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りゅず
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当作品は
◾︎ nmmn
◾︎ BL
◾︎ rbru
を含みます。
nmmnが苦手な方、タグ等上記の意味を理解しかねる方、見覚えがない方は閲覧をお控えいただきますようお願い申し上げます。
また、
◾︎ 話はすべて筆者の妄想・フィクションであること。
◾︎ ご本人様及び関係者、同名の団体、事務所その他とは一切関係・関連がないこと。
◾︎ ご本人様及び関係者の方に対して決してご迷惑をおかけするようなことがないこと。
◾︎ コピペやスクショ、転載等は禁止であること。
◾︎ デリケートなジャンルのため、状況によって名称・名前・表現等を書き換えている場合があること。
◾︎ 閲覧は自己責任であること。
◾︎ 全ての配信、ボイス等を履修できているわけではないため矛盾が生じる可能性があること。
これらを全て了承でき、自衛できる方のみ本編の閲覧をお願い致します。
××┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈××
2周年衣装の世界線パロディ
男性妊娠がメインの話。妊娠します(白狼の生態への捏造)
♡、濁点喘ぎのセンシティブ。
なんでもあるのでなんでもありな方向けです。
✦︎友情出演:ri、kgt
モブも喋ります。
約15000字。この半分くらいで終わる予定だったんです、信じてください。
××┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈××
妖しく灯る提灯が等間隔に並び、紫煙と喧騒が混ざり合うこの通りは、西の中でも中心部と呼ばれる場所である。湿った夜風が路地裏を駆け抜け、古びた看板をギシリと鳴らした。
決して治安が良いとは言えないこの街で、一人の男が悠然と歩いている。男が歩くたび、身に纏った高級な絹の召し物が擦れ、かすかな音を立てた。手入れの行き届いた藤の髪には、ところどころに鮮やかな空が混じり、耳元では金細工の装飾品が冷たい光を放っている。
この街の裏の世界で生きる者で、その姿を知らぬ者はいない。この辺り一帯を血と恐怖、そして稀なる慈悲で牛耳る組織のトップ、星導ショウ。
そしてその男の隣には、影のように青灰の髪を揺らす男が立っている。周囲から番犬と呼ばれるその男は、彼の側近……否、全てを許し許された番であった⎯⎯。
✦︎✧︎✧✦
「言い残すことはそれだけですか?」
「ッ……!」
両腕を太いロープで縛られ、薄汚れたコンクリートの床に転がされた男の横に、無駄に長い脚を投げ出して見下す男がいる。星導ショウだ。
西の裏の世界を支配する組織のトップは、今まさに死を目前にした獲物を眺めながら、絵画のように優雅な笑みを浮かべていた。
男の声は、恐怖で細かく震えていた。目の前の星導は穏やかな表情を崩さない。しかし、その蛋白石を思わせる瞳には、一切の熱が宿っていなかった。月の光さえも跳ね返すような無機質な輝き。周囲には、星導の部下にによって打ち倒された自身の部下たちが無残に転がっている。助けを求める視線を投げかけても、周囲を囲む星導の部下たちは誰一人として眉ひとつ動かさない。ただ、冷徹な静寂がその場を支配していた。
「……聞いているんですが」
星導が首をわずかに傾げる。服を纏う装飾品が小さな音を立て、その微かな音だけで男の肩は硬直して跳ねた。
「ま、待ってくれ……!俺はただ命令されたんだ!あの荷を襲えと言われて…ッ!」
「へぇ」
返ってきたのは、興味を失いかけたような気怠げな声だった。その反応に、男は死の予感からくる焦燥を隠せず、早口で言葉を重ねる。
「だから俺だけじゃねぇ! 俺は悪く⎯⎯」
ガツン、と。硬質な音が暗い倉庫内に響き渡った。
いつの間にか男の傍らに音もなく移動していた青灰の髪の男⎯⎯小柳ロウが、無表情のまま男の脇腹を容赦なく蹴り上げたのだ。
「ぐっ……!」
悶絶して床を転がる男を見下ろし、小柳は冷めた瞳で告げる。
「悪くない人間は、ガキを人質になんて取らねぇよ。」
その一言に、男の顔色から血の気が完全に失せた。
