太陽の光がさんさんと降り注ぐ昼下がり、ぼくは地獄を見ていた。
今ぼくの目の前にいるのがぼくの父さん、スペア国の王、スペア・ドラゴニアだ。鮮やかな金髪と、いつになっても衰えない体が特徴的である。
そんな父さんに見つめられ、というか睨まれているのはぼくの兄さん、第一王子、リヒト・ドラゴニアと第二王子、ハクト・ドラゴニアだ。
二人とも、父さんと同じ鮮やかな金髪だ。ぼくらは今、月に一度の家族団らん?をしている。
「おい」と父さん。
「リヒト、ダイア村の反乱は鎮圧できたのか?」
「は、はい」
リヒト兄さんが緊張したようにどもりながら言った。
「第二部隊を派遣し、鎮圧完了致しました。」
そう。リヒト兄さんはこの国の誰よりも政治が上手い。だから巷では跡継ぎ候補だ、とささやかれている。
「ハクト、鎮圧戦では見事な活躍を見せたそうだな。」
「はい。軽く殲滅してきました。」
第二王子のハクト兄さんは魔法に長けている。だからいつも戦場に行っては、めざましい戦果をあげてくる。
「おい、アクト。」
そしてこのぼくが、第三王子、アクト・ドラゴニア。通称、落ちこぼれ王子だ。
「昨日の魔法試験、どうだったんだ?」
ぼくは父さんの、冷たい目に萎縮しながら答えた。「あ、あの…適性はやはりゼロだと…」
ぼくが答えると、父さんは呆れたように言った。「なに…またか?…もういい。」
そういうと、父さんは荒々しく部屋を出ていってしまった。
ああ…ぼくは優秀な兄さん達とは違う。政治もわけ分かんないし魔法も使えない。いつも父さんに呆れられてしまう。
自慢できることなんて何もない…
ぼくは重い口を開いた。
「…では、ぼくも戻らせていただきます。」そう言ってぼくは席を立ち、部屋へ帰ろうとした。
「一族の恥さらしが。」 ハクト兄さんがボソッと口にした。
ハクト兄さんはニヤニヤしながら続けた。「生きてる価値、ねーだろ」
…いつも、思う。
なんでぼくには、魔法が使えないんだろうか。
「そんなに言うな。仕方のないことなんだから」とリヒト兄さん。
なんでぼくは人よりも劣っているんだろう。魔法適性の一つでもあれば…
この世界での魔法は、大切なものだ。魔法があれば、とてつもない力を生み出すことができる。山を丸ごと壊したり、湖を二つに割ったり…力の低い農民ですら、生活魔法の一つや二つ、使えるだろう。
つまり適性ゼロ、魔法が使えないぼくはこの世界で異質なのだ。
「失礼します。」そういうとぼくは部屋へ向かった。
仕方ないことだ。そう割り切ることはできない。
だが、記憶の片隅にいる母さんは、いつもこう言っていた。
『自分にないものを作り出すのは、それこそ神にしかできないけれど…自分にあるものを磨き続けるのは誰にでもできるのよ』
ぼくはこの教えを大切にして生きている。
だが、まだ自分にできることがまだわからないんだよな…そう思いつつ、ぼくは首にかけてあるネックレスに手をのばした。
ぼくがずっと小さいころ、ある洞窟の前で拾ったものだ。誰のものかは分からないが、ドラゴンのモチーフが描かれている。
なぜだか見ていると、吸い込まれそうな気持ちになる。そして誰かに背中を押されている気がするんだ。頑張れ、頑張れって…
「まあいいや。」ぼくはベッドに寝っ転がり、天井を見上げながら言った。
「ぼく、頑張るよ。見ててね、母さん…」ぼくはそういうと、深い眠りについた。
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