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廊下の先に、琴音の姿があった。
「律くん、宴会場の準備ありがとう。すごく助かったわ」
柔らかい声に、律の表情がふっと和らぐ。
「いえ、僕は当然のことをしただけです」
短いやり取りなのに、どこか温かい空気が流れていた。
その様子を少し離れた場所から見ていた華は、胸の奥がじんわりと痛むのを感じる。
――自分には、あんな顔を向けてくれたことなんてないのに。
笑顔を取り繕いながら、華は制服の裾をぎゅっと握った。
褒められた嬉しさと、どうしようもないざわめき。
相反する気持ちを抱えたまま、彼女の一日は静かに終わっていった。