今回の件は、単なるシマの奪い合いなどではなかったのだ。星導たちの庇護下にある孤児院を襲撃しようとするという、決して越えてはならない一線を越えた者たちへの制裁。幸い被害は未遂に終わったが、星導にとって、それは許しがたい逆鱗そのものだった。
西で生きる者たちは皆、噂として知っている。
星導ショウは基本的に寛容だ。筋を通す者には深い情けもかける。しかし、自分の仲間、そして何より小柳が守ろうとするものに手を出した時だけは、その慈愛は凍てついた残虐へと変貌するのだと。
「小柳くん」
「ああ。」
呼ばれた小柳が一歩下がり、星導がしゃがみ込んで男と視線を合わせる。先ほどまでと同じ、優しい笑み。だが、間近で見つめられた男には、それが地獄の底から這い上がってきた悪魔の微笑みにしか見えなかった。
「最後に聞きます」
静寂。押し殺したような声が、冷たい空気に溶けていく。
「誰の指示です?」
男は唇をわななかせた。言えば指示役に殺される。だが、黙っていればこの怪物に魂ごと潰される。絶体絶命、四面楚歌。
だが次の瞬間、張り詰めた空気を断ち切るように、小柳が淡々と言い放った。
「星導」
「うん?」
「早く帰ろ」
飽きた。その一言が落ちた瞬間、星導の表情から冷徹な仮面がすっと剥がれ落ち、わずかに熱を帯びた。
「そうですね」
さっきまでの殺気立った空気は嘘のように霧散した。
「今日は小柳くんが好きな店の点心を買って帰る約束でした」
「……別に急いでないけど」
「俺は急いでます。あそこ人気だから、売り切れちゃうかもしれないでしょう?」
「……」
わずかに視線を逸らした小柳の横顔を見て、星導は心底楽しそうに笑う。周囲の部下たちも、二人のこのやり取りには慣れたものだと、どこか安堵したように苦笑を漏らした。
縛られた男だけが、ただ唖然と呆然自失する。
数秒前まで人を殺しかねない真空の空気を纏っていた男が、たった一人のたわいない言葉で、こうも容易く機嫌を直すのか。この二人の関係の異常なまでの濃密さに、男は理解が追いつかない。
星導は立ち上がると、振り返って部下たちに軽く手で合図を送った。
「後は任せます」
「御意。」
「ちゃんと話は聞いてあげてくださいね」
にこりと向けられた、悪意のない笑顔。しかし、部下たちが一斉に背筋を正し、鋭い眼光を男に向ける。その笑顔に隠された意味を、誰もが知っているからだ。
「さて、小柳くん」
「んだよ」
「帰りましょうか」
そう言って差し出された手。小柳は呆れたような溜息をつきながらも、その手をごく自然に握り返す。そのまま体が密着して、星導は小柳の腕ごと抱き締めた。
「人前なんだが」
「今さらでしょう?」
「……それはそう」
二人は並んで歩き出す。騒がしい西の街の夜気の中、提灯の灯りが二人の背中を交互に照らしては消えた。裏社会の絶対的な王と、その番犬。
誰も逆らえない二人の背中を、部下たちはただ静かに、敬意を込めて見送っていた。
✦︎✧︎✧✦
「ぁ゛ッ…あ゛ぅ゛ッッ♡♡♡ ぉ゛…………ぁ、ああ゛〜〜〜ッ゛ッッ♡♡」
隠家のだだっ広い一室に、男の嬌声が響き渡っていた。
星導ショウの私室。その広いテーブルの上に投げ出された白く美しい四肢は、先程まで番犬と呼ばれていた男である。
「あはっ♡ 小柳くん壊れちゃった♡ きもちー?」
「あ、ぁ゛……ッ!!、うべ、ほしぅべ、♡♡ きもち、そこ、ッぁ、あ゛ぁ゛ッ♡♡」
小柳の掠れた声は、艶めかしく揺れる吐息となって部屋中に満ちていく。先程まで冷徹な番犬として敵を威圧していた面影はどこへやら、今の小柳は星導の手によって溶かされ、翻弄されるがままの愛玩動物のようにひどく無防備だった。
星導は、自身の瞳と同じ蛋白石のような光を宿した笑みを浮かべ、小柳の腰に回した腕に力を込める。テーブルに置かれた書類の山はとうの昔に床へ滑り落ち、二人の重なり合う影が、部屋を照らす柔らかなランプの明かりに揺らめいた。
「可愛い声♡ さっきまであんなに凛々しい顔をしていたのが嘘みたい。」
星導は乱れた小柳の青灰の髪を優しく耳にかけ、その柔らかな項に唇を寄せる。小柳が首筋を熱く濡らされるたび、その引き締まった肉体が快楽に耐えかねて大きく跳ねた。うつ伏せに後ろから挿入れられている小柳は、縋るようにテーブルにしがみつく。
その時、分厚い扉がコンコンとノックされた。
「どうぞ」
どうぞ?どうぞって、は?
