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プロローグ:桜井美咲、つみきフィロソフィーと出会う
「今日から、皆さんは『先生』です」
澄み渡るような青空が広がる四月一日。社会人として、保育士としての第一歩を踏み出した桜井美咲は、真新しいエプロンの胸元をぎゅっと握りしめ、背筋を伸ばした。目の前には、柔和な笑みを浮かべた『のいちご保育園』の園長、五十嵐(いがらし)みちるが立っている。五十嵐園長は、かつて自らが受けた劣悪な保育環境と保育士への不当な待遇を反面教師とし、未来を担う子どもたち、そして保育という仕事に誇りを持つ職員たちのために、この園を設立した人物だ。その眼差しは、目の前の新人たちへの期待と、未来への強い意志に満ちていた。
「皆さんの手には、一冊のマニュアルが配られているはずです。それは『つみきフィロソフィー』。私たちの保育の根幹をなす、羅針盤であり、憲法です」
美咲は手元の分厚いファイルに目を落とした。『つみきフィロソフィー』と題されたそのマニュアルは、まるで学術書のような重厚感を放っている。おっちょこちょいではあるけれど、子どもが好きで、誰よりも素敵な保育士になりたい。そんな夢と情熱だけを武器に、この世界に飛び込んできた美咲にとって、そのマニュアルはあまりにも難解で、途方もない壁のように感じられた。
「私たちは、何かを考え、決定し、行動する際、常にこのフィロソフィーに立ち返ります。壁にぶつかった時、悩んだ時、この言葉たちが必ず皆さんを導いてくれるはずです」
園長の言葉は、不思議な説得力を持っていた。
オリエンテーションが終わり、美咲が配属されたのは、元気いっぱいの2歳児クラス『にじ組』。そこで彼女を待っていたのは、指導役となるメンター保育士、吉田陽子(よしだようこ)だった。四十代のベテランである吉田は、すっと通った鼻筋に冷静な光を宿す瞳が印象的な女性だった。その佇まいは、一切の無駄がなく、洗練されたプロフェッショナルの空気を漂わせている。
「桜井さんね。よろしく。分からないことは、見て、聞いて、そして自分で考えて。子どもたちの命を預かる仕事だということを、一瞬たりとも忘れないで」
短く、的確な言葉。その裏には、経験に裏打ちされた厳しさと、深い愛情が感じられた。吉田もまた、家庭では子育てに悩む一人の母親であると後に知るのだが、この時の美咲には、彼女が乗り越えるべき大きな山に見えた。
そして、もう一人。美咲の隣で同じように緊張した面持ちで立っていたのが、同期入社の基地里士太郎(きちりしたろう)だ。名前の通り、何事もきっちりしていないと気が済まない性格で、学生時代は常にトップの成績を収めてきた秀才。しかし、その完璧主義が、予測不能な子どもの世界では、時に大きな足かせとなることを、彼はまだ知らなかった。
「よろしく、桜井さん。お互い、早く一人前になれるように頑張ろう。マニュアルは昨日のうちに全て読み込んできたよ」
きっちりと撫でつけられた髪を揺らし、基地里は分厚いマニュアルを指さした。美咲は、まだ数ページしかめくれていない自分のマニュアルを隠すように、慌てて胸に抱えた。
こうして、桜井美咲の保育士としての日々が始まった。憧れと現実のギャップ、理想と実践の難しさ。数々の壁にぶつかりながら、彼女は『つみきフィロソフィー』の言葉を一つひとつ、その心に刻んでいくことになる。これは、おっちょこちょいな新米保育士が、世界を代表する100人の女性に選ばれるまでの、長く、そして輝かしい成長物語の、ほんの始まりのページである。
つみきフィロソフィー①:安全とは命を守ることであり、安全を全てに優先すること。何よりも大切にすること。
保育士としての日々が始まり、一ヶ月が経とうとしていた。美咲は、めまぐるしく過ぎる毎日の中で、子どもたちの可愛らしさに心を躍らせる一方、自分の無力さを痛感していた。特に、彼女を悩ませていたのが『安全管理』という、保育の根幹をなす業務だった。
その日も、にじ組の子どもたちは、園庭の砂場で元気いっぱいに遊んでいた。美咲は、子どもたちの輪の中心で、一緒に砂のケーキを作りながらも、常に周囲に気を配っているつもりだった。しかし、その「つもり」が、落とし穴だった。
「せんせー!みてみて!」
一人の女の子が、満面の笑みで駆け寄ってくる。美咲が「わあ、上手だね」と応じた、ほんの一瞬。視線をその子に移した、わずか数秒の隙だった。
「危ないっ!」
鋭い声が鼓膜を突き刺した。声の主は、少し離れた場所から全体を見守っていた吉田だった。ハッと我に返った美咲が振り返ると、砂場の隣にある滑り台の上で、一人の男の子が身を乗り出し、今にも落下しそうな体勢になっている。心臓が凍りついた。美咲の脳内が真っ白になるより早く、吉田が駆け寄り、その子を優しく、しかし確実な動きで抱きかかえた。
