
でも、私は明日から自分のマンションに帰ることになってるから
「今日は早く帰ってくるから、しばらく会えなくなる分……」という彼の言葉がさらに不安にさせた。
こんなんじゃ、眠れないよ。
ポフッと寝室のベッドに倒れ込んでみたが、眠れるわけがなかった。
その時「ピンポーン」というインターホンの音が聞こえた。
「えっ?」
瑞希くんなら鍵を持ってるから、普通に入ってくるはずなのに。
慌てて玄関に行く。
そこには
「瑞希くん!?どうしたの!」
相手を確認して、ドアを開ける。
「こんばんは。葵ちゃん。遅くなってごめんね」
春人さんと春人さんに支えられた瑞希くんがぐったりしていた。
手には包帯のようなものが巻かれている。
「どうしたんですか?あっ、どうぞ中に……」
「お邪魔しますー。ごめん、ベッドにもう運んじゃうね」
春人さんは瑞希くんを抱えながら、寝室に連れて行き、横にした。
「……。もう家着いたの?」
瑞希くんの目が薄っすら開いた。
「着いたよ。葵ちゃんもいるし、ゆっくり休みな。明日は俺たちキャストはみんな休みでいいってさ。業者が入って片付けるから……」
「ん……。わかった」
何があったのか理解できず立ち尽くしている私に、春人さんが
「ちょっといいかな?」
リビングへ呼び出してくれた。
「えっと。簡単に説明すると、お店でお客さんが暴れて、割れたグラスの欠片が流星の手に刺さっちゃったの。一応、病院に行って手当てしてもらってきた。縫うほどじゃないから大丈夫だって」
そんなことがあったの。
「そう、なんですね。春人さんも大変でしたよね?」
「ううん。今回は俺は何も。流星がほとんど庇ってくれたから」
「瑞希くん、今日、お客さん多かったんですか?具合が悪くなるまで飲んでるの見たことなくて」
「あぁ。後輩を庇ってお客さんに飲まされてね。病院で手の傷と一緒に見てもらったけど、急性アルコール中毒とかにはなってないから大丈夫だって。でも一応、安静にってさ」
(詳しいこと話して、葵を心配させるなって言われてるから、どこまで話していいのかわからないよ)
「えっ、そんなことまであったんですか」
春人さんを玄関まで送って行く。
「流星を頼むね」
そう言って彼は帰って行った。
寝室にいる瑞希くんのところへ行く。
顔が苦しそう。
「瑞希くん、大丈夫?お水飲む?」
「ん……。飲む」
彼の上半身を少し起こし、ストローで水を飲んでもらう。
「気持ち悪い?」
「大丈夫」
本当に大丈夫なの?
大丈夫って顔してないよ。無理しているんだろうな。
「少し動けるなら、楽な服装に着替えようか?手伝うから」
彼はまだ仕事に行った時の服装だ。
「うん」
珍しく素直だな。
彼の部屋着を持ってくる。
「はい、バイザイして?」
「ん……」
可愛い、指示に従ってくれる。
大変だったよね。
「なんか……。エロいな」
「えっ?」
意識ははっきりしているんだろうか。
わかってて私にやらせてる?
でも顔色は悪いよね。
「腰、少し上がる?」
見ないように見ないように。
できるだけ見ないように脱がして、ハーフパンツを履かせた。
「はぁ……」
なんか緊張で疲れた。
脱いだ服を持って行こうとすると
「ごめんな」
瑞希くんに謝られた。
「えっ?」
「今日、早く帰ってくるって言ったのに。約束守れなくて」
なんだかすごく愛おしいと感じてしまう。
「ううん。瑞希くん、大変だったね。ゆっくり休んで」
具合が心配だったからいつも通り一緒に寝ることにした。
次の日の朝、私が起きても彼はまだ寝ていた。
起こさないように寝室からリビングへ行く。
「うーん。頭痛いな」
んっ、起きたのかな?
「瑞希くん、大丈夫?」
リビングから寝室に向かうと、瑞希くんが上半身を起こしていた。
「葵?もう朝の十時だよ。仕事は?」
えっと……と下を向く。
「休んじゃった」
「えっ?ごめん。俺のせいだよな」
「違うの、私が瑞希くんと一緒にいたかったから休んだの!だから、瑞希くんのせいじゃない。そんなことより、大丈夫?いろいろ大変だったんだって」
「んー。そうだな。久しぶりに……。痛っ」
彼が手を抑えた。
「まだ痛むよね。利き手だから大変。まだ気持ち悪い?」
「ううん。気持ち悪くはない。ちょっと頭痛がする」
「痛み止め、春人さんがくれたから、気持ち悪くないならご飯食べて、薬飲もうか?何も食べないで薬飲むと、胃に負担がかかるから」
「葵って神なの?」
「はぁ?何言っているの?これくらい普通だよ。ちょっと待ってて」
瑞希くんってお粥嫌いそうだけど、しょうがないよね。ちゃんと味付けはした。
ベッドサイドにお粥と水と薬を持ってきて、彼には上半身だけ起きてもらった。まだ熱いかな。
ふーっと冷まして
「はい。あーん?」
レンゲで彼の口に運ぼうとした。
「熱いかも」
なかなか食べようとしない彼。
「お粥嫌いかもだけど、食べて」
「違う……」
ボソッと彼が呟く。
「こんなに優しくしてもらったことない。ていうか、俺もここまで心を許した女の人いないし。ずっと病人でいいかも」
「なにそれ?」
ずっと病人でいいと言う言葉に笑ってしまう。
「はいっ。じゃあ、食べて?」
パクっと彼が食べた。
「美味い」
食べてくれて良かった。
「お水飲む?」
「うん」
ストローを彼の口に運ぶ。ゴクッと彼が水を飲んだ。
「まだ食べられそう?」
「うん」
なんだろう、子どもがいたらこんな感じなのかな?
母性本能をくすぐられる。
少な目に作ったこともあり、彼は完食してくれた。薬を飲んでもらい、横になってもらった。
「葵、どこにも行かないで?」
ベッドサイドにいる私の腕を掴み、弱弱しくそんなことを瑞希くんは呟く。
「今日はずっと瑞希くんのそばにいるよ」
それを聞いて安心したのか、彼はまた眠ってしまった。
疲れてるよね?
先ほどより顔色が良いから安心する。
寝顔見てると、本当に天使なのに。
夜になるとなんていうか、うーん。
瑞希くんの顔を見ながら、気づいたら私も寝てしまっていた。
ん……。なんか、ほっぺを突かれている気がする。薄っすら目を開ける。
「あっ、おはよ。葵」
隣で横になっている瑞希くんと目が合う。
「あっ、ごめん。私まで寝ちゃってた」
時計を見ると十五時を過ぎていた。
「大丈夫?具合、良くなった?」
「さっき起きて歩いてみたけど、頭痛も治まったし、ふらつきもない。気持ち悪いのもないから大丈夫だと思う。ありがとう」
「そっか、元気なら良かった」
「ただ動かすと手が痛くて。葵にお願いがあるんだけど?」
「お願い?」
彼はフッと笑った。
これは悪いことを考えている時の瑞希くんの顔だ。
何をしてほしいんだろ?