なんて小柳が困惑している間にその扉は開かれる。2人きりだったその空間に、また1人の男が入ってきた。
「星導、ちょっとごめ⎯⎯…………おい。」
「なに、手短にお願いね。」
「……………はぁ。」
手元の資料に目を落としながら入って来た男⎯⎯伊波ライは、目の前の状況を確認した途端、表情を歪ませた。無理も無い。
伊波は幼い頃、小柳に拾われてこの組織の一員となった。餓死寸前、そんな時に通りかかった小柳に最後の力を振り絞って縋ったところから始まったのだ。
振り払われそうだった手で必死にしがみついて、絶対に離さないという意志を伝えれば諦めたように溜息をついた小柳が、懐に持っていた肉まんを差し出す。目の前の食料にがめつく食らいつけば、優しい目と手で撫でられ、そのまま離れようとする小柳の服の裾を再度掴んだ。小柳が離せと言っても全く離す素振りもなく、そのまま歩こうとすれば着いてくる。ああもう、と諦めた小柳が伊波を抱え、そのまま星導の元へと直行したのだ。
伊波からしたら小柳は恩人であり保護者のような存在。そんな相手のみだらな姿なんて想像もしたくないであろう。
伊波は深々とため息をつき、心底うんざりした様子で手元の資料をテーブルの端、二人の体から最も遠い場所へと無造作に置いた。
「……お前らさぁ。今から西のシマの構成見直しと、次回の取引のブツの調達ルートについて詰めなきゃいけないんだけど。」
伊波の呆れ返った言葉にも、星導は表情ひとつ変えない。むしろ、小柳の首筋に顔を埋めたまま、楽しげに喉を鳴らした。
「今お楽しみ中なので。見てわかるでしょ」
「……ったく、ロウもロウだよ、何流されてんの。」
星導には言っても無駄だ、と伊波がじとりと小柳に視線を向けると、小柳は羞恥と絶頂の狭間で顔を真っ赤に染めながら、テーブルの縁を自身の手先が白くなるほど強く握りしめていた。理性を手放し、ただ快楽に支配されたその瞳は、先ほどまで敵を睨みつけていた冷徹な番犬のそれとはあまりにもかけ離れている。
「……ッぁ♡ ッうる、せぇ……っ」
小柳が掠れた声で絞り出すと、星導がその腰を力任せに引き寄せ、深い場所を執拗に突き上げた。
「あ゛ッ♡♡ ぁ、はぁっ、ほしるべ、ぁッ゛♡♡ そこらぇ、イ゛ッちゃう、ンぐッ゛♡♡♡」
「あーもう!見てらんない」
伊波はバツが悪そうにそっぽを向いたが、その足は部屋を出ようとはしない。彼にとって、星導の傍若無人な振る舞いは今に始まったことではないからだ。むしろ、この圧倒的な主従の均衡が崩れ、星導が小柳を慈しみ、あるいは貪るこの歪な時間こそが、彼らという組織の根底にある「異常な絆」の正体であることを、組織の幹部である伊波は理解している。
「星導。今朝来た取引先からの連絡まとめておいたから早めに確認しといて。」
「ありがとう、ライ。で、いつ帰るの?」
あからさまな退去勧告だった。星導は視線だけを伊波に向け、その手は止まることなく小柳の敏感な場所を攻め続けている。
「……はいはい、今すぐ出るよ。ったく、後で『話が違う』とか言って詰めて来ないでよね!オレちゃんと言ったから!」
伊波はわざとらしく鼻を鳴らすと背を向けて扉へと向かった。重厚な扉が閉まる直前、伊波は少しだけ振り返り、乱れた髪のまま熱に浮かされている小柳の姿をチラリと見て、そのままバタンと大きな音を立てて扉を閉めた。
「あーあ、せっかくお楽しみ中だったのにね?早く終わらせろだってさ」
「ンっ♡ は、ふ、♡♡ おわ、んの…?」
「なんかやる事あるらしいよ。俺居ないとダメなんだって」
「っぉ゛ッ♡♡ ぉあ゛………♡♡ぁ、あ゛……♡♡」
「挿入れたままじゃダメかなぁ?相談してみる?」
「や、やら、ぁ゛ッ♡♡ いれたままっ、だぇッ ッ!!!」
「え〜なんでやなの。気持ちよくなりながらお仕事できるんだよ?一石二鳥じゃない?」
「ふたり、がい…ッん♡♡ ほかのやつ、いらないっ…あ゛ッッッ♡♡♡」
「そっかぁ♡ そうだよね?俺たちの世界に他の奴なんていらないよね。」
可愛いね、と小柳の耳元で囁いた星導は、ビクンッと震わせた小柳の身体を起こす。そして膝裏を抱え挿入したまま立ち上がり、ベッドの方へと足を進めた。
「ぁ゛ッ、や、やらこぇ゛…!」
「大丈夫大丈夫♡ ちょ〜っと移動するだけだから」
「ん゛ぉッ…!! ぉ゛っ♡ おぐ、おくはいって゛ぅ…♡♡ん゛お゛〜〜ッッッッ!?♡♡♡」
ぽすん、とベッドの縁に座った拍子に奥へと入り込んでしまったのか、小柳の身体は大袈裟なほど震わせた。
「…ぁ゛〜〜……………♡♡」
「あれ。こーら、堕ちるの早いよ」
「んぉ゛ッッッ!?……ぁ゛…ぅべ、!まってこれ、まえ…ッ!」
意識をなくした小柳を下から激しく突けば、虚ろだった瞳に焦点が戻り、星導の体に自身の身体を委ねていた小柳は体を起こす。その時、小柳の目の前に何かが写った。
