テラーノベル
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『レナ……』
声が聞こえる。
『レナ……』
やめて、呼ばないで……。私を呼ばないで!
『レナ……』
「いやーー!!」
「レナ!」
「!」
私の肩を掴んだのは、お母さんだった。
「お母さん……」
「大丈夫?ひどくうなされて……」
明るい……私の部屋……。朝……。
「今朝の気分はどう?熱は?」
彼女の手が私の額に当てられる。
「やっぱり今日も熱があるわね」
熱……?
ああ、お母さんの手は冷たくて気持ちいい。
ぼうっとした頭が冴える。
その瞬間、昨夜の出来事がフラッシュバックして蘇った。
「お母さん!!」
額に当てられた手を両手で掴む。
「お母さん、大変なの!!リズが……リズが!!まだあそこにいるの!リズ、怪我してるのに……助けに行かなくちゃ!!」
彼女は目を丸くする。
「なんの話?あそこって……」
「うちの地下から行けるところ!」
「まあ、うちには地下なんてないでしょ?」
「あるの!夜になると私を呼ぶのよ!あそこには長い舌のお化けがいて!!」
お母さんは笑って頬を撫でた。
「夢を見たのね」
ああ、アーウィンと同じ反応!
違う、そうじゃないの。
うまく説明できない自分がもどかしい。
「夢じゃないわ!!ねえお母さん、助けて。リズが死んじゃう!!」
彼女はおかしそうに笑う。
「信じて!嘘じゃ!!」
「レナったら。お母さん、朝にリズと会ったわよ」
お母さんは、マグカップに薬湯を注ぎながら言った。
「う、そ……」
「お友達と泊まりがけでハイキングに行くんですって」
薬湯を入れたカップをサイドボードに置く。
慣れ親しんだ、苦い匂いが漂ってきた。
「嘘よ……マシューが行方不明なのに!!」
「あら、マシューも一緒だって言ってたわよ。行方不明だなんて。きっとリズに揶揄われたのよ」
……揶揄った?
あの電話は誕生日のちょっとしたいたずら?
夜のことは全部夢……?
「そ……そんなはず、ない……アーウィンだって知ってる……」
「そうなの?そんなことちっとも言ってなかったわ……」
「…………」
急に自信が消え失せた。
夢だと言われれば、夢だった気がする。
裏付ける証拠はどこにもない。
また私の夢?私はずっとベッドの中にいた?
あの場所の空気の臭いも温度も、はっきり思い出せるのに。
最後のことがよく思い出せない。
どうして私はここに?やっぱり夢なの?
「分かりました」
宥めるように笑いながら、私にマグカップを渡した。
「アーウィンが帰ってきたら、ちゃんと聞いておくわね」
「……アーウィン、いないの?」
最近、アーウィンはよく外出する。
今までは姿が見えなくても、呼べばいつでもきてくれたのに。
「ええ、ちょっとお使いを頼んだの。すぐに戻ってくるわよ。さあ、お薬を飲んで」
マグカップの中の茶色い液体を見つめる。
私は市販の薬にアレルギーがあるのだという。
普通の薬を飲むと、眩暈がしたりひどい時には吐いてしまう。
そのため、薬草を煎じたものを飲んでいた。
すごく苦くて変な味だが、東洋の国ではよく飲まれているんだってアーウィンが言ってた。
「お母さん、また今夜帰れないけど……平気ね?アーウィンがいるものね?」
「また?」
「……ごめんね」
「ううん……いいの。前に言ってた大事なお仕事なんでしょう……」
本当は行かないでほしい。
今夜は側にいて欲しい。
でも、そんなワガママは言えない。
うちには父さんがいない。
お母さんは一人で頑張っている。
「私は大丈夫……あんまり無理しないでね……」
お母さん、最近顔色が悪い。
こっそり辛そうにしているところも見たことがある。
きっとあんまり体調が良くないのに、どんどん仕事が忙しくなっているように見える。
ますます、ワガママなんて言えない。
彼女は私を抱きしめてくれた。
「このお仕事が上手くいったら、もっと一緒にいられるようになるから」
「じゃ、成功させなきゃね」
「もちろんよ、あなたのためにね……さあ、お薬を飲んで眠って。今日は熱が高いわ」
「眠りたくない……」
布団に潜りながらぐずった。
あれが悪夢だとしたら、また捕まってしまう。
「大丈夫よ。眠って仕舞えば、気分が楽になるわ。悪いことなんて、みんな忘れてしまうから」
「うん……」
私はそうであることを願った。
本当にそうであるよう、心から願う……。
コメント
1件
うわ、この14話、めちゃくちゃ不安になる展開だな……。レナの"夢じゃない"っていう確信と、周りの"夢だったよ"っていう優しい否定のギャップが読んでてすごくもどかしい。リズが無事でハイキングに行ってるって言われた時のレナの混乱、胸が締め付けられた。アーウィンもいないし、お母さんの様子もなんか不自然というか……伏線が散りばめられてる感じがして続きが気になりすぎる。この不安感の演出、うまいわ。
#一次創作
ruruha
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