「僕、実は同じタクシーに乗ってるんだよ。」
来都くんが尽かさず話を盛り上げてくれた。あの時の運転手からこの間のラジオの話をされて、タクシーの運転手に話したらしい。乗っていたのは君のファンだよと言われて、すぐに私だってわかったんだって。夢だよね。絶対夢。もしかして、死んでる?なんでこんなに来都くんが私のことを気にしてくれるんだろう。彼の心の片隅に居られることが人生で1番嬉しかった。
私も何か話さなきゃと必死になった。
「私も来都くんに会えるかなあと思って毎日歩いてた!この間はタクシー目の前で行っちゃって…」
でもこれを言った直後に、ストーカーと思われるかもしれないと思った。
やばい…と気にした瞬間、「本当!?僕もだよ!この間駅前からタクシー使ってたよね?並んでるのが見えて、そっち向かったらもも乗っちゃったんだよね笑」
…?確かに使った。あの日は確か、雨も降ってたし靴擦れも染みたから…
「もも小さいから僕からはよく見えるんだよね。」
来都くんと私の身長差は40cm。確かに私は小さいし、確かに来都くんは大きい。ちょうどいい身長差ではないし、来都くんは私のことなんて見えてないと思ってた。それに、傘を差しているのに…すごい。すごすぎる!こんな偶然があっていいのだろうか。てか、さっきから私のことを呼び捨てにしてるし…
「なんか追いかけっこみたい!!よし、本物の追いかけっこしよ!」
突然こっちを見ながら遠くまで走って、手招きをしている。そういえば、4歳も離れてるし。大学には入ったばっかりだったね。
まだガキくさいのが残ってるなんて可愛い!全力で追いかけたけど追いつかない。足が遅い私を高笑いしながら待ってくれた。
こんな時間、あっていいのだろうか。永遠になんて思わないから、あと少しだけ、もう少しだけ。少しだけ一緒にいさせてほしいと神様に願った。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!