2つの裸体に、真っ赤に染まり顔を蕩けさせた自身の顔。星導の上でM字に開かれた自身の脚の間にはきゅんきゅんと疼いてたまらない結合部。
これはそう、⎯⎯鏡。
「や、やら、やら゛ァ!! ほしぅべがい、ッなんでおれ、ッ゛」
「こら、ちゃんと見ないと。ほら、可愛い顔してるでしょ?」
ぶんぶんと左右に振る小柳の顔をガッと掴み、鏡を向くように星導が固定する。鏡の向こうの自身と目が合って、小柳の顔の近くで愉しそうに笑っている星導がいる。
「ぁ゛ッ、ぁああ゛ぅあ゛ッ♡♡」
「ほら見て、自分のえっちな顔見て俺のきゅうきゅう締めつけてるよ」
「ちぁ、ちぁう゛ッ!! やらぁ゛ッ♡♡と、と゛まって、とまれ゛よ゛ぉッ♡♡♡」
「やだって言いながら腰動いてるのはなに?俺動いてないですよ。お前が腰浮かせてるんじゃん」
「へぁ゛…………?」
何を言っている?とでも言いたげに目の前の光景を見ればそこに映るのは自身が腰を振る姿。へこへこと前後に動き、媚びるように一生懸命にグリグリと押し付けていた。
じわじわと昂る羞恥心に背後の男が興奮しているのがわかった。
「あはっ♡ 恥ずかしいねぇー?小柳くん♡」
「ぁああ゛ッ♡ぁ゛っ♡♡ お゛っ、ぎぐなった゛ぁ…っ♡♡」
「んー?んふ、おっきくなった?ごめんね。でも小柳くんがえっちなのが悪いよね?」
「えっ、ッちじゃなぁ゛ぁッ♡♡ ふ、んぐ、っンぉ゛ッッ♡♡ イぐ、イッちゃあぁぁ゛〜〜ッッ………♡♡♡」
「イーけ♡ イッちゃえ♡ い〜っぱいぴゅっぴゅして?♡」
体を反らして痙攣した小柳の陰茎から飛び出るのは粘度のある白濁ではなくさらりとした透明の液体。
勢いよく飛び出したそれは目の前の床をベチャりと色濃くさせた。
くてりと背後の星導に体を預ける小柳。何度も奥を突かれ、何度も絶頂へと導かれ、小柳の体は痙攣して止まらなくなっていた。潮だってちょろちょろと栓が抜かれた蛇口のように流れ続けている。にも関わらず、星導はお構い無しに震える小柳を下から再度突く。
ドチュンっと肉棒が小柳を穿ち、小柳の目の焦点は合っていなかった。
「ちょっと、俺まだイッてないんですけど?」
「ぉ゛……………っ♡♡ ッ…♡♡ ……〜〜っ♡♡」
「すごい締めるじゃん、ッ♡」
虚ろな意識の中で、小柳は星導を求めて無意識にナカを締めていた。
意識の無い小柳の体を好き勝手に暴き、遂にはナカで達する。荒い息を整えながら、星導は小柳を抱き締めた。
✦︎✧︎✧✦
「タコー…?」
幼い声で星導の目が覚める。…まあ、星導達からしたら幼いだけで、成人はしているのだが。
上等なシーツをずらして声の元である扉の方へ視線を向けるとふわふわとした綿。どうしたの、と限りなく優しげな声で問うと伊波がブチ切れてる、と。その瞬間、星導がおかしな挙動とともに飛び起きた。
⎯⎯マズい。
脳内に浮かぶは数日前の姿。ほんの数日前に同じことをやらかしたのだ。小柳とのセックスに依存しすぎて、仕事を疎かにしてしまった。あのときはそう、しばらく小柳と会わせてくれなかった。
…それはマズい。たった数時間。1日だったか、どの位の長さだったかは覚えていないけれど、星導の永い時を得てしてもあれは堪えた。たった1日、されど1日。とにかく小柳と顔すら合わせられなくなるのは本当にツラい。どうにかあの頼れる参謀を言いくるめなければ。
まっずいと勢いよく飛び出して、共有スペースへ向かうとそこには仁王立ちした般若のような男、伊波ライ。
伊波は仁王立ちのまま腕を組み、額に青筋を浮かべていた。その後ろには、まだ状況が飲み込めていないのか、あるいは伊波の怒りのオーラに圧倒されているのか、他の部下たちが冷や汗を流して視線を逸らしている。
「何か言うことは?」
「大変申し訳ございませんでした」
「………………はぁ。」
伊波の低く大きなため息が響く。それは怒りを通り越して、もはや呆れと諦めの境地に近い響きだった。
「あのさ、『書類読んどけ』って言ったよね、オレ。今朝取引先から急遽クレームが入ってんのに、お前が『小柳くんには俺が必要なの!』とか何とか言ってロウを連れ去ったせいで、確認が必要な署名が宙に浮いてるだわ。あと会議。お前が来ないと初めらんないんだって何回言ったらわかる?」
なんて、ピキピキと鳴りそうな程ブチ切れている。
「え〜っと、そのぉ…」
「言い訳は聞きたくない。今から一時間以内に全ての書類に目を通して対策案提出しろ。それが終わるまで、ロウはオレの目の届く範囲に置いておきます。」
「ッやだ、やだぁ!俺の小柳くん取らないで!」
「取られたくなかったらやるべき仕事はやれって何度も言ってるよね?」
「う…だってぇ」
「だってじゃない。俺は言った。目を通して、とも今から会議やる、とも。全部言ったよね?それなのにお前は仕事を放棄して?番とセックス。ロウが潰れるまでヤッただろ、お前。」
「ハイ…」
