コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
好きになってしまった瞬間、自分の中で何かが変わったのが分かった。
それまでは、「綺麗だな」「素敵だな」と思うものに出会えば、友達に教えたくてたまらなかったのに。
君のことだけは、絶対に誰にも教えたくないって思った。
そればかりか、君の話を誰かが口にするたびに、胸の奥がざわついて仕方がない。
「ほら、あの子、最近可愛くなったよね」
「なんか、雰囲気が変わったと思わないか?」
ねぇ、お願いだからやめて?
君のことを最初に見つけたのは、僕なのに。
その魅力に誰より早く気づいたのは僕なのに。
だから——。
気が付けばほんの小さな悪意が、僕の中でどんどん積もって大きくなっていった。
君の周りで、僕は〝ついうっかり〟悪い噂を立ててしまう。
「あの子? 可愛いけど嫉妬深くて怖いよ?」
とか、
「清楚に見えるけど、相当変態な変わり者らしいよ?」
とか……他にもいっぱい。
僕の噂のせいで、どんどん孤立していく君。
みんなから意地悪されて、突き落とされた君の持ち物を素早く拾ってあげるふりをして、僕は君が一番大切そうにしているものを見極めてそっと隠す。
君が困っている姿を見ると、胸の奥が甘く疼いてたまらないんだ。
僕が君を孤立させて、困らせている張本人なのに……。
素知らぬ顔でそんな君に優しく手を差し伸べる。
僕を見付けただけで、不安そうにオドオドしていた君が、救世主にでも出会ったみたいにぱぁっと瞳を輝かせる様が、愚かで殺してしまいたいほど愛しい。
君を助けるのも、君が頼っていいのも、僕だけ――。
弱った君が、僕にどんどん依存していく様を、僕はじわりと痺れるような快感とともに甘受する。
誰の目にも君を映したくない。
君の瞳にも僕以外は映さないで欲しい。
君は僕だけのもの。僕も君だけのために生きるって誓う。
——だから、お願い。もう少しだけ、僕のそばに来て?
END(2025/06/18)
※次のページからは本作の短編を2作掲載していく予定です。
今しばらくお付き合い頂ければ幸いです。