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俺の高校生活は、たぶん普通に終わるはずだった。
特に大きな事件もなく、いつもの友達と話して、授業を受けて、気づいたら卒業している。そんな感じの、どこにでもある高校生活。
……あの日の席替えまでは。
俺の名前は春川 湊。
どこにでもいる普通の高校二年生だ。
友達はいるけど、クラスの中心ってわけでもないし、どちらかと言えば静かな方。
よく「天然だよね」って言われるけど、自分ではあまり自覚がない。
ぼーっとしていることが多いらしくて、気づいたら話が終わっていた、なんてこともよくある。
そのたびに友達に笑われるけど、別に嫌な気持ちにはならない。
そんな普通の学校生活の中で、今日は少しだけ教室が騒がしかった。
「よーし、今日は席替えするぞー」
担任のその一言で、教室が一気にざわつく。
「やった!」「神席こい!」
みんな楽しそうにしているけど、俺はそこまで興味はない。
静かに授業が受けられれば、どこでもいい。
くじを引いて、自分の番号を見る。
「……あ、ここか」
窓側から二列目の席。
席に座って鞄を机の横にかける。
窓の外を見ると、グラウンドで体育をしているクラスが見えた。
こういう席なら、授業中少しくらい外を見ても怒られなさそうだ。
そんなことを考えながら、なんとなく後ろを振り返る。
そして、少しだけ驚いた。
斜め後ろの席にいたのは──相川 駿だった。
同じクラスの男子で、バスケ部。
黒髪のマッシュで、いつも優しい雰囲気のやつだ。
体育館でバスケをしている姿を何度か見たことがあるけど、クラスで見るとまた少し印象が違う気がする。
背も高いし、たぶん女子からも人気があるタイプだと思う。
目が合うと、相川はふっと笑った。
「席近くなったな」
「うん、だね。よろしく」
そう返すと、相川は少しだけ楽しそうに目を細めた。
「春川ってさ」
「え?」
「よく授業中、窓見てぼーっとしてるよな」
「……え?」
思わず聞き返す。
そんなの、誰かに見られてると思ったことなんてなかった。
「やっぱなんもない」
相川は軽く肩をすくめた。
そのままチャイムが鳴って、次の授業の準備が始まる。
教科書を出していると、後ろから声がした。
「なあ、春川」
振り向くと、相川が机に肘をついてこっちを見ている。
いつも優しい顔をしているけど、今日は少しだけ真剣な表情だった。
「前から思ってたんだけどさ」
「席近くなったし、言っとこうかなって」
そして相川は、まるで普通のことみたいに言った。
「俺、お前のこと好きなんだよね」
「……え?」
頭が一瞬、真っ白になる。
すると相川は、優しい笑顔のまま続けた。
「結構前から」
「気づいてなかった?」
言葉が出ない俺を見て、相川は少しだけ笑う。
「ずっと見てたのに」
その言葉の意味を、このときの俺はまだ、ちゃんと理解していなかった。
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