伊波の怒涛の叱責に星導はシュン…と体を縮める。これではどちらが上の立場にいるのかわからない。その様子を見ていた周囲の部下たちは、あからさまに視線を泳がせた。西の裏社会を震え上がらせる星導ショウが、今や一匹の捨てられた子犬のようにしょんぼりとしている。
「別にお前らが仲良いのはいいよ、俺らも嬉しい。けどそれとこれとは別。やるべきことはやれって言ってんの。仮にもお前はトップなわけ、わかる?」
「ハイ…」
「…もういいや、早くやって。一旦この書類。会議は時間ないから持ち越しな。」
「ハイ、すみません、今すぐやります」
ばさりと分厚い紙を星導の手へ渡した伊波は、自室へ戻ろうとする星導を強引に止める。お前の部屋には小柳がいるだろ、と監視しやすいように共有スペースの机へ座らせた。こんなところ落ち着かない!と泣きわめきたいところだが、それをすると今度こそ小柳と一生会わせてくれなくなりそうなので辞めておいた。終われば会えるんだ、かなり優しい方だろう。ひーんと頭を抱えながらいつもより小さな机に書類を広げ始めた。
✦︎✧︎✧✦
「…アイツどしたん」
星導が飛び出したあと、さすがの慌ただしさに小柳の目も覚めてしまった。残された叢雲カゲツに聞けば、どうやら伊波が激おこらしい。きっと今しこたま怒られている最中であろう。
なるほどね、と納得した小柳は半分起こした体を再度布団へと沈めた。
「ふぁ〜……ねみぃ。…まだ寝てていいと思う?」
「知らん。体大丈夫なん」
「ん?おー、まぁある程度は。トぶまでヤッたから腰痛てぇけど。アイツ無駄にデケェから腰にクるんだよなぁ」
「…聞きたないわ」
「ははっ!そうだよなぁ?お前アイツに懐いてるもんな。んな相手の性事情聞きたくないか」
叢雲は伊波と同じく、幼い頃拾われた。伊波が小柳に拾われたように、叢雲は星導に拾われたのだ。
忍びの末裔である彼はこの街では非常に珍しく、いわゆる人身売買。詳しくは小柳も知らないが、そういった場所へ調査に行っていた際、そこの組織を潰したあと、星導が気まぐれで気に入った!と叢雲を引き入れた。他人のことは言えた立場ではないが無闇矢鱈に引き取るのは良くない。けれど、そう言ったところでこの男の好奇心を抑えられるとも思えない。それに伊波も肩身狭そうにしていたのだ。大の大人に囲まれて、その大人たちは何やら物騒な会話をしている。殺されないように、捨てられないようにといい子を演じる伊波を何とかしてやりたかった。だから、歳の近い叢雲と仲良くなれれば少しは気も緩むのではと思ったのだ。
案の定、二人は多少時間はかかったものの次第に気を許し始めていた。弟のような存在ができて嬉しかったのか、伊波はよく叢雲の世話を焼いていたような気がする。
人見知りでありそうな叢雲は、よく伊波の背中に隠れ後ろから周囲を覗いていた。キョロキョロと顔を動かしていたかと思えば最終的に辿り着くのは星導の姿で、星導と腕を組む小柳を妬ましそうにジーッと見つめていたのを伊波は知っている。
きっと多分、親を取られたような気持ちなのだと思う。地獄のような環境から救い出してくれた星導に懐くのは当然で、そんな対象に見せつけられるほど愛されている小柳が羨ましかった。
「俺さぁ、昔妊娠したことあんだよ」
「……………は?」
「お前らと出会う前。白狼の遺伝子がどうのこうの〜って、アイツと番になった時孕んだ。」
嬉しかった、本当に。腹を擦りながら、存在しないものを思い出すかのように目を細める小柳は、苦しそうに吐く。
星導が居たらいいかって、それだけで充分だと諦めていたものに希望が見えて、本当に大切にしていたのだ。
男かな、女かな、名前はどうする?
ふたりで悩んで悩んで、苦しい思いも星導と乗り越えていた。
けれどある日、星導が東の方へ旅立ち数日不在だった。小柳はひとりで街に出た。篭もりっぱなしでは腹の子も気分が乗らないだろうと思ったのだ。気分転換がてら、寄り道したり休憩したり。腹の子に問いかけながら、ふらふらと散策していた時、事件は起こる。
腹に気を取られ、背後から忍び寄る気配に気づくのが、ほんの一瞬遅かった。
路地裏の角を曲がった直後、強烈な衝撃が小柳の背中を襲う。何者かに突き飛ばされ、コンクリートの壁に叩きつけられた。その拍子に腹部を鋭利なもので刺されたのか、あるいは強く打ち付けられたのか。激痛とともに、視界が急速に色を失っていく。
『⎯⎯ぁ、』
口から零れたのは、悲鳴ではなく、空虚な吐息だった。
男たちの下卑た笑い声が聞こえる。何処かの勢力が送り込んだ刺客だったのか、あるいは星導の首を狙う野犬の類か。小柳は薄れゆく意識の中で、必死に腹を庇った。自分の命などどうなってもいい、だが、この命だけは。
冷たい地面に倒れ伏した小柳の視界の端に、鮮やかな赤が広がっていくのが見えた。それが、彼が星導との間に授かった希望の「色」だと理解するのに、そう時間はかからなかった。