怪我はなかった。しかし、一歩間違えれば、大事故につながっていた。美咲の背中を、冷たい汗が伝う。
「桜井さん」
子どもたちが室内に入り、午睡の準備を始める頃、吉田が静かに声をかけてきた。
「申し訳ありませんでした…」
「謝罪の言葉はいい。それよりも、なぜこうなったか、どうすれば防げたかを考えて。あなたの頭の中には、常に『つみきフィロソフィー』の最初の項目が叩き込まれていなければならない。『安全とは命を守ることであり、安全を全てに優先すること』。これは、私たちの仕事における絶対条件よ」
吉田の言葉は、責めているというよりも、諭すような響きを持っていた。彼女はマニュアルの該当ページを開き、美咲の前に差し出した。
『保育における100点とは、子どもの命が完全に守られている状態。事故なく、安全に一日を過ごせること。これが達成できて初めて、保育の質を語るスタートラインに立てる。どんなに素晴らしい遊びや学びを提供しても、後遺障害が残る怪我や、命に関わる事故が起きてしまえば、それは全て0点になる』
「今日のあなたの保育は、何点だったと思う?」
吉田の問いに、美咲は言葉を詰まらせた。結果的に事故は起きなかった。しかし、それは吉田がいたからだ。自分一人だったら…そう考えると、血の気が引いた。
「…0点、です」
「そうね。でも、私たちは0点や、ギリギリ100点を目指しているわけじゃない」
吉田は、マニュアルの別の箇所を指さした。『目指すは120点の保育』という見出しが、美咲の目に飛び込んできた。
『100点のサービスは当たり前。お客様が感動するのは120点以上のサービス。保育における120点とは、安全・安心(100点)を大前提として、さらにプラスアルファの価値を提供すること。例えば、子どもの発達段階に応じた質の高い教育プログラム、保護者との密なコミュニケーション、一人ひとりの個性を尊重したきめ細やかな関わり…』
「マニュアルに、マクドナルドの例えがあったでしょう?」と吉田は続けた。
「注文が遅くて、ポテトが冷めている60点の店。普通に美味しくて、清潔な100点の店。そして、店員さんが名前を覚えてくれていたり、子連れに特別な配慮をしてくれたりする120点の店。私たちが目指すのは、この120点の保育。でも、それは100点という土台があって初めて成り立つものなの」
美咲は、マニュアルに書かれたマクドナルドの例を思い浮かべた。
60点の保育: 安全・衛生・保育の質、全てに問題があり、子どもの安全が脅かされている状態。
100点の保育: 安全基準は守られ、清潔な環境。保育士は優しく接し、遊びも充実。
120点の保育: 徹底された安全対策に加え、専門知識に基づくきめ細やかな保育、保護者との信頼関係の構築。
「今日のあなたは、安全という大前提、100点の部分が欠けていた。それでは、どんなに子どもと楽しく遊んでも、意味がない。まずは、この園庭のどこに危険が潜んでいるか、全て洗い出してみて。そして、どうすればそのリスクを限りなくゼロにできるか、具体的な対策を考えて、明日、私に報告してちょうだい」
その日の帰り道、美咲は園庭に一人残り、隅々まで見て回った。滑り台の角度、ブランコの鎖の状態、地面に落ちている小石や木の枝、フェンスの隙間。今まで見過ごしていた無数の危険箇所が、次々と目に飛び込んでくる。自分の認識の甘さに、涙が溢れた。
翌日、美咲はA4用紙3枚にびっしりと書き出した危険箇所リストと対策案を手に、吉田のもとへ向かった。
「滑り台の下には、より厚いマットを敷くべきだと思います。砂場には、子どもが誤飲しそうな大きさの石がないか、毎朝確認します。外遊びの前には、子どもたちに『先生の見える範囲で遊ぼうね』というお約束を、イラストを使って分かりやすく伝えます。そして、私自身は、一人の子に集中しすぎず、常に全体を俯瞰できるように、立つ位置を意識します」
美咲の言葉を、吉田は黙って聞いていた。そして、最後に一つだけ頷くと、「やってみなさい」と短く告げた。
それから美咲の意識は劇的に変わった。アレルギーを持つ子どもの情報を、誰よりも頭に叩き込み、給食の配膳ではダブルチェックを徹底した。午睡中の子どもの呼吸を、一分ごとに確認して回った。それは、強迫観念に近いほどの徹底ぶりだった。
一方、同期の基地里もまた、「安全」の壁にぶつかっていた。彼のきっちりとした性格は、危険を予知し、未然に防ぐことには長けていた。しかし、そのあまり、「あれはダメ」「これも危ない」と子どもたちの行動を過剰に制限してしまい、遊びが全く発展しないという新たな悩みを抱えていた。
