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レンコン 煮付け
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うわあ、第203話、めちゃくちゃ泣けました……。ジャスティンの冗談と一途な愛の告白のギャップがたまらないですね。「一目惚れ」を「雷に打たれる」って言うマフィア語、グッときました。最後の「あと百の夜が必要だ」には胸が詰まりました。お互いを思い合う二人の姿が本当に美しかったです。
「遺言状を書き変えたよ、今はさまざまな件が現在交渉中なんだ、俺が死ぬ頃には、ここでの事業はわずかに残った以外、全て清算されている、お前らは何のしがらみもなく、潤沢な資金の元、新しくやっていけばいい」
ジャスティンはそう言って深く椅子にもたれなおした・・・風呂に入ったばかりなのだろうか、髪からシャンプーの良い香りがしているその匂いには覚えがあった、宗一郎は言った
「一つだけ質問していいですか?」
「質問が多いなカウンセラー、どうぞ」
「あなたと・・・竜馬は・・・その・・・」
ジャスティンがにやりとした
「何が言いたいんだ?いやらしいな宗一郎、俺達がお互いのケツを掘りあっている、ホモ仲間だとでも?」
宗一郎が前髪の生え際まで真っ赤になって、椅子を蹴って立ち上がった
「くっ・・・口が悪い!!とんでもなく口が悪いぞ!いつ俺がそんなことっっ!!」
「うそ!うそ!カワウソ!!」
ケラケラジャスティンが楽しそうに笑う、宗一郎がまだ耳を赤くして、怒りだす一歩手前で言った
「お・・・俺が憧れてたあなたには、そんな所はなかった!」
「お上品なマフィアなんかいるかよ、馬鹿じゃねーの?」
「かぁ~!なんか竜馬の前と俺の前じゃ、態度違うくないっスか?」
ジャスティンは笑い出したら止まらなくなったみたいだ、咽ぎながらヒーヒー言って、宗一郎のリアクションにいちいちバカ笑いしている
「マフィア語で「一目惚れ」って言葉を「雷に打たれる」って言うんだよ、雷に打たれたことは?宗一郎」
「はぁ・・・いいえ・・・俺はないです・・・まだ・・・」
バツが悪いように宗一郎がもじもじして言った
「俺の場合はアイツ(竜馬)をひと目見ただけで十分だったよ」
宗一郎は身じろぎもせずジャスティンを見つめた・・・こんなにあっさり竜馬への愛を語るなんて思いもよらなかった
流れる絹糸のような金髪・・・・のみで削ったような完璧な横顔・・・笑いすぎて今は目に涙が溜まっているが、病に侵されてやつれているとはいえ、ジャスティンは魅力のかたまりだ
たしかに彼は美の女神に愛されている・・・そんなヤツにこんな事を言わせている竜馬を改めて凄いと思った、それと同時に竜馬が今まで恋人を作らなかったのも納得した・・・だって竜馬の美の基準はジャスティンなのだ
「竜馬が数分後に男だと分かった時は、これ以上ないほどガッカリしたのを覚えているな」
ジャスティンは懐かしそうに目を細め、誰に言うでもなくつぶやいた
「肉体関係があるかないかは大した問題ではなかろう、セックスをしていようといまいと、俺がアイツを愛していて、俺がいなくなった後を心配しているのに変わりはないんだから」
「ここまでするなんて心配し過ぎじゃないですかね?」
宗一郎が尋ねた
「やりすぎるのが性格でね、竜馬にも言われたよ」
宗一郎は深く椅子にもたれなおした
「・・・感謝しています・・・」
ポツリと宗一郎が自分の恩人に向かって言った
「恩義に必ず報いたいと思っています・・・」
ジャスティンが宗一郎に優しく微笑んだ
