テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
💚「昼の時間になりました。席を立つことを許可します。夜が来るまで、暫しお待ちください。」
スピーカーから聞こえる落ち着いた声が、部屋を満たす。
ラウールと深澤は目配せして、目黒と渡辺の亡骸を部屋の隅へと運んだ。
その表情は依然として悲哀を帯びているが、ゲームが終われば生き残れるかもしれないという期待が垣間見えた。
🤍ふっかさん、俺たち、生き残れるんだよね…!俺、こんなに生きてて良かったって思えたの初めて。
💜そうだな。俺も生き残れたらみんなの分までちゃんと生きたい。
🤍うんっ。それがいいよね…
ようやく感じられた安堵からか、ラウールは涙を流した。
嬉しさと悲しさが混じりあって、しゃくりあげるラウールを、深澤は優しく抱き締めた。
2人でゆっくりと今後の話をしたりして、時間は過ぎていった。
しばらくして、スピーカーからゲームマスターの指令が飛んできた。
💚「五日目の夜がやってきました。全員、アイマスクとヘッドフォンを着用して眠りに就いてください。」
🤍…え?
これはおかしい、とラウールが深澤に視線を送る。
だって今ここに居るのは騎士と占い師だ。人狼は皆倒したはず。夜はもう来ないのでないのか。
だが、深澤は一切動揺せず、ラウールを見つめ返した。
💜ごめんな。”嘘ついてたりして”。
勘づいたラウールは戦慄した。
🤍騙してたの…!?
💚「早く指示通りにしてください。さもなくば即刻殺害しますが。」
追撃するかのように平淡に告げるゲームマスター。
ラウールは懇願するように深澤に訴えかけた。
🤍嫌だ!!なんでっ、ここまで生き残れたのに…!ふっかさん、どうして!!
💜どうしてって言われたって。俺が生き残るためなんだよ。悪かったな。
深澤は悲しそうな顔をしてラウールを見る。
そうだ、この人はずっとこんな顔をしていた。最初から騙されていたんだ、とラウールはまた涙を流した。
先ほどの安心から来る涙ではなく、悔しさと怒りが混じりあった涙だった。
🤍阿部ちゃん、あべちゃん助けてよ…
ラウールの悲痛な声には、誰も応えない。
感情を誤魔化すかのようにして、ラウールはヘッドフォンとアイマスクを自棄糞で着けた。
💚「あなたは人狼に選択されました。よって、これから人狼による殺害が行われます。」
ヘッドフォンから無慈悲な声が響く。
状況はわかるが、その言葉はまだ若い彼には受け止め切れるものではない。
ウィーン、と無感情な機械音が小さく鳴り響き、ラウールは恐怖に襲われた。
🤍ヒッ!やだ、嫌だ嫌だ嫌だ!!助けてぇ!誰かぁ!
もう既にヘッドフォンをしている深澤には、その声は聞こえない。
強烈な痛みと苦しみが首を締めつける。どれだけ踠いて叫んでも、誰かが助けてくれることはなかった。
朦朧とした意識の中で、みんなもこんな風に死んだのだと考えると、ラウールには後悔が押し寄せた。
🤍あ”ぁぁぁぁぁぁっ!しに、たくない…っ
アイマスクの暗闇の中で、ラウールは命を落とした。
💚「これで、全ての夜のアクションが終了しました。全員、装備を外してください。」
深澤がヘッドフォンとアイマスクを外すと、隣にはラウールがうつ伏せになって倒れていた。
💚「朝になりました。パンは届いていません。そして、ラウールさんが死体となって発見されました。」
💜…ごめんな。ラウ…
消え入りそうな声で深澤が呟く。
💚「昼の時間になりました。席を立つことを許可します。夜が来るまで、暫しお待ちください。」
💜待って、阿部ちゃん。ちょっとだけ話を聞いて。
💚…
💜確かに俺は生き残った。この部屋にいる、村人の仲間はみんないなくなった。でも違うよね。ゲームはまだ終わってないんだよね。
深澤は冷静に話を続ける。
💜阿部ちゃんは、ルール説明の時に『人狼と村人陣営が同数になれば、そこで人狼の勝ち』って言ってたよね。でも俺とラウールだけになったさっきは、そうはならなかった。
一呼吸置いて、深澤はカメラの向こう側へ問いかける。
💜阿部ちゃんも、ゲームに参加してるんだよね。
💚…
スピーカーからは何も告げられない。
💜阿部ちゃんも村人陣営の参加者だった。だから今もゲームは続いてるんだ。ルールを遵守するゲームマスターなら途中でルールを変えることはない。そうでしょ?
