東京の地下に咲く一輪の紅い花。周りは天井が崩れたことにより、荒れ果てていた。
ゴジラの事件から数ヶ月が経ち、被害があった建物の修復も終わりつつあった。
「あぁぁ〜っ。マグロ、何してるかな〜っ。」
「涼さん、この話何回目だ?」
「はいっ、四回目ですね。」
「正解です。」
動物保護団体では、三里、マイク、涼の三人が動物たちのトイレ掃除を行っていた。あの事件以降三里はゴジラの事が気になって仕方がなかった。だから、同じ話をいつもしている。
「三里さん、大丈夫で。知らん怪獣が出て来たら、またマグロ君に会えるけん。」
「マグロに会えるかな〜?」
「なんか先輩、可愛い。」
「可愛かねーよ。もう、27やけんね? ガキ共からやって、おばさん言われてんのに。」
「えぇっ。うちは先輩まだまだ、綺麗だと思うになー。」
「そう、言ってくれるのは涼ちゃんだけよ~!」そう言いながら、そばに寄ってきた白い猫 “大福”を抱き上げた。(大体の動物の名前は三里が付けた。食べ物が多い。)
「…そう言えば、先輩って明日、誕生日ですよね?」
「YES。盛大に祝ってくれたまえ。」
「何様だよw」
他愛もない話をしていると、他の社員が気紛れにテレビをつけた。
「なんか、いいのやってないかなー。」
「世界の仰〇ニュースとか。」
「今日じゃないかな。」
「I L〇VEみんなのどう〇つ園。」
「それも、今日じゃないかな。」
「機関車〇ーマス。」
「うん、なんでぇ?」
「世界のぬわぁんだこれ ミス〇リー。」
「言い方、草。」
三里たちのボケに鋭いツッコミをいれる乙津。すると、テレビに速報が流れた。
「あっ、地震速報だ。」
4月4日 午後6時24分
東京都 震度5弱の地震・地割れ発生
軍はただちに、市民の避難を行う。司令塔では、新たな怪獣の為の会議が行われた。
「東京都の地震発生により、緑龍型の怪獣が複数体出現しています。」
「本当に突然、来るんだな、、。」
「なんと、、。やはり、各地に散らばっているのか?怪獣は、。」
「また、奴の力を借りなければならないか、。」
「ゴジラ、。しかし、ゴジラが我々に応えてくれるのか。」
「いや。彼女らなら、いけるのではないか?」
「彼女ら?」
「『モスラ』だ。そして、保護団体の者たち。この者たちが、ゴジラを呼び寄せるはずだ。」
東京のニュースがながれ、三里が強く反応する。そこに映っていたのは、緑龍型の怪獣が空を飛び回り、人々が逃げ惑う姿。至る所で火事が起き、周りから子供の泣き声、悲鳴が聞こえる。
「何あれ、、?」
社員がテレビに見入っていると、出ていた美津子が肩で息をしながら、戻って来た。
「三里さん、涼さん、マイク君、乙津君この四人は、私と一緒に東京にいくわよ。…疲れた、。」
「あっ、、えっ?マジっすか、?」
「オーマイガー。」
「さあ、行くわよ!」
「『はぁ~い、、。』」
五人は、軍のヘリに乗り東京に向かった。東京は建物が崩れ、住宅が燃えていた。今も、緑龍型の怪獣が飛び交っている。
「地獄じゃん、、。」
「ここ東京の地下に、研究所がある事が分かったの。だから、それを調べに行くわ。」