「青臭いこと言うなよ宗一郎、今はまだ会社は俺のものだが、いずれはお前の椅子ができる、準備を整えておくんだな、後は竜馬や俺の配下の彼らが面倒を見てくれる、それについては何も問題は起こらないだろう」
宗一郎が笑った
「それにしても最初聞いた時には、竜馬が「首切り」なんて出来る訳がないと思いましたよ、ワハハハ」
「馬鹿だな、お前がやるんだよ、宗一郎、ワハハハ」
「え?」
「え?」
とばかりに宗一郎がジャスティンに顔をむけ、目を見開いた・・・ジャスティンは面白がって宗一郎のマネをしている
「・・・マジ?・・・ですか?」
。 .:・.。. .。.:・
「何笑ってるの?なんか楽しそうだね」
二人がじっと見つめ合っていると、ドアを開けて竜馬が入って来た
「竜馬助けて・・・宗一郎が俺にいやらしいことを言うんだ」
ジャスティンがガウンの裾を萌え袖にして、口元を隠し「ヨヨヨ」と弱々しく嘆く
「ええっ?ぎ・・・逆だっ!!どっちかと言えば俺がいやらしいことを言われてるんだぞ!」
宗一郎がまた立ち上がり、憤慨して竜馬に説明しようとした
「疲れたよぉ・・・竜馬ぁ・・・もう1ミリも動けない、ベッドに連れてって」
ジャスティンが両手を広げて、竜馬をウルウルした瞳で見つめる
「ええっ?大変だ!・・・うんうんベッドに行こうね・・・まったくダメじゃないか、宗一郎!こんなにジャスティンを疲れさせて」
竜馬が慌ててジャスティンを抱き上げて「めっ」とばかりに宗一郎を睨む
「俺か?俺が悪いのか?」
宗一郎は憤慨して言った、そうして竜馬に抱かれたジャスティンは、竜馬からは見えないように肩越しに宗一郎に中指を立て「3の倍数のアホ顔」をして去って行った
ジャスティンは宗一郎というおもちゃを手に入れた
。 .:・.。. .。.:・
. .。
「もっと強く叩いて」
竜馬はジャスティンの背中をバシバシ叩いた
「もっと強く 」
もう一発 二発・・・・
「肩甲骨の・・・そば・・・ 今度はもう少し下・・・ 」
ジャスティンはシルクのパジャマの下だけを履いて、上半身裸で左脇を下にして、ベッドに横になっていた、頭を何個も重ねたクッションにぴったりくっつけて、呼吸困難で脂汗をかいている・・・口を大きく開けて、理学療法士が肺の中の有害物を叩いて緩める方法を、竜馬にレクチャーしてくれた方法だ
今はこれを毎日決まった時間にやらないと、有害物(痰)が固まって呼吸ができなくなる
ゼ―・・・ゼ―ッ・・・「ちゃんと・・・知ってたぞ・・・お前が・・・俺を・・・ぶん殴りたがってた・・・こと・・・ 」
とジャスティンは喘ぎ喘ぎ・・・こんな時でも冗談を飛ばす
「なんだ!バレてたか!」
ハハッと竜馬は明るく笑ってその冗談にのった
「これは昔、君が僕の買ってきたポテトチップスを黙って食べちゃった恨みの、お返しっっ! 」
バチンッッ!と竜馬は肩甲骨を叩いた、ジャスティンの癌細胞は、今やここが落ちれば降伏やむなしの最後の拠点 「肺全体」と「心臓」に危険なほど迫っていた
ジャスティンは笑いながら目を閉じ・・・必死で口と鼻で、空気を吸い込もうとしているが、うまくいっていない
「・・・少し・・・・寝よう・・か・・・な・・・」
酸素マスクを竜馬に着けてもらって、ジャスティンが言った
「そう?それじゃ僕ランチを用意してくるね、起きたらお腹が空くだろうから」
「ああ・・・助かるよ・・・・」
ジャスティンは竜馬に背を向けて、そのまま眠ってしまった
竜馬はそっと部屋の扉を閉じた、本人の前では勤めて明るくしているが、本当はジャスティンの背中ではなく・・・壁でも思いっきり殴りたい気分だった
。 .:・.。. .
