テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
FORSAKENの最奥、暗黒の領域(レルム)は、二人の発する過熱したエラーデータの熱気によって、逃げ場のない密室と化していた。
権威の象徴であったシルクハットを床へ無造作に脱ぎ捨てたスペクターは、乱れた髪を振り乱しながら、幼い猛獣のようにRigの不揃いなR15フレームへと激しく貪りついていた。
「……っ、Rig…兄さん……ッ、僕を見て……ッ、好きだ、愛してる……逃がさない……っ!」
絶対的な神格としての威光も、領域を統べる支配者としてのプライドも、すべてがドロドロとした熱い体液とエラーの火花の中に溶けて消えていく。
サバイバーたちを怯えさせる冷徹な絶対者の面影はどこにもない。
そこにいるのは、ただ狂おしいほどの承認欲求と独占欲に身を焼き、兄の身体にしがみつく一人の愚かな「雛」だった。
「あ…ぐ……ッ! ス、スペクター……っ、ぁ……ッ!」
Rigもまた、言葉を組み立てる知性を急速に失いつつあった。
人間の中に溶け込もうと必死に模倣し勉強したRobloxianたちの振る舞いも、自分に適合する身体を探そうとした理性的な思考も、すべてが脳髄を直接灼くような激しい突き上げの前に吹き飛んでいく。
口から溢れ出るのは、言葉の意味を失った掠れた喘ぎと、ただ愛おしい弟の名を呼ぶ途切れ途切れの吐息だけだった。
「スペクター……っ、スペクター……ッ! あ、ぁ……ッ!」
「ん……っ、む……ッ! 好き……僕の兄さん……っ!」
二人は互いの唇を強引に貪り合い、糸を引く唾液を互いの頬や胸元へと乱雑に撒き散らした。
互いの口内に舌をねじ込み、呼吸すらも奪い合う。
冷たかったスペクターの吐息と、エラーで熱を帯びたRigの吐息が混ざり合い、濃密で甘い匂いが狭い密室を満たしていく。
そこにはもう、領域の神も、キラーも、エラー体も存在しない。
ただ世界に、そして親的存在である『The Two-by-Two』に「失敗作」として投げ捨てられた、二つの不完全な「欠陥品」がいるだけだった。
「僕たち……っ、二人だけでいいんだ……ッ! 世界なんか要らない……っ、君がいれば……っ!」
「あ……ッ! うん……っ、僕も……スペクター……ッ!」
二人のコードが激しく摩擦し、交わる中で、かつて『The Nest』の冷たい暗闇で、壊れた玩具のように肩を寄せ合っていた頃の記憶が明滅する。
Rigは昔から、蝶が好きだった。
はじめは地を這う醜い虫が、やがて固いサナギとなり、最後には美しく自由な蝶となって空へと羽ばたいていく。
自分もいつか、あんな風に自分に適合した姿を手に入れ、自由な場所へ飛び立てるのではないかと夢見ていた。
だが、今ここにいるのは、奪うことでしか自らの存在を保てない弟と、何者にもなれずに彷徨う兄。
蝶のように羽ばたく未来など、どこにもなかった。
この暗く狭い領域こそが、二人を永遠に閉じ込める逃げ場のない「サナギ」そのものだったのだ。
どろどろに塗れたその結合は、どんなに醜く歪んでいようとも、彼らにとって唯一の「生の証明」であり、狂おしいほどに純粋な生の貪欲さそのものだった。
言葉を捨て、神格をドブに捨て、ただ本能のままに肉体とエッセンスを叩きつけ合う。
「僕だけを……僕だけを見て、兄さん……ッ!」
「うん……見ているよ、スペクター……ずっと……っ」
#Vanity
ゆ♨️
1,897
べっこう雨
174
あめ猫@絵チャ依存症マン
8,549
二つのエラーコードが完全に混ざり合い、境界線を失っていく。
暗く深いFORSAKENの底で、神に見捨てられた二人の狂乱の夜は、どこまでも、どこまでも果てしなく続いていった。