「…こんな事言っちゃダメだけどさ、、普通はここまでしないんだよなー、、。」
「うん、まあね。」
南海トラフの時にも、軍のボランティアとして活動していた。三里の所属している保護団体には、美津子以外に四名、元軍の特殊部隊がいる。ヘリは広場に着地し、四人が降りる。
「それじゃあ、手分けして探しましょう。」
「…あっ、社長は避難所に居てくださいよ?」
「嫌よ。」
「ダメです。」
「社長、失ったら会社どうするんですかぁ、。」
「あのねーっ!! 私の大事な社員たちが一生懸命、命かけて人助けしてるのに私だけ高みの見物なんて嫌よっ! それにうちの会社はっ、『ホワイト』なのよっ!!!!」
「おうふ、、社長、、。」
「とにかくっ!!!! 皆っ、気を付けるのよっ!?分かったっ?!」
「『はぁいっ!』」
海の中を泳ぐゴジラ。向かうは東京。何かに導かれるように東京に進んで行った。
孤島 洞窟の中モスラは、洞窟の真上に空いた穴から空を見た。隣で丸くなっていた、幼虫がモスラに頭を擦り寄せて来る。モスラは幼虫の頭をよく撫でると「きゅぅぅ」と、小さく鳴き、空へ羽ばたいた。幼虫は、母が飛び立った空を見上げて、何度も鳴いた。そして、口を開き自分の上に向けて糸を吹き出す。モスラの幼虫は、繭を作り始めた。
「さっきまでは、あのコウモリみたいなの沢山いたのに。ここら辺、全然いない。嬉しいけど。」
「なんでやろ、、?」
涼と乙津は辺りを見渡す。炎の海と化した住宅街。しかし、そこに緑龍型の怪獣の姿がなかった。涼が家の瓦礫を避けながら、前を進んで行く。
「本当、何もいないd、、」
どおぉぉうぅぅぅぅぅんん!!
同時に起こった地鳴りによって、涼の言葉は遮られた。それと共に、またしても地震が起きる。
「何、何、何っ!?」
「うおぉっ!?」
地割れが発生する。大きな揺れを耐えながら、辺りを見渡すと、遠くの工場が爆発し、煙がモクモクと上がっていた。
きいぃぃいああぁぁぁあぁあっ!!
途端に聞こえて来る、悲鳴にも似た悲しい鳴き声。何かを訴えるように涼たちの耳に届いた。
「…なんだろう、この感じ、、?」
しかし、涼は次の光景に絶句した。煙から巨大な翼が四本出現したのだ。司令塔にいた古世谷たちも東京の映像を見る。
「なんだ、あれはっ!?」
「分かりませんっ!! 緑龍型の怪獣とは別の、未確認生物ですっ!!」
「…そんなっ、?!」
駆け付けてきた軍のヘリが、工場の怪獣を取り囲む。すると、怪獣は動き出し姿を現す。その姿に涼や司令塔、避難した人々全員がゾッとした。
「怖っ、、」
姿を現した怪獣の姿は、おぞましく、額に長く琥珀色の角が生えていた。全身が紅色、眼は角同様琥珀色に光る。しかも、とてつもなくデカい。体長だけで、あのギドラに並ぶ程。まさに、『バケモノ』だった。
新たな未確認生物を見ていた、三里は何かを察知した。
「…あそこ。あそこにあるんじゃない!? 研究所っ!」
そう言っている間に、未確認生物はヘリを翼や尻尾を使って叩き落としていった。ヘリの撃つミサイルをものともせず、未確認生物は、周りのビルや住宅を無差別に攻撃していく。その時、
ごおぉぉぉおぉおぉぉんっ!!
