テラーノベル
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山中side
夜、一人で台本を読む。
その内容はかなり重圧で、まだ最後まで通して読むことが出来ていない。
ずっと頭をよぎるのは、こんな大役を果たして自分が引き受けて正解なのかという事。
『チューベローズの棘』
その台本の表紙を撫でながら、ふと頭に浮かぶ相手役の顔。
はやちゃんは台本読めたかな?
ピコン)
間接照明だけが照らす暗い部屋に光るスマートフォンの通知。
手に取ると、今まさに頭に浮かんだ相手からの送信だった。
🩷ー台本読んだ?ー
🩷ーこの台本マジですげえよなー
🩷ー見入るように読みそうになるけど、心の奥の方が締め付けられそうで最後まで辿り着けないー
同じ事考えてた
これはテレパシー?シンパシー?
なんでもいい、ただ同じ時間軸で同じ事を感じ、同じ事に悩む
どれをとってもお揃いに感じてしまう
自分はなんて重たい奴なんだろうか…
🤍ー読んでるけど手が止まっちゃうー
🤍ー最後まで読んじゃいけない気がしてー
🩷ーわかるー
🩷ーめっちゃ難しい役だけどさー
🩷ー俺、サポートするし頑張ろうなー
🤍ーありがとうー
🤍ーはやちゃんいると心強いわー
🩷ーそう言ってもらえると嬉しいー
🤍ー本心だからねー
🩷ーわかってるー
自分の考えが見透かされているようで、身体が熱くなる。
気恥ずかしさから会話を終わらせようとしてしまう自分が悔しい。
🤍ー明日、早いからもう寝るねー
🩷ーおやすみ、柔太朗ー
🤍ーはやちゃん、おやすみー
ここだけ切り取ればカップルのようで、心の隙間から閉ざしたはやちゃんへの気持ちがチラチラと見え隠れしてしまう。
結果、眠る事はなく
最初のページからまた読み直していた。
佐野side
台本をいただいた日、マネージャーは少し困り顔で、どうしたのかと声をかけるとこの話が想像以上に重たいらしく、日本中を元気にと掲げるグループ活動にとってマイナスプロモーションとして働かないかの心配をしているようだった。
ここまで弱気になるマネージャーも珍しく、俺は台本を読みたくてウズウズしながら、家路についた。
家に着くなり、テーブルに開き台本を読み始める。
自分は最初っから台詞をガッツリと読み込むタイプではなく、サラサラと話の筋を頭に入れて内容を理解してから、もう一度台本を詳しく読み込むタイプだが、一つ一つの言葉に並々ならない呪いのようなものが込められているようで、俺は台本にシワがいくほどに握りしめて、文字を凝視していた。
先に進めない、何度も何度も繰り返し同じシーンを読み返してしまう。
俺はふと、柔太朗にも今日台本を届けたと言っていたマネージャーとの会話が頭をよぎり、おもむろにスマホを取り出して、柔太朗に連絡を入れた。
すぐに既読がつく。
もしかしたら同じタイミングで連絡をしようとしてたのではないか?
妄想が湧き立つ。
🤍ー自分もはやちゃんに連絡しようか考えてたー
張り詰めていた空気と引き攣っていたであろう顔が柔太朗の一文で綻ぶ。
🤍ー読んでるけど手が止まっちゃうー
🤍ー最後まで読んじゃいけない気がしてー
同じ気持ちだ。
この気持ちがリンクしているという事でさえ、幸せに思えてしまう。
俺ってなんて重たい男なんだろうか…
🩷ー俺、サポートするし頑張ろうなー
柔太朗を勇気づけたくて、偉そうにも思えてしまう言葉をつい書いてしまう。
怒るかな?
🤍ーありがとうー
🤍ーはやちゃんいると心強いわー
本心だろうな
やっぱり柔太朗とこの役が出来る事が俺の中で誇りでしかない
重大な責務だが、絶対に世の中を震撼させる作品になる事だろう
この映画が公開される頃、俺たちの関係はどうなっているのか少し怖く感じる。
俺は今の関係値を少しでも映画に向けて、前へ進めようと文字を打ち込む。
🩷ー読み合わせ、今度一緒にしない?ー
送信が押せない
その勇気がまだ足りないんだ
🤍ー明日、早いからもう寝るねー
先に途切れられてしまった。
こんなに弱い自分に溜息しかでない。
昔、仁人に言われた言葉をふと思い出す。
💛『柔太朗の事になると色々弱えよなお前』
その通りだ
こんな弱虫な自分に柔太朗が釣り合うなんて、今は1ミリも感じられない。
コメント
4件

投稿ありがとうございます! 大切にしたい人ほど慎重になっちゃうのが勇ちゃんらしくてめちゃくちゃ自然に読めます!! 勇ちゃんには頑張って欲しい!!! 引き続き応援してます!!!!!
うわあああ第38話…!😭💕 真夜中に二人が同じ台本に苦しんで、同じタイミングで連絡し合うの、運命感じすぎでしょ…!「お揃い」って思っちゃう柔太朗の心情も、送信ボタン押せないはやちゃんの弱さも、どっちも尊すぎて胸がギュッてなったよ…。仁人の過去の一言が刺さるね…。読み合わせの誘い、いつか送れますように…!次が待ち遠しいです🌸