「桜井さんはいいよな。子どもたちに好かれてて。俺なんて、鬼ごっこをしようって言われても、『走ると転ぶから歩いてやろう』なんて言ってみんなにそっぽを向かれる始末だ」
昼休憩、基地里は力なく肩を落とした。
「私も、この間まで0点だったよ。でも、吉田先生に教わったんだ。安全っていう100点を確保した上で、どうやって120点の楽しい保育を作るか。それが私たちの仕事なんだって」
美咲の言葉に、基地里はハッとした顔を上げた。マニュアルの言葉が、ただの文字列ではなく、具体的な目標として二人の心に届いた瞬間だった。
安全を確保することは、子どもをがんじがらめにすることではない。危険を予測し、環境を整え、ルールを共有することで、子どもたちが安心して思いっきり遊べる「舞台」を作ること。その舞台の上で、子どもたちがどんな素晴らしいドラマを繰り広げるか、その手助けをすることこそが、120点の保育なのだ。
美咲は、まだ120点には程遠いかもしれない。しかし、彼女は確かに、そのスタートラインに立った。揺るぎない「100点」という土台を、自らの手で築きながら。
つみきフィロソフィー②:報酬の還元先は誰であるのか。利用者第一。
初夏の気配が感じられるようになった頃、美咲は新たな壁に直面していた。それは「保護者対応」という、子どもと直接関わるのとはまた違う、複雑で繊細なコミュニケーションの世界だった。
きっかけは、にじ組のある保護者、田中さんからの相談だった。田中さんの息子、健太くんは、家では野菜をほとんど食べず、偏食に悩んでいるという。
「先生、園では何か工夫してくださっていますか?家でも試せるような、良い方法があれば教えていただきたいのですが…」
切実な表情で尋ねる田中さんに対し、美咲は頭の中でマニュアルを検索した。給食指導の項目には、『一人ひとりのペースに合わせて、無理強いはしない』とある。
「お母さん、ご心配ですよね。園では、まず一口頑張ってみようね、と声かけはしていますが、無理強いはしない方針なんです。ご家庭でも、あまり神経質にならず、長い目で見守ってあげるのが一番かと思います」
マニュアル通り、正論だ。しかし、その言葉はあまりにも定型的で、田中さんの心には届かなかった。彼女の表情が、わずかに曇ったのを美咲は見逃さなかった。「そうですか…分かりました…」と力なく呟き、田中さんは帰っていった。
その日の夕方、吉田が美咲に声をかけた。
「桜井さん、今日の田中さんとのやり取り、少し気になったわ」
「え…何か、まずいこと言いましたか?マニュアル通りに対応したつもりだったんですが…」
「そうね、間違ってはいない。でも、正しくもない」
吉田は、再び『つみきフィロソフィー』を開いた。
『保育士の報酬の源泉は、保護者からの保育料と、国や自治体からの補助金(税金)に行き着く。つまり、保育士は、子どもたち、保護者、そして市民の皆様から報酬をいただいていると考えるべきである。上司の顔色をうかがうのではなく、常に利用者(子ども、保護者、地域社会)の利益を最優先に行動することが求められる』
「私たちの給料は、どこから出ていると思う?」
「園からです」
「その園のお金は?保護者が汗水垂らして働いて得たお金で支払ってくださる保育料と、みんなが納めた税金よ。特に、私たちが担当している0歳から2歳児の保育には、多額の公的資金が投入されている。その重みを、私たちは常に感じていなければならないの」
吉田の言葉は、美咲の胸にずしりと響いた。自分はただ、園に雇われている従業員だとしか考えていなかった。その報酬の先に、保護者の苦労や、社会全体の支えがあることなど、想像もしていなかった。
「マニュアル通りに対応するのは、間違いじゃない。でもそれは、私たちの都合、園の都合よ。田中さんが本当に求めていたのは、マニュアルの答えじゃない。我が子のために、一緒に悩み、考えてくれるパートナーとしての姿勢だったんじゃないかしら。それが『利用者第一』ということだと思う」
美咲は顔を上げた。そうだ、自分は「園の決まりですから」という盾の後ろに隠れて、一人の母親の悩みに真摯に向き合うことを怠っていたのだ。
「公的資金は、不正利用が許されないのはもちろん、一部の人だけが得をするような使い方、つまり、私たちの自己満足のために使われるべきものでもない。保護者が『この園に預けてよかった』と心から思ってくれること。それが、報酬をくださる方々への、私たちなりの還元なのよ」
園長が、なぜあれほど保育士の待遇改善に熱心なのか、その理由も少しだけ分かった気がした。保育士が心身ともに満たされ、誇りを持って働くこと。それが巡り巡って保育の質を高め、結果的に子どもと保護者の利益につながる。園長は、その好循環を生み出そうとしているのだ。
翌日、美咲は健太くんが降園する時間を見計らって、田中さんに声をかけた。