その声に、三里は海のある方向を見た。未確認生物もまた、海をみる。水面から勢い良く腕が飛び出し、あの時のゴジラが現れた。三里が満面の笑みを浮かべる。
「マグロっ!!」
ゴジラに続くように、空に光が走った。すると、空が裂け光り輝くモスラが舞い降りて来た。
「わたがしっ!!」
三里は急いでゴジラの元へ向かう。
「えっ、?三里さん、マジ?」
「行くぞ! マイクっ!!」
「マジだっ、、。」
マイクも三里の後を追った。ゴジラ、モスラと未確認生物は対峙し、お互いを睨み合う。未確認生物は、ゴジラに向かって突進して行った。ゴジラも未確認生物に突き進んで行く。モスラは空を飛び交っているが、中々攻撃しようとしない。
「…わたがしさん? どうしたんやろう、、。」
「わたがしにも、考えがあるんやない? 今は、とにかくあの工場に向かうっ!!」
しかし、三里の足はピタリと止まった。
「三里さん、? どしたん。」
「今、なんか聞こえんかった? ほら、、。」
三里が耳に手を当てマイクに振り返る。マイクも三里と同じように耳に手を当てた。だが、雑音が多いせいか何が聞こえるのか、分からない。
「…こっち、こっち! 人の声がする!!」
「OK、そっちねっ!」
二人は更に未確認生物に近づいていく。未確認生物が暴れた事で、瓦礫の山と化した住宅街は今では、火の海だった。ゴジラは、三里たちが此方に近付いて来るのに気がつき、未確認生物を引きつけようとした。
「おかぁさあぁぁんっ!!」
小さいまだ、5歳くらいの女の子がクマのぬいぐるみを持って泣きじゃくっているのを三里が見つける。
「君っ!? 大丈夫っ?!」
「うわっ! 傷がっ、早くここから離れないと危ないよっ!!」
しかし、女の子は泣きながら三里たちに訴えて来た。
「お母さんがっ!私のお母さんがっ、居ないのぉっ!!助けてよぉっ、おねぇちゃぁんっ!!」
「…分かったから、、。落ち着いて、ね?お母さんと何処ではぐれたの?」
「違うのっ、、友達と遊んでて、そしたらすごく揺れて、それで、大っきい鳥さんがいっぱい来て、みんなはお母さんが迎えに来てくれたから行っちゃったけど、、。私のお母さんは来てくれなくってっ、、。だから、お母さんを探そうとしたけど、家がみんな、崩れててお母さんがどこにいるか分からなくなったのおっ!!」
また、泣き始めた女の子の頭を優しく撫で、三里が「大丈夫だよ。」と囁いた。
「お母さんを一緒に探そっか!うちらがおるし、その後ろにも強い味方がおるけん!!」
「…本当、、?」
「本当っ!!!!」
「そうやね、、。じゃあ、早く探そうっ!やないと手遅れになるし。」
「おk! せやなっ、行こうっ!お母さん、探しにっ!!」
「…うん、、ありがとう、。お姉ちゃん、お兄ちゃん。」
「『へへっ。』」
三人は周りを気を付けながら瓦礫の中を進んで行った。
司令塔からも未確認生物へ、ヘリを送る。
「全軍に告ぐ。東京都に突如として現れた、未確認生物元い『デストロイア』と名付ける。デストロイアは今、ゴジラ、モスラが引き付けている。ただちに、二匹の援護に当たれっ!!」
「『了解』」
「乙津先輩っ! あの工場に向かって行きましょう! 何かあるかも。」
「あーね、理解。早めに行こう。ここら辺も危険やけん。」
「はいっ!」
涼と乙津も目標を見つけ、工場に向かった。
「まだ、あの怪獣がいるかもしれんけん、気を付けて行こう。」
「ちっちゃい方ですよね?分かりました!」
二人が工場のそばまで走って行く。しかし、工場には、大きな穴が空いていた。今にも崩れそうな所や何より、緑龍型の怪獣の死骸がそこら辺に転がっている。
「…これ、絶対いるやつやん。」
「ウル〇ラマン、思い出しちゃった、、。」
「えっ、、何それ、、?」
「どっかの地下に虫みたいな怪獣が巣食ってて、それを生身で調査しに行く、ってのなんですけど。結構、トラウマなんです、、。」
「…聞くんじゃなかった。」
「すいません、、。」
「…でも、みーさんたちはもっと、危険な所にいると思うけん。俺らも、頑張って行こう。」
「了解ですっ!」
二人は、工場の中に進んで行った。
ゴジラはデストロイアを三里たちに近づけない為、軍のヘリや戦車と力を合わせ立ち向かっていた。しかし、大きさではデストロイアが優勢だ。ミサイルを撃ってきたヘリに向かって長い尻尾を使い叩きのめした。三里とマイクは女の子を連れ、元々住宅だった瓦礫を進んで行く。