「流れちった。俺の、俺たちの子ども。」
知らなかった。叢雲と出会った時のふたりからはもうそんな空気は消えていた。宝物が空へと流れて行ったとは思えないくらい、飄然としていたのだ。
「それからだよ、アイツが過保護になったのは。」
ずっと不思議だった。星導の本質を知れば知るほど、小柳に対する星導の反応が繋がらないのだ。
番とはいえ、星導はきっとここまで他人に執着心を持たない。叢雲や伊波だって、仲間としては本当に大切にされていると思う。けれども、星導の全てを捨てて護ってくれるかと言われるとそうではない。
とにかく、小柳に対して依存しすぎていたのだ。
「その時俺が壊れてから、アイツは変わった。分かりやすく言うと…んん、そうだな、アイツの人生が俺中心に回り始めた、みたいな。俺が笑っていれば世界は平穏で、俺が傷つけば世界は終わる。……星導にとって、俺はそういう存在なんだ。実際あん時俺を襲ったヤツらは星導自ら地獄に送ったっぽいし。」
言葉が出なかった。叢雲が羨ましいと思っていたものは思っていたよりも断然可愛らしいものではなかった。むしろ黒く濁り、恐ろしく歪んでいる。
「ッは!そんな顔すんなよ。そりゃもちろんあん時は死んでやろうかと思うくらいツラかったけどさ、星導が俺のこと愛してやまないのは嫌という程理解したから。星導の中心が俺なように、俺の人生の中心も星導でできてる。アイツが死ぬ時が俺の死ぬ時だし、俺が死ぬ時がアイツの死ぬ時だ。…いや、結局何が言いてぇかって言うと…うーん、星導に着いてきてくれてありがとう。」
「は」
「アイツさ、たぶん、孤児院を取り込んだのも、ライを受け入れたのも、お前を引き込んだのも、全部未練があるからなんだよ。本当に楽しみにしてた。子供のことも、俺と親になれることも。あの時だって死ぬほど心配しながら渋々家を空けたんだ。」
ああ、容易く想像がついてしまう。
ぺしょぺしょになりながら小柳に抱き着いて嫌だと駄々を捏ねる姿。きっと出発する当日も、扉の前で何度も小柳に縋りついたのだろう。
それなのに、帰ってきたら愛しの番が何者かに襲われていて、楽しみにしていた宝物も消滅。彼はその時、どんな気分だったのだろうか。きっと小柳の元を離れた自分をおかしくなる程に恨んだだろう。
「お前らがこうして生きてくれてるだけで、星導はきっと、多少なりとも救われてるはずだから。」
「…なんで僕たち?オオカミやないと意味ないやん」
「んー?まあまあ、……そこはさ?…あいつにとってはお前らも、俺が守りたかった『未来』の一部ってことなんじゃねぇの。俺が、あの時失ったはずの、温かい場所の続き。」
小柳はベッドから這い出し、床に散らばったシャツを適当に羽織った。身体中に残る薄紅の花弁が先ほどの濃密な時間を雄弁に物語っている。
「まだ諦めては無いんだけどな。でもまあ、そもそも孕めたのが奇跡みたいなもんだから、二度目があるかはわからない。腹も傷ついたし。」
「諦めたら許さん」
「っはは!なに、お前も楽しみにしてくれんの?」
「僕が生きてるうちに産め。その子が成長した姿も見たいからなるべく早めに頼むわ。」
「そうか。なら頑張らなきゃな」
くつくつと喉を鳴らして白い綿をわしゃわしゃと撫でる。なんやァ!と声を荒らげているが心做しか嬉しそうだ。
ちょうどその瞬間、コンコンとノックの音が聞こえるとともに伊波が顔を出した。どうやら説教は終わったらしい。未だ機嫌は悪そうだが。
「キレていい?」
「やば」
「お前もお前だからね?満更でもないの知ってるからな?」
「スゥー………さぁ?知らんね。」
じわじわと小柳との距離を縮めて終いには壁に追い込む伊波。伊波に壁際まで追い詰められた小柳は、観念したように両手を軽く上げた。
「降参降参。そんな怒んなって」
「怒るよ。誰のせいで書類が山積みになってると思ってんの」
「……星導?」
「お前も」
キッと睨む伊波に叢雲が堪えきれず吹き出す。
伊波はもう何度も言い続けているのだ。伊波がこのトップに近い場所に位置づいてから、何度も見てきた光景。うつつを抜かし職務を放棄する星導と、その星導を叱らず満更でもなさそうに受け入れている小柳。何度言ったって意味がないことは分かっている。けれどやるべきことはやらないといけなくて、伊波は毎回奮闘しているのだ。この組織が好きだから、星導と小柳のことが大切だから。やるべきことをやらなければ潰れてしまう。それだけは避けなければならない。
本当に伊波はできるヤツだ。もう星導を引き摺り下ろしてお前がトップになれば?と何度も思った。けれどきっと、伊波はそれを望んでいない。星導と小柳の元で、叢雲と共に彼らを支えることが彼の本望なのだ。
伊波は額を押さえながら、大きく息を吐いた。
「ロウは止められただろ」
「止められると思うか?」
「思わない」
「どっちだよ」
「でも止めろ」
「無茶すぎる」