「田中さん、昨日は申し訳ありませんでした。定型的なお答えしかできなくて…」
深々と頭を下げる美咲に、田中さんは驚いた顔をした。
「健太くんの偏食のこと、私なりにもう少し考えてみたくて。園での給食の様子で、何かヒントがないか、細かく観察してみます。例えば、健太くん、ピーマンは苦手ですけど、細かく刻んでハンバーグに混ぜたら、昨日は気づかずに食べていたんです。もしかしたら、見た目や食感が苦手なだけかもしれません。今度、調理の先生にも相談して、ご家庭でも試せそうなレシピがないか、聞いてみてもいいですか?」
美咲の言葉に、田中さんの目にみるみる涙が浮かんだ。
「先生…ありがとうございます。そこまで考えてくださるなんて…。本当に、嬉しいです」
その日から、美咲と田中さんは、交換日記のように連絡帳で健太くんの食事の様子を共有し始めた。美咲は栄養士や調理師に相談し、吉田にもアドバイスを求めながら、様々なアプローチを試した。すぐに偏食が治ったわけではない。しかし、田中さんの表情は、日に日に明るくなっていった。自分のために、息子のために、真剣に向き合ってくれる保育士がいる。その事実が、彼女の心を何よりも軽くしていた。
「報酬の還元先は、利用者」。その言葉の意味を、美咲は体で理解した。それは、単にサービスを提供するということではない。相手の心に寄り添い、信頼関係を築き、共に歩むパートナーとなること。その対価として、私たちは報酬という名の「信頼」をいただいているのだ。
美咲の胸に、保育士という仕事への新たな誇りが、温かい光となって灯り始めていた。
つみきフィロソフィー③:子どもの人権を守り、最大限の利益を考慮しているか。自主性を育む。看守ではなく指導者を。
梅雨のじめじめとした空気が、保育室の中にも漂っているようだった。雨で外に出られない子どもたちのエネルギーは、室内での騒がしさとなって爆発する。美咲は、日に日に増していく子どもたちの自己主張の強さに、ほとほと手を焼いていた。
「こらっ!走らない!」「静かにしなさい!」「ダメって言ってるでしょ!」
気づけば、自分の口から出るのは禁止や命令の言葉ばかり。特に、活発でやんちゃな男の子、翔太くんとの関わりには頭を悩ませていた。翔太くんは、おもちゃを独り占めしたり、友達を押しのけたりすることが多く、美咲はつい強い口調で叱ってしまう。しかし、叱れば叱るほど、翔太くんは反発し、言うことを聞かなくなるという悪循環に陥っていた。
「私は、まるで子どもたちを監視する『看守』みたいだ…」
そんな自己嫌悪に陥っていたのは、美咲だけではなかった。同期の基地里も、深刻な顔でため息をついていた。
「吉田先生に言われたよ。『基地里先生のクラスは、静かで規律正しいかもしれない。でも、それは子どもたちの自主性を奪った上での静けさだ。あなたは優れた看守かもしれないが、指導者にはなれていない』って…」
基地里のクラスでは、ルールが絶対だった。おもちゃは決められた場所に、決められた数だけ。少しでも散らかそうものなら、即座に彼の厳しい声が飛ぶ。子どもたちは、基地里の顔色をうかがい、失敗を恐れて新しい遊びに挑戦しようとしなくなっていた。
二人の悩みを聞いていた吉田は、いつものように『つみきフィロソフィー』のページを静かに開いた。
『子どもの人権とは、一人の人間として大切に扱われること。自分の考えや意見を持ち、表現する自由があること。子どもも大人と同じように人権を持っている。大人の都合や考えを押し付けるのではなく、常に「その子にとって何が一番良いのか」という最善の利益を最優先に考えなければならない』
「二人とも、『子どもの人権』なんて言うと、なんだか大げさに聞こえるかもしれないわね」と吉田は口火を切った。
「でも、要は、子どもを一人の対等な人間として尊重できているか、ということ。大人の言うことを聞かせるための存在じゃない。彼らには彼らの考えや感情がある。それを、私たちは理解しようとしているかしら?」
吉田は、マニュアルに書かれた『看守ではなく指導者を』という項目を指さした。
『看守は、ルールを一方的に押し付け、従わない場合は罰を与える。子どもの行動を監視し、制限することに重点を置く。一方、指導者は、ルールやマナーの意味を伝え、子どもが自分で考え、判断し、行動できるように導く。子どもの自主性や自立心を育むことに重点を置く』
「例えば、おもちゃの取り合いが起きた時」と吉田は具体例を挙げた。
「看守的な対応は、『翔太くんが先に使ってたんだから、貸してあげなさい!』と一方的に裁くこと。でも、指導者ならどうする?」
美咲と基地里は、顔を見合わせた。
「まずは…どうして取り合いになったのか、両方の話を聞く…とかですか?」とおそるおそる美咲が答える。