「…ねぇ、あの怪獣さんは味方なの?」
「そうよ!マグロとわたがしはうちらの味方。」
モスラも、デストロイアへ攻撃する。が、デストロイアの尻尾に捕まれ、投げ飛ばされた。モスラは勢い良くビルに当たり、崩れたビルの下敷きとなった。それにゴジラがモスラの飛ばされた方を気を取られた。瞬間、デストロイアはゴジラに向かって突進し、ゴジラの胸部を勢い良く貫いた。
「っ!!!! わたがしっっ、マグロっっ!!!!」
デストロイアは貫いたまま持ち上げる。そして、ゴジラを尻尾で角から抜き取り海へと投げ飛ばした。しかし、デストロイアは何かを察知した。くずれた瓦礫を自分の指を器用に使って払い除けながら何かを探し始めた。そして、瓦礫の山を人摘みして、何処かに向かって行った。
「…っ、、。」
三里は絶望に陥っていた。三里だけでなく美津子や避難民、軍も、デストロイアの底知れぬ力に為す術なく、凍り付いていた。
すると、何処からか助けを求める声が聞こえる。
「誰かァァっ!! お願いっ、誰か助けてぇっ!!!!」
「お母さん?お母さぁんっ!!」
「…あっ?!そうだ、今はお母さんを探さないかんっ!!」
「でもっ!わたがしさんやマグロ君はっ、、!?」
「大丈夫っ!!…あの二匹を信じようっ!!」
「……うん、分かったっ!!」
三人は瓦礫を掻き分けながら進む。何処からかちゃんと聞こえる女性の声。三里は瓦礫を登り辺りを見渡す。
一方、デストロイアは瓦礫を腕に収めたまま、突き進んで行く。
ビルが並ぶ中をペットケースを持った、一人の黒人男性 エブリン・ヒーラーが走り回っていた。
「スパァァイクっ!!!! 何処にいるんだっ!!」
その時、遠くのビルを破壊しデストロイアが現れた。急いで逃げようとするも、瓦礫に足を取られ転けてしまう。デストロイアは此方に近付いて来る。エブリンさんはダメだと思い、目を瞑る。しかし、一向にデストロイアは攻撃して来ない。恐る恐る、目を開くとデストロイアはエブリンさんに向かけて先程摘んだ瓦礫を差し出す。すると、瓦礫の中から犬が顔を覗かせた。驚いたエブリンさんは急いでデストロイアに駆け寄る。
「スパイクッ!? 無事だったのかっ!!」
愛犬を抱きしめ、デストロイアを見上げる。
「……ありがとうっ!!私の大事な家族を救ってくれてっ!!」
もう用はないとばかりに、デストロイアは立ち上がり元来た方向へ戻って行った。
ビルの瓦礫から這い出たモスラの羽根はもう、ボロボロだった。しかし、デストロイアが住宅街、三里たちがいる方向に向かっているいる事に気が付く。急いで羽根を羽ばたかせようとした。
モスラのいた孤島では幼虫が蛹となり、双子が成虫になるのを見守っていた。今のモスラに時間の猶予がない事を悟った二人。すると、周りを飛び交っていた。蛾たちが幼虫の入った繭に止まり、発行する。次第に蛾たちの姿は消え、繭が動き出す。幼虫が外に出ようとしているのだ。
「未来、私たちは先にあの人たちの元へ、、。」
「はいっ、姉様。」
蛹に亀裂が走り、大きな釜のような腕を覗かせる。
新たなモスラの誕生だ
三里が母親を懸命に探していると、マイクが、
「三里さんっ!! こっちっ!!」
「分かったっ?今、行くっ!!!!」
マイクが手を振っている方へ行くとそこに着くと背中までが家の瓦礫に埋もれていて身動きが取れない状態の女性。
「大丈夫ですかっ!?大丈夫じゃないですねっ!!」
「なぁぜ、聞いたぁっ?!」
「いいから、いいからっ!!」
「お母さぁんっ!!」
「この、壁を退かさんとっ!!」
女性を下敷きにしている瓦礫を退かそうと精一杯押し始める三里。マイクも、急いで瓦礫を退けようと試みる。しかし、そこにデストロイアがやって来た。
「やばいっ!! 早く、せんとっ!!!!」
三里とマイクは瓦礫を押す腕に力を込める。更にデストロイアは口を大きく開け、光線を撃とうとしていた。軍のヘリがミサイル攻撃を仕掛けるもビクともしない。ふと、三里は必死にビルから抜け出そうと、光るモスラを見る。
「…なんだ、あれは?」
軍のセンサーには、ものすごい速さで東京都へ向かって来る、反応があった。
「分かりませんっ!!」
その時だった。デストロイアが光線を吐こうとした瞬間、ビルの間から、モスラが飛び出して来た。
きゅぅああぁぁぁぁあぁああぁぁっ!!!!