横暴な伊波の言葉に小柳がッハ!と豪快に笑った。
努力はするわ、と信用のならない言葉を吐いて小柳は体を清めに向かった。
やればできるあの男はきっと数時間のうちに仕事を終わらせて小柳の元へ向かってくるであろう。ならば今のうちに綺麗にするべきだと判断した。
抱えていたものを叢雲に吐き出して、多少は心が軽くなったような気がする。いずれタイミングが来たら伊波にも伝えてやらなければならない。
そのタイミングが案外早く来ることになるとはこの時思いもしていなかったけれど。
✦︎✧︎✧✦
「ほしるべ」
最近の小柳はなんだか調子が悪そうだった。気分が優れなそうなこともそうだが、基本眠そうにしているのだ。何度も吐いたり、食事も喉を通さなかったり。水ですら気持ち悪いと言う。
さすがに苦しそうにする番相手に発情するわけにもいかなくて、もうしばらくご無沙汰だ。寂しさを紛らわすように小柳を後ろから抱きしめて項に跡をつけていれば、腕の中から舌足らずに名前を呼ばれた。
「なぁに、気持ち悪い?」
「んや。…今日、お前が出てる間に医者呼んだんだけど」
「えなにそれ聞いてない、…わざわざ言うってことは何、重い病気とか…」
「ばか、ちげぇよ。…………察せよ」
わざわざ体の向きを変え、正面から抱き締める形に落ち着いた小柳がプイッと顔を染めてそっぽを向く。
なんだ、それ。
動揺でバクバクと跳ねる鼓動に気がついた小柳がふはっと笑った。ああ、可愛い。愛おしい。大好き。
「小柳くんの口から聞きたい」
「……妊娠、してるって」
言葉を求めたのは自分なのに、その言葉を聞いた途端星導の瞳から大きな雫がひとつ、ふたつ。
ああもう、前が見えない。小柳の顔を見たいのに、なにか言葉にしたいのに震えて声にならない音しか出ない状況がもどかしい。
「4週目だって。……ほしるべ」
「…ッ、ぅん゛……ちょ、ちょっと待ってね」
早く収まれとゴシゴシと目元を拭っていたら小柳に腕を掴まれる。ぽろぽろと涙を流す星導がなんとか言葉を紡ごうと努力しているその姿が愛おしく思えてしまった。
小柳は星導の手を優しく握り返し、自分の腹へとその大きな手を導いた。まだ平坦な、しかし二人の絆を証明する小さな生命の宿る場所へ。
「…いるよ、ちゃんと。」
小柳が苦笑混じりにそう言うと、星導は堰を切ったように小柳の胸元に顔を埋めた。絹の着物が涙で濡れていくのが分かる。
「ずっと……ずっと、ずっと待ってた。俺たちの……っ!また、逢いに来てくれたんだ」
震える声で何度も繰り返される言葉に、小柳は愛おしそうに星導の藤の髪を撫でた。
かつて流してしまった「色」の記憶が、今はこうして確かな温もりとして二人の間にある。かつての絶望は、決して無駄ではなかったのだと、今の星導の泣き声が教えてくれているようだった。
やはり焦る必要は無かった。もちろん努力はしていたけれど、無理はしていない。辛抱強く待っていればきっと、その時が訪れる。そう信じたのは間違いではなかったとようやく証明することができた。
「おれ、俺、絶対護るから。小柳くんのことも、この子のことも。次こそ護ってみせる。」
「ッ俺も、こいつのこと護るよ。お前だけじゃない、ふたりで護るんだ。」
「………うん。」
顔を上げた星導はようやく気がついた。目の前の慈しむような表情をした愛しい人の瞳から、星導と同じ雫が溢れていることに。
小柳ごと上半身を起こさせて、交代するように星導の胸元へ小柳を抱き寄せる。必死に酸素を取り込もうとしゃくり上げる小柳はそっと星導の背中に腕を回した。
「嬉しいね」
「うれしい、っ、もうだめかと、思った…ッ」
「もうあんな思いさせないから。」
出来ることなら外に出ないで欲しい。組織の管轄内とはいえ、治安の悪いことには変わりない。
外出する際は星導が共に出かけられるときだけ。他の護衛がいても、伊波や叢雲がいてもダメだ。それでは護れない。星導だって外泊はしないし、出来ることなら長時間小柳の傍を離れたくない。どうにかして伊波を説得しようと星導は更に小柳を抱き締めた。
「小柳くん」
とびきり甘く名前を呼べば、ん、と顔を出す。額同士を合わせて、ふたりから零れる涙を無視して手を繋いだ。
「これからも苦しいと思うけど、俺が傍にいるから。きっと、ライもカゲツも助けてくれる。だから、絶対に独りで抱え込まないで。」
「…ぅん。ほしるべがいるから大丈夫。死ぬほど甘やかせよ」
「もちろん。いっぱい食べて、いっぱい寝よう。お腹の子と自分のことだけ考えてればいいから。」
ふたりで手を繋いで、抱き合って、キスをして、散々泣き腫らした。
お互いにもう流す涙もないというタイミングでノックが2回。返事をすれば叢雲がチラリと顔を覗かせた。
「伊波が『医者呼んだ形跡あるからなんでか聞いてきて』やって」
「さすが」
「気づくマ?…まあ、俺最近寝てばっかだったじゃん、アレ多分悪阻やね」