「そう。まずは『二人とも、このおもちゃで遊びたかったんだね』と、気持ちを代弁してあげる。共感してあげる。その上で、『どうしたら、二人で仲良く遊べるかな?』と問いかける。答えを教えるんじゃなくて、子どもたち自身に考えさせるの。『順番に使う?』『一緒にお城を作る?』って、選択肢を提示してあげるのもいい。そうやって、子どもが自分で問題を解決する力を育てていくのが、私たちの役目よ」
それは、美咲にとって目から鱗が落ちるような考え方だった。自分は、子どもをコントロールすることばかり考えていて、彼らが持つ「解決する力」を全く信じていなかった。
その日の午後、早速その機会は訪れた。翔太くんが、積み木を高く積み上げていたところに、別の女の子がぶつかってしまい、ガラガラと崩してしまったのだ。案の定、翔太くんは顔を真っ赤にして、女の子を叩こうと手を振り上げた。
「翔太くん!」
美咲は、思わずいつものように叫びそうになるのを、ぐっと堪えた。そして、翔太くんの前にしゃがみこみ、その手と、女の子の間にそっと自分の手を入れた。
「翔太くん、びっくりしたね。せっかく作ったのが、壊れちゃって、すごく悲しかったし、悔しかったんだよね」
まず、翔太くんの気持ちを代弁する。翔太くんは、叩こうとした手を下ろし、美咲の顔をじっと見つめた。その瞳には、怒りだけでなく、悲しみの色が浮かんでいた。
「うん…」
次に、女の子の方を向く。
「〇〇ちゃんも、わざとじゃなかったんだよね。ごめんねって言えるかな?」
女の子は、こくりと頷いて、「ごめんね」と小さな声で言った。
「翔太くん、〇〇ちゃん、ごめんねって言ってるよ。どうしたら、また楽しく遊べるかな?今度は、二人で一緒に、もっとおっきいの作ってみない?」
美咲がそう提案すると、翔太くんは少し考えた後、小さく頷いた。そして、女の子に「いいよ」と言って、二人で再び積み木を拾い始めた。
それは、ほんの小さな一歩だったかもしれない。しかし、美咲にとっては、大きな大きな変化だった。力で押さえつけるのではなく、子どもの心に寄り添い、彼らの力を信じて導く。それが「指導者」としての関わり方なのだ。
基地里もまた、自分のやり方を見直し始めていた。完璧なルールで縛るのではなく、子どもたちが安全に、かつ自由に試行錯誤できる環境とは何かを考え始めた。少し散らかっていても目をつぶり、子どもたちが夢中になっている姿を、まずは見守るようになった。彼のクラスから、少しずつ子どもたちの笑い声が聞こえるようになってきた。
子どもの自主性を育むことは、自己肯定感や問題解決能力、社会性を育むことに繋がる。マニュアルに書かれた言葉の意味を、美咲は実感として理解し始めていた。子どもは、管理されるべき「看守の囚人」ではない。無限の可能性を秘めた、尊重されるべき一人の人間なのだ。その可能性の芽を、愛情という水と、信頼という光で育んでいくこと。それが「指導者」である保育士の、何よりの喜びだと、美咲は気づいた。
つみきフィロソフィー④:自ら考え、発案し、行動できているか。ガルシアに手紙を届けられるか。
夏が盛りを迎え、園内は来るべき夏祭りの準備で活気づいていた。そして、その一大イベントの企画担当として、美咲と基地里に白羽の矢が立ったのだ。園長直々の指名だった。
「今年の夏祭りは、君たち新人に任せてみたい。自由に、子どもたちが最高に楽しめるものを企画してほしい」
園長の期待に満ちた言葉に、美咲は「はい!」と元気よく返事をしたものの、内心は途方に暮れていた。何を、どうすればいいのか、全く見当がつかない。隣の基地里も、きっちりとした性格ゆえに、前例のないタスクを前にして固まっていた。
「とりあえず、去年の資料を見てみよう」「園長に、具体的な指示を仰いだ方がいいんじゃないか?」
二人は、誰かからの指示を待つばかりで、時間だけが過ぎていった。問題点に気づいても「でも、去年もこうだったし…」と見て見ぬふりをする。まさに「指示待ち」の状態に陥っていた。
そんな二人の様子を見かねたのか、ある日の昼休み、園長がふらりと休憩室に現れた。
「二人とも、どうだい?ガルシアには、無事に手紙を届けられそうかい?」
唐突な質問に、美咲と基地里はきょとんとした。
「がるしあ…ですか?」
「ああ」と園長は笑って、一つの物語を語り始めた。
それは、戦争の最中、敵地にいるガルシア将軍という人物に、大統領からの密書を届けるよう命じられたローワン中尉の話だった。ローワン中尉は、ガルシア将軍がどこにいるのか、どうやって会えばいいのか、一切の指示を受けなかった。しかし、彼は自ら情報を集め、知恵を絞り、幾多の困難を乗り越え、見事に任務を遂行したのだという。