「わたがしっっ?! だめっ!!!!」
その声も虚しく、モスラはデストロイアの攻撃に直撃した。三里たちを庇い盾となったモスラ。三里は一瞬、モスラと目が合ったように思えた。そして、モスラは光の粒となって消えて行った。やっと瓦礫の中から抜け出す事が出来た母親を三里が支え、マイクが女の子を抱っこし、デストロイアの攻撃から逃げる。三里は走りながら、振り返った。宙を舞う光が徐々に消えて行く。三里は涙を堪えて避難所に走った。すると、海の中からゴジラが這い出て来た。ゴジラは勢いを付けデストロイアに突進する。三里たちを守るようにしてデストロイアの前へ立ち塞がる。
「っ、!! マグロっ、、! 良かった、、。」
ゴジラは直ぐに背びれを青白く発光させ、デストロイアに熱線を吐いた。
工場の中に入った、涼と乙津は、スマホのライトを頼りに地下に続く道を探していた。
「先輩たち、大丈夫かな、、。」
「すごい音、鳴ったしね、、。早く探さんと、こっちも崩れるで、。」
「あっ、、ここ、。」
涼は緑龍型の怪獣が開けたであろう穴と、下に続く階段。しかし、所々に爪で切り裂いたような跡が残っている。
「…やっぱ、いるやつじゃん、、。」
「いますね。でも、私たちの探している物もあると思いますよっ!!」
乙津は、両頬をに2,3回叩いて階段を降りて行く。涼も、それに続いた。二人が階段を降りて行くにつれ、行く道が段々荒れ始めた。
「…なんか、整備されてないみたい。」
「そやね、、。この先は、慎重に行こ、、」
乙津が言い終わる前に目の前を何かが横切る。しかも、ものすごく速い速度で。
「…っ、、!?」
「…い、今、なんか居た、、。」
「…涼さん。ライト、消そう、。」
二人はスマホのライトを消し、爪痕を頼りにゆっくり歩みを進めた。なるべく、音を立てないように。
そして、なんとか二人は、研究所らしき場所に辿り着く。研究所は荒れ果て、そこら中に地割れが出来ていた。すると、涼がある物を見つける。割れたカプセルが並ぶ中、一つのカプセルに目がいく。そのカプセルの中には、一輪の花が咲いていた。とりあえず、二人は研究所で使われた資料を探す。
「…あの花、どうしてこんな所に咲いてんだろ、、?」
「涼さん、涼さんっ!こっち。」
乙津の手にはボロボロになった資料があった。所々穴が空いていたり、汚れで見えない所もあるが、とりあえずやるべき事を成し遂げたので後はここを出るだけだ。
「…ちょっと待ってください、、。これに書かれてるのって、、。」
「えっ、?」
資料には、実験対象に向けた罵詈雑言の数々。
「ここの環境も悪かったんだな、、。」
「なんかエゴではあるけど、可哀想だなって。」
「うん、、。」
破れかけた資料を捲っていくと、実験対象の写真が載っていた。やはり、そのページにも対象に向けた悪口がズラリと書かれている。
「これが、実験対象の子、、なのか、な?人間でも動物でも無い、、。何だろう。」
「ここの科学者たちは、この対象を醜いって、捉えたわけか。確かに見た目は怖いけどさこの量の悪口はもう、八つ当たりだよ、。」
どおおぉぉぉおおぉぉおぉぉぉんっっ!!!!
