「ゾムさーん!」
大声で彼を呼ぶ。一回に降りてきたゾムさんはきょとんとしてる。
「どした?」「スマホですよ。」
差し出すと、微妙な反応をして受け取ってくる。ゾムさんは中身を見て、次にこちらを見る。
「中身見てへんよな。」
「見てないですけど…。見せてくれたっていいんですよ?」
「いや、それは嫌やな。」
二人の笑い声が洗面所に響く。お互いの声が聞こえ、2人だけの空間で。また。また、お互いを少し共有する。
彼しか理解できないことを。
彼しか理解してくれないことを。
考え、悩み、心がぐるぐるして気持ち悪い。
「ゾムさん。」ニコッと自分を押し殺して微笑む。
「ん?」少し戸惑ったあとに彼も少し微笑む。
「ゾムさんは、どこにも行かないですよね。」
きずいたらそうゆっていた。向いていた自分視線は気づけば落ちていた。慌てて彼を見る。言いたいことはこんなことじゃないはずなのに。あぁ。だめじゃないか。そんなに優しくしないでくれ。何も疑問も持たないような彼はそのまま優しく俺を見つめる。
「どこにもいかへんよ。」
そう呟いた。小さいが大きく聞こえる。心の中で繰り返される。
「ごはんでも食べますか。」
「エッ?フル無視!?」
照れてしまったお互い。空気は甘酸っぱくて逃げてしまいたかった。
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