「もし、ローワン中尉が『ガルシアはどこですか?』『どうやって行けばいいですか?』と指示を待っていたら、手紙は永遠に届かなかっただろう。保育の現場も同じだ。『〇〇してください』と言われるまで動かない、問題があっても誰かがやってくれるだろうと他人任せにする。そんな指示待ちの人間は、結局、誰からも必要とされない」
園長の言葉が、二人の胸に突き刺さる。
「君たちは、ローワン中尉だ。夏祭りを成功させるという任務を託された。どうすれば子どもたちや保護者が喜ぶか、どんな困難が予想されるか、どうすれば乗り越えられるか。答えはマニュアルには書いていない。君たち自身で考え、発案し、行動するんだ。ガルシアに手紙を届けるようにね」
園長はそう言うと、二人の肩をぽんと叩いて去っていった。
休憩室に残された美咲と基地里は、しばらく無言だった。しかし、やがて美咲が顔を上げた。その瞳には、いつもの不安げな色はなく、決意の光が宿っていた。
「やろう、基地里くん。私たちで、ガルシアに手紙を届けよう!」
その日から、二人の行動は一変した。
まず、彼らは「ガルシアは誰か」を定義した。それは、夏祭りの主役である「子どもたち」だ。そして、「手紙」とは、「最高の夏の思い出」だ。
二人は、ただ去年の企画をなぞるのをやめた。全クラスの子どもたちに「夏祭りで何がしたい?」と聞いて回った。すると、「おばけやしきがやりたい!」「わたあめがたべたい!」「おみこしをかつぎたい!」といった、活き活きとした声が次々と集まった。
「お化け屋敷か…。安全管理が大変そうだな」と眉をひそめる基地里に、美咲は言った。
「大変だからこそ、やりがいがあるんじゃない?どうすれば安全に、かつ最高にスリリングなお化け屋敷が作れるか、みんなで考えようよ!」
美咲は、保育室の環境構成を変えることを提案した。「このパーテーションを使えば、迷路が作れると思います。懐中電灯を持って探検する形にすれば、子どもたちも主体的に遊べるはずです」。
基地里も、彼のきっちりとした性格を、今度は創造的な方向で発揮し始めた。お化け屋敷の動線計画や、お神輿の設計図を meticulous(細心)に描き上げ、必要な材料をリストアップした。
彼らは、自分たちだけで抱え込まず、他の保育士たちにも積極的に助けを求めた。「夏祭りについて、皆さんの意見を聞かせてください。一緒に最高の思い出を作りましょう!」。
最初は「新人に任せておけばいい」と遠巻きに見ていた先輩たちも、二人の熱意と、具体的な計画に、次第に心を動かされていった。絵の得意な先生が、お化け屋敷の看板を描いてくれた。音楽が得意な先生が、盆踊りの曲を選んでくれた。吉田も、二人の計画書を見て、「危険箇所が洗い出せていないわ。もう一度、子どもの視点でシミュレーションしてみて」と的確な助言を与えてくれた。
自ら考え、発案し、行動する。その主体的な姿勢は、周りを巻き込む大きな渦となり、園全体を一つのチームに変えていった。
美咲は、『つみきフィロソフィー』の言葉を噛みしめていた。指示を待つのは楽だ。しかし、そこには何の成長も、感動もない。自らの頭で考え、未知の荒野に一歩を踏み出す勇気。それこそが、子どもたちの成長を支え、保護者から信頼される保育士になるための、不可欠な資質なのだ。
夏祭りの準備は、まだ道半ば。しかし、美咲と基地里の胸には、確かな手応えと、未来への高揚感が満ちあふれていた。彼らはもう、指示を待つだけの新人ではなかった。自らの意志で、ガルシアに手紙を届けようと奮闘する、誇り高き「ローワン中尉」だった。
つみきフィロソフィー⑤:利他の心で行動できているか。周囲への思いやり、そしてペイフォワードへ。
夏祭りの準備が佳境に入るにつれ、美咲と基地里の間には、見えない壁が生まれ始めていた。子どもたちのための最高の夏祭りを、という目的は同じはずなのに、そのアプローチの違いが、些細な衝突を生んでいた。
「お化け屋敷は、もっと手作り感があった方が温かみがあるよ!」と主張する美咲に対し、「いや、子どもの安全を考えたら、既製品の装飾を使った方がリスクは少ない」と基地里は反論する。
「自分の意見ばかり押し付けないでくれ!」
「基地里くんこそ、マニュアル通りで頭が固いんじゃない!?」
お互いの「自分さえ良ければいい」という『利己の心』が、むくむくと頭をもたげていた。協力してくれていた他の保育士たちも、二人のギスギスした雰囲気に、どこか戸惑い、協力の輪は少しずつ小さくなり始めていた。計画は、難航した。
そんなある日の夕方、美咲が一人で装飾用の提灯を作っていると、そっと隣に座る人影があった。メンターの吉田だった。吉田は何も言わず、美咲の作業を手伝い始めた。
「吉田先生…すみません、私たちのせいで、準備が滞ってしまって…」
「いいのよ。誰にでも、自分の考えが一番正しいって思ってしまう時はあるわ」