鳴り響く轟音と共に壁や天井に亀裂が走った。
「上が、やばい事になってそうだわ、、。」
「私たちも戻りましょうっ!!」
乙津は一度、花を見やって出口に向かった。
「この階段っ、まじ疲れるっ!!」
「はぁっ、はぁっ、、急がないと、、。」
二人が階段を登っていると真下で爆発音が鳴り、涼が絶句する。下から大量の緑龍型怪獣がでてきたのだ。そして、一匹が涼と目が合う。
「先輩っ!!走って、走ってっ!!!!」
「えっ、!?」
乙津は取り敢えず、涼の指示に従い階段を駆け上がる。すると乙津の頭すれすれに怪獣の鋭い爪が横切った。
「うああぁぁっっ??!! ビビった、ビビった、ビビった、ビビった、ビビった、ビビったっっ!!!!」
「先輩っ、急いでっ!!!!」
更に天井が崩れ始め、後ろの方に居た怪獣は瓦礫の押し潰されていく。二人が急いで出口へ走る。後ろには緑龍型の怪獣が今にも乙津に噛み付かんとしていた。
「急げ、急げっ!!!!」
二人が工場の出口までやって来たその時、いきなり地震が起こる。それは、空の轟音からなるものだった。その震動により怪獣はそのまま生き埋めとなった。
「…と、取り敢えず、ここから離れようっ!! 社長に合流せないかんっ!!」
「りょ、了解ですっ!」
空を覆う黒い雲の中をものすごい速さで羽根を羽ばたかせ東京に向かう一匹の怪獣。その姿はまさに、『ジェット機』。そして、更に自らを加速させていく。
「……司令塔。これは一体、、?!」
「…なんだ、あれは、、。」
今までに無い速度に司令塔は、ざわついていた。すると、後ろの方からあの双子の声がする。
「『あれはモスラの子孫です。そして、今までに無い、新しいモスラ。』」
「新しいモスラ、?それは、一体どういう意味なんだ?」
「今までのモスラの中で最も、『強い』個体です。」
その言葉を合図に東京を覆う雲の中から、勢い良くモスラが飛び出して来た。その姿は勇ましく、逞しいものだった。モスラはそのままゴジラと対峙していた、デストロイアに突っ込む。なんと、自身の羽根を使ってデストロイアのデカい翼を切り裂いたのだ。
「なっ!? すっごいぞっ!! 娘モスラっ!!!!」
「やっばっ、、!!」
それに続き、ゴジラもデストロイアに向け熱線を吐く。これにはデストロイアでも受けきれず地面に倒れ込んだ。そして、倒れたデストロイアはピクリとも動かなくなった。しかし、ゴジラの傷も重症だった為デストロイアに熱線を吐いた後、住宅街に倒れて行った。
「マグロっ!!!!」
三里は急いでゴジラの元へ走った。
「えっ、えっ?? 何あれ!?スズメガみたいっ!!」
美津子と合流する為、走りながら電話をする乙津は蛾のような怪獣を見て、
「あれって、もしかしてモスラかな、、?」
「えっ!? わたがしさんっ!?って事は、あの子、お子さんかな?失礼だけどっ、羽根の模様と目の色以外似てないね!」
「そんな事、言うなぁ、、。…あっ、社長?今、どこに居ますか!?」
「”今は住宅街に居るわ、三里さんたちの所よ”」
「了解っす! 涼さん、あっち行こうっ!!」
「あっ、了解ですっ!!」
二人は資料をしっかり持ち、美津子や三里たちが居る住宅街に向かった。
動かなくなったデストロイアを遠目で見やった娘モスラはゴジラと三里の居る場所にゆっくり止まった。遅れて息を切らし、走って来たマイクと美津子。
「マグロ君、大丈夫なの?……疲れたぁ、、。」
「マグロ~~~っ!!大丈夫かあぁぁ~っ!!!!」
