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『偽りの無能、真の覚醒〜転生皇女はすべてを奪い返す〜』
歪む空間。引き裂かれる視界。
「お兄様――!」というローゼマリーの、可憐で愛おしい声が耳の奥で途切れた瞬間。
私の脳内で、何かが音を立ててブチ切れた。
「……は?」
気がつくと、私は見知らぬ薄暗い大広間の真ん中に立っていた。
周囲には、魔王ディルクが「世界の外側の闇」から呼び出したという、あの黒い霧を纏った大鎧の騎士たちが、数十体も壁際に並んでこちらを睨みつけている。
空間そのものが歪められ、私は最愛の妹と分断されてしまったのだ。
「ローゼマリー……? どこだい、ローゼマリー……。返事をしておくれ……」
私は周囲を見回すが、そこに私の世界のすべてである、愛しい薔薇の姿はなかった。
その事実を完全に理解した瞬間、私の顔からすべての血の気が引き、普段の完璧な貴公子の微笑みは跡形もなく消え去った。
「おい、人間……。この魔女様の迷宮に迷い込んだ大罪を、その命で――」
前方の騎士が、何やら偉そうに大剣を構えて言葉を紡ごうとした。
だが、その言葉が最後まで紡がれることはなかった。
「――黙れ」
私が冷徹に呟いたその瞬間。
私の足元から、大広間全体、いや、この迷宮の数フロアを丸ごと包み込むほどの、漆黒に狂い咲く『極限の氷結魔法陣』が爆発的に展開された。
怒りのあまり、私の魔力は完全に制御のタガが外れ、暴走寸前の超高密度で周囲の空間をメリメリと圧壊し始めていた。
「私のローゼマリー。僕の可愛いローゼマリー。僕がお茶を入れて、髪を梳かして、一生甘やかして守ると決めた、世界で一番尊い私の妹。……そのローゼマリーと僕の、貴重な二人きりの時間を、よくも、よくも引き裂いてくれたね……っ!」
「な……な、何だこの魔力は……っ!? 貴様、ただの人間のはず――」
「五月蝿(うるさ)いと言っているんだ、不細工なブリキ缶ども」
私がパチンと指を鳴らした刹那。
ドガァァァァァンッ!!!!
広間全体に、絶対零度を遥かに下回る、すべてを凍結・粉砕する「氷の暴風雨」が吹き荒れた。
先ほどローゼマリーの魔法すら空間の歪みで受け流したという騎士たち。しかし、今回のお兄様の魔法は、その受け流す次元の隙間ごと、力技で『凍らせて圧殺』したのだ。
「ギャァァァァァッ!?」
騎士たちは空間ごとガチガチに氷漬けにされ、そのまま大理石の床ごと木っ端微塵に爆発し、黒い霧すら残さずに完全消滅した。威力が高すぎる。空間の歪みなど、それを上回る魔力の暴力で叩き潰せば関係ないのだ。
◇
だが、私の怒りはこれっぽっちも収まらない。
むしろ、1秒でも早くローゼマリーの元へ駆けつけなければ、彼女が寂しがっているかもしれない(※実際は一人でも魔王をワンパンできるほど強い)。そのシスコン的妄想が、私の足をさらに加速させた。
「ローゼマリー! 今すぐ行くからね!」
私は迷宮の通路を、優雅な貴公子のステップでありながら、新幹線のような神速で突き進んだ。
途中で、魔王が仕掛けたという悪趣味な『無限回廊の罠』が発動する。進んでも進んでも、同じ景色が繰り返されるという、精神を狂わせる高等魔術。
「なるほど、進めないのかい。ならば――」
私は立ち止まることすら面倒臭くなり、右手を目の前の「壁」へと向けた。
――『極大氷杭・連弾(アイシクル・ガトリング)』。
ズドドドドドドドドドガァァァン!!!!
前方にある頑丈な石壁、その奥にある部屋、さらにその奥にある通路の壁まで、お兄様は魔法の力技で『すべて直線状にブチ抜いた』。
迷宮の構造やルートなど関係ない。目的地に向かって、壁を破壊して最短距離の直線で進めばいいのだ。
「な、何なんだあの男は……っ!? 迷宮を……魔女様の迷宮を、ただの物理破壊で突き進んでくるぞ……っ!?」
壁の向こうに潜んでいた魔王の隠密眷属たちが、瓦礫の中でガタガタと震えながら絶叫している。
「あ、そこにいたのかい。ローゼマリーの居場所を知っているなら、素直に吐いておくれ。そうすれば、一瞬で楽にしてあげるよ?」
お兄様は、死神のような冷たい無表情のまま、彼らの首元に巨大な氷の刃を突きつけた。
「し、知らん……っ! 空間はランダムにシャッフルされて――」
「使えないね。ゴミは分別して処分するに限る」
パキン。
情報を持たない眷属たちは、悲鳴をあげる暇もなく氷像にされ、お兄様が通り過ぎる際の風圧だけで粉々に砕け散った。
◇
その後も、お兄様の「不条理な蹂躙」は続いた。
落ちてくる底なしの落とし穴の罠は、落ちる前に穴ごと氷で埋め尽くして平地に変え、
精神を狂わせる幻覚の霧は、私の放つ圧倒的な魔力圧の風圧だけで全て吹き飛ばした。
魔王軍が誇る最強のトラップの数々は、ブチギレたシスコン公爵の前では、ただの「歩きにくい障害物」にすらなり得なかったのだ。
「ああ、ローゼマリー。今どこにいるんだい……。僕がいないと、君は美味しくお茶も飲めないというのに……。待っておくれ、今すぐこの悪趣味な城ごと、全てを消し飛ばしてでも君を見つけ出してみせるからね……!」
凄まじい眼光で、次々と壁を爆破しながら進むお兄様。
その背後は、もはや迷宮ではなく、ただの「一直線の巨大な氷のトンネル」と化していた。
魔王が恐怖のあまり手に入れたという世界の外側の闇の迷宮は、アルベルトお兄様という別の意味でブレーキの壊れた化け物の手によって、今、内側から凄まじい勢いで崩壊させられようとしていた。
「――おや? この先から、とても愛おしい魔力の波長を感じるね」
何十枚目かの壁を爆破した先、お兄様はついに、
探していた最愛の妹の魔力の残滓を捉えた。
その瞬間、先ほどまで悪鬼羅刹のようだったお兄様の顔に、パァァァッと聖母のような優しい微笑みが戻る。
「待っていてね、ローゼマリー。
お兄様が今、助けに行ってあげるからね!」
お兄様は満面の笑みを浮かべ、さらに凄まじい速度で、
瓦礫を撒き散らしながら迷宮の奥へと突撃していくのだった。
ねむ
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#転生
コシ
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耀聖(ようせい)
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コメント
1件
いやあ、今回のアルベルトお兄様、最高にブッ飛んでましたね…!「ローゼマリーとの貴重な二人きりの時間を引き裂いた」って発想がもう完全にシスコンの鏡。空間ごと凍らせて圧殺とか、壁をぶち抜いて直線で進むとか、怒りのパワーで理不尽を力尽くでねじ伏せるスタイルが痛快すぎる。でも最後の聖母スマイルへの切り替えが最早ホラー級で笑いました。続き、めっちゃ気になる…!