💚…お見事。正解です。
阿部の声は冷静なままで、感情は読めない。
💜だとしたら、人狼だけが生き残れるんだよね。阿部ちゃんはどうするの。
💚俺はルール上、死んだことにはなるね。でも俺にはふっかを解放する義務があるから。
カチャリ、と首元から音がして、深澤はそちらを見る。
と、付けられていた首輪は外れていて、自由の身になったことを証明しているのだった。
💚「人狼側の勝利です。お疲れさまでした。出口は向かって右側にあります。階段がドアの前にあるので、降りていくとこの建物から出られます。」
💜死ぬつもりなの?阿部ちゃん。
スピーカーから声が途絶える。沈黙が深澤を包むが、また悲しそうな顔で彼は続けた。
💜みんなを殺して、俺だけ生かして。それで逃げるつもりなの?
💚そうだと言ったら?
💜…っ!確かに俺はみんなを裏切ったよ。でも、全ての元凶はあんただろ!!
深澤はドアノブを引き、部屋の外へ走り出す。
その姿を、無数のカメラだけが見ていた。
💚…
長く続く廊下を、深澤は走っていた。
部屋にいるときは気づかなかったが、ここは廃ビルをリフォームしたらしい建物だ。
いつの間にこんな場所を用意したのだろう。
💜どこに居んだ…
無音状態にするためのヘッドフォンからは、誰かの悲鳴が聞こえてきたことがあった。
つまり、あの部屋から叫んでもマイクがその音を拾えるくらいには近い場所に、阿部はいるはず。
💜…!
薄汚れたドアの隙間から、微かに光が射している。
ドアノブを回し、中へ駆け込む。
中には、やはり阿部が居た。いつもと大して様子は変わらないが、目の下にはくっきりとした隈があり、ニコニコと笑っている。
💚あーあ。見つかっちゃった。
💜…何のつもりなんだよ。
💚?
💜楽しかったのか?俺たちに騙し合いさせて、散々怖がらせてから殺して!何の恨みがあってやってんだよ…
最後の方は声が掠れた。
💚ごめんね。
阿部は表情ひとつ変えずに深澤だけを見つめている。
言い返そうと泳いだ深澤の視線が、物が散乱した部屋の、ある場所で止まった。
その視線の先にあるのは、鋭利なサバイバルナイフ。
💜…あんたが悪いんだからな。
深澤はナイフを手に取り、先端を阿部に向ける。
阿部は何も驚かず、変わらず飄々としている。その態度が余計に深澤の癪に障った。
💜みんなを殺しやがって!
深澤はナイフを阿部に向けたまま、突進した。
その瞬間だけは阿部も目を見開き抵抗して、2人は揉み合いになった。
数分間にも及ぶ攻防戦の末に、深澤の横腹にナイフが沈んだ。
💜ゔっ…あぁぁっ!
💚…ごめんね。
深澤の耳元で阿部が呟く。
阿部が深澤に刺さったナイフを引き抜くと、真っ赤な鮮血が噴き出し、辺りに飛び散った。
💜あ”ぁぁぁぁっ!?!ぐっ、うぁっ…
💚暴れると内臓が出てくるよ。じっとしてて。
そう言って阿部は、深澤を横にさせてスマートフォンをポケットから取り出した。
💜何、して…
💚静かにしてて。
阿部はスマホを耳に当てる。数回コールが鳴る。誰かと電話をしようとしているようだ。
阿部は深澤の横を離れているので、その会話は深澤には何も聞こえない。
💚…はい。そうです…お願いします。
阿部が電話を切り、こちらを向いた。
💚もうすぐで警察が来るよ。多分救急車も。
💜…!?なん、で
💚だから言ったじゃん。ゲームは終わったから逃げていいよって。それでも立ち向かってきたからこうしただけ。
💜…っ、
深澤にはもう言い返す気力は残されていない。
阿部は深澤の目の前にしゃがみこみ、顔を覗き込んだ。
💚でも残念だったね。
💜…?
💚犯人はもうすぐで死んじゃうもんね。
独り言のように呟く阿部。
まるで月の無い夜の闇のようなその瞳には、光は宿っていなかった。
コメント
3件
うっわぁぁぁぁ、、、すっごく、、、すっごく楽しみにしてたんです、、!なんか、、、とにかくすごい、、!!!(語彙力がなくなるぐらいすごかった)
人狼ゲームは終わりましたが、物語はまだ続きます…