コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
スタート
――悪夢の境界線:崩壊・臨界(ドイツ視点)
鏡の中の“それ”は、もう映像ではなかった。
白い霧に包まれた会議室が歪み、
鏡面の奥からナチがゆっくりと、まるで水面を破るように手を伸ばしてくる。
血で濡れた指先が、鏡を押し広げた。
――ガリ…ッ。
鏡が軋む音が現実に響く。
「……来るな……来るな……来るなッ!!」
俺は壁に背中をぶつけ、足がもつれ、ただ後退るしかなかった。
ナチは笑いながら、鏡の中の暗闇から這い出ようとしている。
歌いながら。
“眠れ……眠れ…………ドイツ。
戻ってこい。ここはお前の場所だ……”
「やだ……もう……やだ……!」
影が俺を掴もうと迫った瞬間、
視界が真っ黒に染まった。
◆
――(イタリー視点)
「ドイツ!?ドイツ!!どうしたなんね!!」
ドイツは突然叫び、鏡を指差し、何か恐怖に怯えるように震えながら後退して――
そのまま意識を失った。
床に倒れ込んだ彼の身体を抱き起こし、
ioの手は震えていた。
「ドイツ……なんでこんな……こわい顔して……」
返事はない。
ただ荒い息だけが漏れていた。
◆
――目覚め(ドイツ視点)
「……っ……は……っ……」
目を開けた瞬間、胸の奥に寒気が走った。
ベッドの上。
蛍光灯の光。
イタリアが、泣きながら俺の腕を握っている。
「よかった……!目、覚めたなんね……!」
「……俺……」
声が震える。
喉が炎のように熱い。
イタリアが必死に説明する。
俺が叫び続け、鏡を指差し、怯えながら倒れたこと。
返り血も何もなかったこと。
そこに誰もいなかったこと。
だが――
(そんなわけがない)
俺は見た。
触れられそうだった。
あの手が、鏡から出てきたのを。
「……俺……なにを……した……?」
頭の奥が痛み、耳鳴りが始まる。
その耳鳴りに――
“別の声”が混ざった。
“お前は殺したんだよ、ドイツ。忘れたか?”
「……っっ……!!」
目の前が暗転する。
イタリアが俺の肩を揺さぶるが、声が遠い。
部屋の隅で、人影が立っていた。
ナチだ。
血のように赤い影を落とし、
俺に向かって笑っている。
「……いやだ……また……出てくるな……!」
「ドイツ!?だれと話してるなんね!?だれもいないなんね!!」
イタリアの声が悲鳴混じりになる。
でも俺には――
ナチの声のほうが、圧倒的に現実だった。
“お前の手は赤い。ほら、見ろ”
俺は震える手を見る。
そこには――
返り血がこびりついていた。
「……なんで……なんで血が……」
イタリアが震える声で言う。
「ドイツ、それ……血なんてついてない……!」
(……違う……見える……俺には……)
◆
――人格の崩壊
胸の奥に、もうひとつの意識が生まれる感覚がした。
“そうだ。俺はここにいる。ドイツと一緒にな”
声が、俺の思考の中に入り込む。
俺の口の動きさえ奪おうとする。
イタリアが泣きながら腕を掴んだ。
「ドイツ……!お願い、戻ってきて……!怖いなんね……!」
「……俺……は……戻れない……」
涙が出た。
震えた。
何かが、確かに俺の内側で形を作っていた。
“戻らなくていい。俺が代わりになってやる”
視界が途切れ途切れに揺れる。
イタリアの声がどんどん遠くなる。
――俺の中に、ナチの人格が湧き上がってくる。
「……あ……やめろ……出てくんな……!」
自分の声ではない声が、喉元で笑った。
“ドイツ?違うだろ。俺達俺は同じだ”
◆
――精神病院へ
イタリーが泣き叫び、助けを呼んだ。
駆け寄ってきた職員たちが俺を押さえつける。
俺は暴れた。
自分で暴れている感覚じゃなかった。
誰かが俺の身体を使って動いている。
“ほら見ろ、みんな敵だ。殺されるぞ”
その声に、俺は絶望した。
◆
――真っ白な部屋(精神病院)
気づけば、俺は真っ白な部屋に閉じ込められていた。
白い壁。
白い床。
白い天井。
静かで、何もない。
――なのに。
部屋の端に、ナチが座っていた。
白い部屋の中で、影だけが濃く、
目だけがこちらを見ている。
“ようやく二人きりだな、ドイツ”
「……やめろ……もう……やめてくれ……!」
耳を塞いでも意味がない。
彼は俺の中にいる。
内側から、外側から、全てを侵食してくる。
“もうすぐだ。お前の身体はすべて俺俺のものになる”
俺は頭を抱え、声を喉の奥で押し殺した。
静かなはずの部屋が、
俺には地獄の底よりも騒がしく響いた。
現実はどこにもない。
夢はどこでもある。
俺はもう、
――どちらにも帰れない。
終わり〜どうせ自己満だし名前変えてみるか?
画力上げて表紙とか書けるようになりたい!….まだPBしか書けないけど