吉田は、手を動かしながら静かに語り始めた。
「稲盛和夫さんという経営者がね、『利己の心』と『利他の心』の話をしているの。自分の利益だけを考える利己の心で下した判断は、結局は周りの協力も得られず、うまくいかない。逆に、自分よりも相手の利益を優先する利他の心、思いやりの心で下した判断は、自然と周りの助けを引き出し、物事を良い方向に導く、と」
吉田の言葉は、美咲のささくれた心を優しく撫でるようだった。
『保育の仕事は、子ども、保護者、同僚、地域社会など、多くの人々との関わりの中で成り立っている。より良い保育を提供するためには、自分だけの都合や感情で判断するのではなく、常に周りの人のことを考え、思いやりに満ちた「利他の心」で行動することが大切です』
フィロソフィーのその一節が、頭に浮かんだ。
「利己的な対応と、利他的な対応。例えば、電車で席を譲るか、譲らないか。落ちているゴミを拾うか、見過ごすか。ほんの些細なことだけど、その積み重ねが、その人の人間性を作るし、周りの環境も変えていくのよ」
ふと見ると、吉田が手伝ってくれた提灯は、美咲が作ったものよりもずっと形が良く、綺麗だった。吉田は、自分のクラスの仕事が終わった後で疲れているはずなのに、嫌な顔一つせず、後輩の仕事を手伝ってくれている。まさに、利他の心の体現だった。
「ごめんなさい、吉田先生。私、自分のことしか考えていませんでした」
「気づけたなら、それでいいのよ」
吉田はにっこりと笑うと、もう一つの言葉を美咲に贈った。
「『ペイフォワード』って、知ってる?」
「ぺいふぉわーど…?」
「恩送り、とも言うわね。誰かから受けた親切を、その人に返すんじゃなくて、また別の人に送っていくの。AさんがBさんを助け、BさんはCさんを助ける。そうやって、親切のバトンを繋いでいく。そうすれば、社会全体が優しさで満たされると思わない?」
先輩から教えてもらったことを、後輩に伝える。保護者からの感謝を、別の保護者への丁寧な対応に繋げる。吉田が今、自分にしてくれていることも、まさにペイフォワードなのだと美咲は気づいた。吉田もまた、かつて先輩から同じように助けられ、その恩を今、美咲に送ってくれているのかもしれない。
翌日、美咲はまず、基地里の元へ向かった。
「基地里くん、昨日はごめん。感情的になっちゃって。基地里くんが言うように、安全を第一に考えるのは、保育士として一番大切なことだよね。その上で、どうやったら手作り感を出せるか、もう一度一緒に考えてくれないかな?」
美咲の素直な謝罪に、基地里は驚き、そして少し照れたように言った。
「いや、俺の方こそ、言い方がきつかった。桜井さんの、子どもを楽しませたいっていう気持ち、すごく伝わってくる。俺も、もっと柔軟に考えなきゃな」
二人の間にあった氷が、すうっと溶けていくのが分かった。
美咲は、基地里の設計図の緻密さを褒め、基地里は、美咲の子ども目線のアイデアを認めた。利他の心で相手を思いやり、尊重することで、二人の意見は対立するものではなく、お互いを補い合う、より良いアイデアへと昇華されていった。
その変化は、すぐに周囲にも伝わった。二人が楽しそうに協力し合う姿を見て、一度は遠ざかっていた先輩たちも、「何か手伝うことある?」と自然に声をかけてくれるようになった。美咲が吉田から受け取った「親切のバトン」は、基地里へ、そして他の職員へと、確かに繋がっていったのだ。
利他の心は、自己犠牲ではない。相手を思いやることで、巡り巡って自分も助けられ、結果的に全体の利益が最大化される。その美しい循環を、美咲は身をもって学んだ。夏祭りの準備は、再び熱気を帯び、以前にも増して強い一体感に包まれていった。
つみきフィロソフィー⑥:行動が感情をつくることを理解して保育を計画できているか。
蝉時雨が降り注ぐ、八月の週末。のいちご保育園の園庭は、子どもたちの歓声と、保護者たちの笑顔で埋め尽くされていた。美咲と基地里が、そして園の職員全員が心を一つにして作り上げた夏祭りが、ついにその日を迎えたのだ。
手作りの提灯が温かい光を放ち、基地里が設計した頑丈なお神輿を、法被姿の子どもたちが「わっしょい、わっしょい!」と担いで練り歩く。美咲が発案したお化け屋敷からは、子どもたちの可愛らしい悲鳴と、それに続く爆笑が絶え間なく聞こえてくる。
美咲は、汗だくになりながら、かき氷の屋台で次々と注文をさばいていた。目の前には、目を輝かせてかき氷を頬張る子どもたち。その横で、「先生、本当に楽しいです!」「こんな素敵な夏祭りを、ありがとうございました!」と、保護者たちが口々に感謝の言葉を伝えてくれる。
その光景を眺めているうちに、美咲の胸の奥から、じわりと熱いものが込み上げてきた。
(ああ、楽しい…!なんて、幸せなんだろう…!)