三里は倒れたゴジラに抱き着いた。ゴジラはというと人間が見ても分かるぐらい動揺しているのが分かった。傷も痛むだろうに三里を避けようと腰を上げるが、鼻先に三里が張り付いているので顔を上げられないでいた。今のゴジラを例えるなら、虎が獲物を捉えて姿勢をかがめているような状態になっている。やはり傷が深い為、辺りは血溜まりになっていた。娘モスラも心配そうにゴジラを見遣りそして、三里を見た。三里も娘モスラと目が合う。
「…あっ、ゆうの忘れちょった。むすモスの名前はねー、『かや』ねっ!」
「あっ、まともな名前だ、。」
「は?」
「すみません」
「皆っ、落ち着いて。今はそれより、あの怪獣をどうにかしないと、、。」
いつの間にか資料を見終えていた美津子が周りを制す。
「あ、、あの怪獣、、多分、この実験対象と同一人物なんじゃないかなぁ、、。」
「うん、ここに書かれてる実験対象の特徴と似てるしね。」
「何これ、ヒッドイ、、。悪口ばっかやん、。これ全部、『椿』に向けてでしょ、、?」
「ほんまや、、。……ん?椿?誰それ、?もしかしてあのデッカイ怪獣の名前!?」
「YES。」
「見た目と名前のギャップな、、。」
美津子から貰った資料を見ながら三里とマイクはワイワイと騒いでいる。書いている内容が気になったのか娘モスラが身を乗り出し覗き込んだ次の瞬間、涼たちが抜けて来た工場から爆発音し、煙が立つ。そして、何十匹は居るであろう、緑龍型怪獣が飛び出して来た。ピクリと止まる娘モスラはゆっくりと怪獣に振り返った。三里たちを庇うように羽根を羽ばたかせ、空に飛び立つ。
「かやっ、気を付けてっ!!」
そして娘モスラは緑龍型怪獣に向け飛びかかる。緑龍型怪獣の一体に真正面から羽根で地面に叩き付けた。他の緑龍型怪獣が飛びかかって来たが、地面を自身の発達した腕や脚を器用に使いしなやかに避け、次々と怪獣を殲滅して行く。それに軍のヘリもミサイルを飛ばし加勢した。その光景を目の当たりにした三里とマイク、涼、乙津、美津子は新しいモスラの戦い方に対し声をそろえ、
「『侍みたい』」
と、言った。その娘モスラの立ち振る舞いは侍のような身のこなし、武器として使う羽根の太刀筋は本当に侍や武士を彷彿とさせた。
きいぃぃいぃああぁぁあぁあぁっっ!!!!!!
しかし等々、目を覚ましたデストロイアが起き上がり、娘モスラやゴジラを睨み付けた。また、娘モスラが飛び上がり、デストロイアに立ち向かう。ゴジラも立ち上がろうとしたが、辛い様子だった。三里はゴジラの鼻先を撫で、
「マグロ、、無理すんな、落ち着けっ。まずは、深呼吸、息を整えて。」
三里の声が届いたのか、先程まで息が荒かったゴジラの呼吸が静かになっていく。そして、美津子もゴジラの鼻先に触れ、
「マグロ君、? 戦うのなら全力を尽くしなさい。でも相手は敬い、尊重するのよ。」
美津子が言い終えた時、大きな衝撃音と共に娘モスラが地面に激突した。しかも、デストロイアの翼がいつの間にか再生しているのだ。娘モスラは立ち上がり、デストロイアを威嚇する。すると、娘モスラの後ろに居たゴジラがゆっくりと立ち上がった。今だ突かれた場所から血がぼたぼたと落ちている。しかし、ゴジラの胸部の出血は止まり、代わりに背びれが赤黒く発光した。今まで見た事無い色だった。次第に周りに溜まっていた血が固まり始め結晶のようなものに変わって行く。
「まじかよっ?! 三里さんっ!! 離れようっ!!!!」
「皆っ!! 下がってっ!!!!」
取り敢えず四人はゴジラから離れる。三里はゴジラの様子をまじまじと見つめ呟いだ。
「……あれって、、血、、よ、な、、、?」
「…えっ、、?」
ゴジラの胸部から垂れていた血が紅の結晶となり地面に崩れて行った。次第に背びれだけでなくゴジラ自体も赤黒く光り出した。
ガアアァァアァアァァァアアァアッッ!!!!!!
