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ついに来てしまった〇〇が…
第八話「鮭おにぎりの魂」
――朝。
森を抜けた蓮と玲音は、人里へ向かって歩いていた。
玲音「……昨日の噂、覚えてるか?」
蓮「ああ」
――お兄ちゃん連盟。
妹を持つ兄たちが集まっているという謎の集団。
ただの噂だと思っていた。
しかし――。
蓮は昨日、黒影と真紅に出会った。
そして二人にも、それぞれ妹がいる。
蓮「……偶然とは思えない」
玲音「俺もそう思う」
蓮「だったら探してみよう」
玲音「お兄ちゃん連盟を?」
蓮「ああ」
玲音は少し笑う。
玲音「随分と変な名前の集団を探す旅になったな」
蓮「仕方ないだろ」
玲音「まあ、面白そうではある」
二人は歩き続ける。
しばらくすると、人里が見えてきた。
だが――。
蓮は突然立ち止まった。
蓮「……待て」
玲音「また何か感じたか?」
蓮「ああ」
蓮は周囲の木々に触れる。
蓮「この先……何かがおかしい」
玲音「おかしい?」
蓮「自然の流れが途中で途切れてる」
玲音「……昨日の話と同じか」
蓮「たぶんな」
二人は慎重に進む。
すると、道端に一人の少女が座っていた。
少女は一つのおにぎりを握っている。
少女「…………」
蓮「どうした?」
少女「……お腹空いた」
玲音「それ食べないのか?」
少女「食べる」
少女はおにぎりを大切そうに眺める。
少女「鮭なんだ」
蓮「鮭か」
少女「うん」
少女は嬉しそうに笑った。
そして一口食べる。
少女「……おいしい」
その瞬間。
少女の表情が少しだけ変わった。
少女「……なんだろう」
蓮「どうした?」
少女「このおにぎり……誰かのことを思い出す」
玲音「誰か?」
少女「分からない」
少女は胸に手を当てる。
少女「でも……大切な人だった気がする」
蓮はその言葉を聞いて、霊夢のことを思い出した。
玲音も魔理沙のことを思い出していた。
誰かを想う気持ちは、時間が経っても簡単には消えない。
そのとき――。
蓮の周囲の草が突然揺れた。
蓮「……!」
玲音「何だ?」
空間が一瞬だけ歪む。
そして、ほんの一瞬だけ――。
黒い線のようなものが空中に浮かんだ。
蓮「……見えたか?」
玲音「ああ」
蓮「なんだ、あれ……」
玲音「分からない」
蓮が近づこうとする。
だが――。
黒い線は消えた。
蓮「……」
玲音「今の、まるで――」
蓮「境界みたいだった」
そこへ、聞き覚えのある声が響いた。
真紅「……違う」
二人が振り返る。
そこには真紅が立っていた。
蓮「真紅?」
真紅「今のは境界じゃない」
玲音「じゃあ何だ?」
真紅「……『因果律の枠』だ」
蓮「因果律の……枠?」
真紅「ああ」
真紅は空間を見つめる。
真紅「この世界には、起こる可能性と起こらない可能性がある」
真紅「普通なら、その境界を越えることはできない」
玲音「つまり?」
真紅「誰かが、その枠を作っている」
蓮「……誰かが?」
真紅「そして今、少しだけ壊れかけている」
蓮の顔が険しくなる。
蓮「それが、俺たちの周りで起きてる異変の原因なのか?」
真紅「まだ分からない」
真紅は首を横に振る。
真紅「だが、確実に言えることが一つある」
蓮「何だ?」
真紅「このままでは、最終的に幻想郷全体が巻き込まれる」
玲音が黙り込む。
蓮は空を見上げる。
そして、昨日聞いた噂を思い出した。
――お兄ちゃん連盟。
蓮「……やっぱり探そう」
玲音「ああ」
真紅「何を?」
蓮「お兄ちゃん連盟だ」
真紅「……」
蓮「俺たちだけじゃ、この異変を止められない」
玲音「なら、仲間を集めるしかない」
真紅「……なるほどな」
真紅は少し笑った。
真紅「なら、俺も手伝う」
蓮「本当か?」
真紅「ああ」
玲音「黒影は?」
真紅「たぶん、あいつも来る」
その頃。
森の中。
黒影は一人で歩いていた。
黒影「……因果律の枠か」
黒影の手の中に、黒い闇が集まる。
黒影「嫌な予感がするな」
そして――。
幻想郷のどこか。
まだ姿を見せていない兄たちがいる。
古明地姉妹の兄。
妖夢の兄。
咲夜の兄。
パチュリーの兄。
美鈴の兄。
紫の兄。
早苗の兄。
妹紅の兄。
チルノの兄。
永琳の兄。
それぞれが、それぞれの場所で生きている。
誰も知らない。
自分たちが一つの場所へ集められようとしていることを。
そして――。
その旅の先に待っているのが、幻想郷の命運を懸けた最終決戦だということも。
蓮は歩き出す。
蓮「行こう」
玲音「ああ」
真紅「……お兄ちゃん連盟を探す旅か」
蓮「そうだ」
玲音「まずは情報集めだな」
蓮「それと――」
蓮は鮭おにぎりを見つめる。
蓮「腹ごしらえ」
玲音「……結局それかよ」
真紅「俺も一個欲しい」
蓮「お前もかよ」
三人の間に、久しぶりの笑い声が響いた。
しかし、その背後。
誰もいないはずの空間に――。
黒い亀裂が一瞬だけ現れた。
???「……兄たちが集まり始めた」
???「ならば、こちらも準備を始めよう」
亀裂が消える。
残ったのは、静かな朝だけだった。
第八話「鮭おにぎりの魂」――完
コメント
1件
うわ、第8話も面白かったです!「因果律の枠」っていう概念、すごく気になります。この世界のルールを縛っている何かが壊れかけてるって設定、ゾクッとしました。あと、鮭おにぎりを食べた少女が「大切な人を思い出す」って言うシーン、じんわり来ましたね…。蓮と玲音のやりとりも相変わらず自然で、真紅が加わってチーム感が出てきたのもいい。最後に名前だけ出てきた兄たちのリスト、めっちゃ気になります!次が待ち遠しいです。