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好きだったはずのゲームも、もう長いこと立ち上げていない。その事実にさえ、昨日DDに会って初めて気がついた。
「……はー……」
食欲なんてあるはずもない。それでも、そんなこと親に言えるはずもなかった。あんまり味のしない、いちごのジャムを塗った食パンをほとんど噛まずに飲み込んで、慌ただしく家を出る。
「…………っ、ぅおえ、……はっ、んく、ぅ…………」
駅に着くなり、トイレに駆け込んで、便器に顔を突っ込むようにして嘔吐する。飲み込んだまま、当然消化されてもいない食パンが、ぼた、ぼた、口から落ちて水面を跳ねる。赤いのは、血でもなんでもなくて、いちごジャム。いっそこれが血だったら、仕事休めたのにな。
「……うぅ…………しんど……」
ぽつり、ぽつり、浅い息を吐きながらつぶやいた。本音が言えるのは、ここだけ。行きたくない。やめられるならとっくにやめてる。そんなことを言っていられるのも、あと5分が限界。次の電車に乗らないと、間に合わなくなる。
いっそ間に合わなくなればいいのかな。このままバックれてしまおうか。思うだけで、ほんの少し心が軽くなった。それはまた今度。ほんとうに耐えられなくなったら。
うん、大丈夫、大丈夫。言い聞かせて、水洗のレバーを弾いた。