東京に響くゴジラの咆哮。体内の血が出血しているからか、ガラガラと喉が鳴っている。ゴジラは三里たちの前へ行き、デストロイアと向かい合い今まで以上に背びれを光らせる。すると何やら挙動が可笑しくなった。口を大きく開け小刻みに揺れる(電流、流されて痺れる感じ)。
「…っ!? 貴方たちっ、ここを離れるわよっ!!!!」
「えっえっえっ??」
美津子は社員たちを連れゴジラからもっと離れた。走りながら三里はゴジラを見る。一瞬、ゴジラと目が合ったような気がし、手を掲げグッド合図をした。デストロイアも、ゴジラに突進して行く。しかし、ゴジラがそこで熱線を吐いた。発光した背びれと同じ赤黒色の熱線。それはデストロイアに直撃した瞬間、結晶となり、デストロイアの上半身までを覆った。ゴジラの熱線により身動きが取れなくなったデストロイアはがむしゃらに結晶から抜け出そうとするが、中々抜け出す事が出来ない。すると空を飛んでいた娘モスラが咆哮を上げ、デストロイアに羽根を構えた。それに気付いたデストロイアが口を開き娘モスラに攻撃する。しかし、軍のヘリのミサイルによって光線の向きがずれる。攻撃をくるりと避けながら娘モスラはデストロイアに向け一直線に突進した。広げた片羽根でデストロイアの胸部を斜めに刺し切った。デストロイアの翼が落ち、斬られた胸部から半身が剥がれ落ちそうだった。
「やっばっ、!!かやさん、まじで侍じゃんっ!!!!」
「…でも、な、、。」
満身創痍となったデストロイアに追い打ちをかけるようにゴジラが剥がれ落ちそうなデストロイアの胸部にかぶりついた。余りの激痛にデストロイアが悲鳴にも似た奇声を上げる。その鳴き声に三里たちは何とも言えない感じになった。
「マグロ、、もう、、、。」
誰に言うでもなく呟く三里。その小さな声が聞こえたのか娘モスラがゴジラに鳴く。ゴジラはデストロイアを後ろの海に向け押し倒した。そのまま海に落ちたデストロイアはゴジラに胸部を噛まれたまま奥深くに引きずり込まれて行く。そして、ゴジラは背びれを青白く発光させ、デストロイアの噛み付いた胸部に勢い良く熱線を放った。体内から発光したデストロイアはたちまちに爆発し、砕け散った。その衝撃は水面にまで伝わり、水が空に向けて飛び上がった。涼は研究所の資料を握り締め、「終わったんだ」と目を瞑る。三里が走り海の方に向かった。
「………椿、お疲れ様。ゆっくり休みや、、。」
デストロイアが消えて行った海を見下ろしていると、水面から顔を出したゴジラが三里を見遣る。そして、娘モスラも三里の元へ寄ってきた。
「二人共っ、ありがとうね。」
三里は娘モスラに向き直り、
「…ごめんね、わたがしの事、、。…私がもたもたしてたから、、、。」
「『そんな事を言わないで下さい。』」
「っ!? 過去さん、未来さんっ?!」
「『貴方は貴方のやるべき事を全うしたまでです。モスラもまた、貴方と同じ自分の使命を全うしたまでなのです。新しいモスラも、自分を傷付けないでほしいと思っています。』」
「………そっか、、。…………うんっ、、そうよなっ!せっかく、救ってもらった命なんやし、こんな事言っちゃぁダメよなぁっ!!!」
「ふふふっ、三里さんらしいわ。」
「それで良いと思うよ。」
三里は娘モスラの口に手を当て、もう一度、「ありがとう」と言った。
「マグロも、良く頑張ったなぁ!! 偉いぞ~っ!!そして、かやっお前は、ばりくそカッコよすぎるんだよなぁ~っ!! あんな、侍みたいなさぁ!! もう、大好きっ!!」
三里が娘モスラに抱き着く。娘モスラも嬉しそうに水色の瞳を細めた。その後にゴジラの鼻先を撫でる。
「皆さーんっ!! こっち、向いて下さぁーいっ!!」
「おっ、写真かぁ?」
「ピース、ピースッ!!」
「いえぃ。」
少し離れた場所から涼が三里たちにカメラを向け、シャッターを押す。写真には満面の笑みの三里や乙津、密かにポーズをとっている娘モスラとゴジラなどの姿。後日、その写真は会社の掲示板に飾られた。
END