「おそ…ってなんや?」
「分かりやすく言うとつわりね。」
「つ、わり……つわり!?つわりって、アレやんな、えーっと……伊波呼んでくる!」
「諦めたな」
「諦めたね」
嵐のように去っていった叢雲が、数秒して嵐のように戻ってきた。叢雲に手を引っ張られて連れられた伊波は何も内容を知らされていないのだろう。「え、なに!?怖いんだけど」と困惑しており、真っ赤な目をした星導と小柳を見て更に混乱。そりゃあそうだろうな、と星導と小柳はふたりして喉を鳴らした。
「ライ。」
「え、はい、なに」
「これから忙しくなるぞ」
小柳が泣き腫らした目で、しかしこの上なく晴れやかな微笑みを浮かべてそう言った。
「どういうこ、と⎯⎯」
伊波は眉をひそめ、訝しげに二人の様子を交互に見る。星導の腕の中に収まる小柳の、どこか柔らかくなった表情。そして、小柳の腹部に添えられた星導の手。察しのいい伊波はその光景を理解するのにそう時間はかからなかった。
「……は?お前、まさか」
小柳がふはと小さく笑い、肯定するように頷いた。
「身篭った。…悪いな、今までみたいに動き回れそうにないわ。」
「待って、どういうこと、何も分からない。え、お前は男だよね?」
「……そういえばそこからか。まあ長くなっから簡単に言うと俺は白狼、人間じゃない、以上。」
「簡単すぎるわバカ!」
色々調整しなきゃじゃん、と懐から手帳を取り出しおそらく活動内容を整理している。
伊波は呆れと驚き、そしてどこか隠しきれない幸福感を含んだ表情で、手帳のページを猛烈な勢いでめくった。
「…とりあえず、おめでとう。 当面の警備体制は全面的に見直し。取引先への連絡は俺が全部押し返す。それと、今すぐ隠家の空調と衛生管理のチェックを⎯⎯」
立て板に水のごとく指示を飛ばす伊波の背後で、叢雲が静かに笑みを浮かべていた。その瞳には、この歪で、けれど確かに温かい「家族」の光景への祝福が宿っている。
「……よかったな、オオカミ。」
おめでとう。と叢雲の短くも重い言葉に、小柳は深く頷いた。かつての絶望も、癒えない傷跡も、すべてはこの瞬間のための布石だったのだと今は思える。
小柳は、忙しなく頭を回す伊波と、それをどこか他人事のように眺めながら小柳の腹に温もりを感じている星導を交互に見やり、ふっと息を吐いた。
「おい、ライ。そんなに眉間に皺寄せんなよ。これからが本番なんだから。」
「うるさいな、誰のせいだと思ってるんだよ……!」
いっつもいっつもさぁ、とここぞとばかりに毒づきながらも、以前よりもずっと丁寧に、小柳の座る位置にクッションを配置した。星導がそれを「流石だ」とばかりに満足げに見つめる。
西の街は、相変わらず紫煙と喧騒に包まれている。だが、この古びた隠れ家の中だけは、静謐で、奇妙なほどに満ち足りた空気が流れていた。
星導は小柳の手を握りしめたまま、その額に優しく口づけを落とす。かつて二人で描いた夢が、今、再び確かな鼓動となってお腹の中に息づいている。
嵐のような日々が始まることは分かっている。だが、今の二人には、それを乗り越えるための「守るべき理由」と、隣に並び立つ「絆」があるのだ。
星導は視線を窓の外、闇夜に揺れる提灯へと向けた。この街の王として、たった一人の想い人の番として、そしてこれから産まれてくる子の父として、彼は静かに誓う。
今度こそ、何があってもこの平穏を離さないと。
✦︎✧︎✧✦
「俺、小柳くんに似た子がいいなぁー」
「いーや、絶対星導に似てるね」
「まだ産まれてもないのに」
「親の勘」
「俺も親ですけど??」
「ッハ、そうな。」
上等な布団に包まれて笑い合うふたりは、数週間後、その腹にそれぞれに似たふたつの命が宿っていることが発覚することをまだ知らない。
外では夜風がそっと通り過ぎ、二人の未来を祝福するように、遠くで提灯の灯りが優しく揺れていた。
終
長いな……………(感想)
最後まで閲覧頂きありがとうございます。
ずっと書きたかった2周年パロディになります。 書きたかったものを詰め込んだらこうなりました。
ぜひ今回も楽しんで頂けますと幸いです୨୧ ˊ˗
【追記】
フォロワーさん200人突破と累計いいね数2.2万突破ありがとうございます> < ՞
大感謝です。今後ともよろしくお願い致しますꪔ̤̮
コメント
10件
小説でこんなに感動したの久しぶりです😭😭妊娠パロ大好きなので尚更泣けました😭😭😭😭もし続きが出るとしたら楽しみに待たせて頂きます‼️

コメント失礼します いい話すぎて泣いてしまいました マジで最高でした! 書いてくださりありがとう御座います!

もう、本当っっっっっっっっっに大好きです!!!!!妊娠パロ!!!続きってありますか!?!?!?めっちゃ続きが見たいです!考えてなかったら、ごめんなさい!めっちゃ大好きです!!ありがとうございます!!これからも頑張ってください!!