これまで感じたことのない、強烈な達成感と、喜び。保育士になってよかったと、心の底から思える瞬間だった。
ふと、美咲は『つみきフィロソフィー』の最後の項目を思い出していた。
『私たちは、「楽しいから笑う」「悲しいから泣く」と考えがちだ。しかし、心理学では「行動が感情をつくる」というメカニズムが明らかになっている。まず行動があり、その結果として感情が生まれ、その感情が次の行動に影響を与えるのだ』
まさに、今の自分がそうだった。
夏祭りの担当を任された時、最初にあったのは「面倒くさい」「できるわけがない」というネガティブな感情だったかもしれない。しかし、「ガルシアに手紙を届ける」というミッションを与えられ、とにかく行動した。
子どもたちに話を聞き、企画を練り、仲間とぶつかり、助け合った。その一つひとつの行動が積み重なり、今日という日を迎えた。そして、子どもたちや保護者の笑顔という最高の結果を目の当たりにして、「楽しい」「嬉しい」「やりがいがある」という強烈なポジティブな感情が生まれた。
この感情は、間違いなく、美咲の次の行動に繋がっていく。
「もっと子どもたちが喜ぶ企画を考えたい!」
「もっと保護者に信頼される保育士になりたい!」
「もっと、この仕事で輝きたい!」
マニュアルに『推し活』の例えが載っていたのを思い出す。最初は友達に勧められて何となく動画を見ただけ(受動的な行動)だったのに、そのカッコよさに「好き!」という感情が生まれ、気づけばライブに行ったりグッズを集めたりする(積極的な行動)ようになる。
美咲にとって、夏祭りの成功は、保育という仕事が、本当の意味で「推し」になった瞬間だったのかもしれない。
祭りが終わり、後片付けも済んだ静かな園庭で、美咲と基地里、そして吉田は、並んで夜空を見上げていた。
「桜井さん、基地里くん。本当にお疲れ様。最高の夏祭りだったわ」と吉田が優しく微笑む。
「いえ、私たちだけじゃ…吉田先生や、皆さんのおかげです」と美咲が答える。
「そうだね。でも、最初に行動を起こしたのは、君たち二人だよ」と基地里が頷いた。
美咲は、この一年間を振り返っていた。
安全という100点の土台の上に、120点の保育を築くことの難しさと尊さ。
私たちの報酬が、どれだけ多くの人々の思いに支えられているかという事実。
子どもを看守ではなく指導者として、一人の人間として尊重することの大切さ。
指示を待つのではなく、自らガルシアに手紙を届ける主体性。
利他の心が生み出す、ペイフォワードという優しさの連鎖。
そして、行動が感情をつくり、未来の自分を形作っていくという、力強い真実。
半年前、ただ分厚い壁にしか見えなかった『つみきフィロソフィー』の言葉たちが、今では一つひとつ、美咲の血肉となり、彼女の心を、保育を支える骨格となっていた。
「私、もっともっと、素敵な保育士になりたいです。この園で、吉田先生や園長先生みたいな…」
美咲の言葉に、吉田は静かに首を振った。
「あなたは、私のようにならなくていい。あなたは、あなたの保育を見つければいいのよ。そのための羅針盤が、ここにはあるんだから」
吉田が指さした先には、月明かりに照らされた『のいちご保育園』の園舎があった。
世界を代表する100人の女性保育士へ。その途方もなく長い道のりは、まだ始まったばかりだ。しかし、桜井美咲の心には今、確かな羅針盤と、共に歩む仲間、そして何よりも強い情熱の炎が灯っていた。
おっちょこちょいな新米保育士の、新人編は、こうして幕を閉じる。しかし、それは次なるステージ、『かけだしメンター編』への、希望に満ちた序章に他ならなかった。
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