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安浦はキッチンを見ると一目散に、カジキマグロを力いっぱい引きずって、奥へと向かって行った。ガスが通っている。そして、お誂え向きに5人分の大きい皿と3種類の小さい皿、それとプラスチックのコップ。


「待ってて下さいね!  ご主人様!  このカジキマグロで、私のお料理の腕を見せてあげます!」


奥から、笑顔いっぱいの声が響いた。


私は期待感を持って返事をした。


呉林は窓の方に向かって、私を手で招いていた。


「恐らく、この世界のどこかに元の世界へ戻る何かがあるわ。私、感じるの。全員で何としても探さないと……」


呉林はいつものように冷静になっていた。


私は心強い呉林の顔を覗いて、



「それはいったい、どんな方法なんだろうか」


呉林の言葉を噛み締めた。


「この世界って、刑務所と同じ世界で、遠くに刑務所があるとかなんですか?」


渡部は丸テーブルから降りた。


呉林はしばらく、考えてから、


「そうかもしれないわ。でも、違うかもしれないわ。ごめんなさい。何とも言えないわ」


「そうですか、もし遠くに刑務所があるのなら、夜が来るはず。僕はここの星空を見てみたいな」


呉林は渡部の能天気さを真面目に受けていた。



しばらくして、安浦は上機嫌で、カジキマグロを見事なステーキにした。ソースはなくて塩をいっぱい振り、焼き方はレアである。五人分の大きすぎる皿の上にあるでかいマグロは豪華な匂いを放っていた。そして、カジキマグロの他の部位は刺身にした。醤油もあった。欠点は何もなく、大満足の出来だった。けれど、敢えて、挙げるとしたら、ご飯とビールが無いこと。


渡部はフライドチキンの骨をどっかに捨て、


「凄い料理ですね。それと、とてもおいしそう。僕も食べていいですか?」


角田は、煌びやかに花を咲かせる刺身を前に、


「ビールがないぞ!  畜生!」


呉林は安浦の料理の腕を知っているふうで、何にも言わず「頂きます」とだけ言った。


みんなそれぞれの席で、丸テーブルに落ち着いている。


呉林と角田は黙々と料理に手を付けている。私はかなり大きめなカジキマグロのステーキを楽しんだ。塩の小瓶をたくさん振り、塩の効果で魚の味が引き締まる。寿司のマグロとはまったく違った味を楽しめた。外側は引き締まっているが、焼き方が絶妙なレアなので、中はジューシーだ。

ウロボロスの世界樹

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