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宝船の甲板では、ようやく白蓮のトランス状態が収まり、船はゆっくりと雲海を漂っていた。 早苗も、自分の放った奇跡が「幻想郷中を出汁の香りで満たす」という珍事に繋がったことに、呆然としながら座り込んでいる。
「……やりすぎましたね。でも、不思議と嫌な気分ではありません」 白蓮が、穏やかな表情で空を見上げた。
「見てください。地上の妖怪たちも、人間たちも、みんな空を見上げて笑っています。殺生のない、等しく美味しい『雨』。これも一つの、救いの形なのかもしれません」
「……ま、私の神社の屋根が出汁でベタベタになったのは、後でキッチリ請求させてもらうけどね」 霊夢が毒づきながらも、どこか満足げに空を眺めている。
俺は、空になった大釜の横で、高校生の軽い体で大の字になった。 不老不死になって、早苗や白蓮といった「特別な存在」たちと関わり、ついには空から出汁を降らせるまでになった。
「……死なないってことは、こういう無茶も、何度でもやり直せるってことなんだな」
俺の隣に、魔理沙がゴロンと転がってきた。 「おい、料理人。次はどんな味を作るんだ? 宇宙まで行ったんだ、次はもっとヤバい場所でもいけるぜ」
「……そうだな。次は、もっと『静かに』、心に染みる出汁を引きたいよ。雨じゃなくて、一杯の汁物としてな」
雲の上を走る宝船。その航跡は、黄金色の虹となって、いつまでも幻想郷の空に残っていた。