キッチンのインターフォンで、ウェンディがジャスティンのランチの支度が出来たから隣の棟まで取りに来てほしいと言った、竜馬が今朝 「セントマイルズ・リサイクル・ショップ」 で買ってきた炊飯器に、米とその5倍の水で竜馬が「お粥」を作っている
この所・・・ジャスティンが食べているのは、ほとんど流動食で、それにマフィンを浸して消化しやすいようにぐしゃぐしゃにつぶす、それでもジャスティンの噛んで飲み込む力には有り余るらしい
ウェンディも今では、ほとんどミキサーにしてピューレにしている、それを見たジャスティンは飲み込む力が弱くなっているにもかかわらず 「これじゃドロシーの離乳食よりひどい」 と文句を言った
なので竜馬は日本の「お粥」の精神を説き、仏の道を目指す僧侶の主な食事が「お粥」だと言って、腹八分目で煩悩を払拭するのだとか、思いつくかぎりの口からでまかせを並べ立てた
すると何だか分からないが「お粥」は 高尚らしいと判断したジャスティンは、ウエンディの作るピューレよりも 「お粥」を積極的に食べてくれるようになった
竜馬は相変わらず色んな食品を買ってきては、ジャスティンに見せた、それはジャスティンの表情を見たいからであって、実際に食べられないのは良く分かっていた
冷凍庫には竜馬の作った「カレー」がシステマの容器に入れられて冷凍されている、竜馬はいつか以前のように奇跡的に元気な日が出来て、一緒に竜馬の作ったカレーを食べて、パクパク噛みながらしゃべる、行儀の悪いジャスティンが見たいと希望を持った
でもそれはもう叶わぬ願いだった・・・そこへ宗一郎がキッチンへ入って来た
「なぁ!竜馬!この下半期の経営計画書のここの部分が謎なんだ、ジャスティン今起きてる?ちょっと聞きたいんだけど・・・」
宗一郎が竜馬に聞いた
「何でもかんでもジャスティンに頼るんじゃないよっっ!」
つい竜馬がついキツイ口調で言ってしまった、宗一郎は少し面食らって黙ったまま竜馬を見た
「・・・ごめん・・・ 」
すぐに竜馬は謝った
「・・・どうした? ジャスティンに何かあったのか? 」
宗一郎は優しく言って竜馬の肩を叩いた
「ジャスティンは・・・」
竜馬は首を振って、しばらくじっと手に持っている流動食が入った保存容器をじっと見た
中身はドロドロで、とてもじゃないがこんなもの食べ物には見えない 、竜馬は声を震わせて言った
「ジャスティンは・・・もう・・・無理だ・・・」
口に出した途端、涙で前がかすれた、ガシャンッと保存容器を落して竜馬が両手で顔を覆った、保存容器の蓋が剥がれて中身が床にちらばった、竜馬は危うく、こぼれて散らばった容器の中身を踏んで滑りそうになった、宗一郎が腕を伸ばして竜馬をきつく抱き寄せた
ヒック・・・「うっうぅぅ~~・・・・ 」
「お前がそんなことでどうするんだよ・・・」
宗一郎が優しく背中を撫でる
「わかった! これからは仕事は俺がなんとかする」
そして竜馬から少し体を離し、眼鏡越しに竜馬を見た
「お前は最後まで傍にいてやれ・・・・」
宗一郎も声を震わせて言った
。 .:・.。. .
ジャスティンはベッドの上で、7年もの間、読もうと試みては挫折していた、500ページ上下巻のローマ帝国兵法の物語を読んでいた
。 .:・.
そして最後のページを読み終わると大きくため息をついてパタンと本を閉じた、まさに壮大な物語だった、カスファルトの砦を生き残った正規軍全員で落した時の描写は、心臓をドキドキさせて読んだ
または愛していた同胞がやられ、懇願されて自らの手でその者の命にとどめを刺したシーンでは、まるで自分の事のように涙した
さすがに2時間この細かい文字を読んでいると、目が疲れてこめかみがズキズキする、最近では昼夜おかまいなしに疲れると途端に眠くなる・・・少し離れた所で竜馬がソファーに座って居眠りをしていた
膝の上にはシルバーのノートパソコンが広げてあり、今彼は「フォーチューン500」に名を連ねる、大企業相手に人員削減マニュアルの、最新バージョンの作成に取り組んでいた
―仕事熱心なヤツだ・・・宗一郎ときっと成功するだろう―
。 .:・.。. .。.:・
今は竜馬のキーを打つ手は止まり、コックリ・・・コックリ・・と、その可愛い頭が規則的に船を漕いでいる
「・・・ま・・・・竜馬! 」
優しくジャスティンが名前を呼んだ「んあ?」と竜馬が目をこすって起きた
「眠いなら、こっちへきてお眠り 」
ジャスティンは自分のフワフワの毛布をめくって竜馬を呼んだ
「でも・・・この再就職プログラムツールを作ってしまわないと・・・ 」
「それは明日俺がやってあげる、だからこっちへおいで 」
「ん~・・・・」
竜馬がもそもそとトレーナーとジーンズを脱いで、白のタンクトップと黒のボクサーパンツだけになり、ジャスティンの隣に体を滑り込ませてきた、ジャスティンがクッションを一つ取って、竜馬の頭の下に入れてやると至福のため息をついて気持ちよく体を伸ばした
「愛しているよジャスティン・・・おやすみ・・・」
そう言ってジャスティンに体を寄せ、竜馬は睡眠に身をゆだねた・・・
「ずっと以前に・・・お前は俺の愛は「ただの支配だ」と言ったの覚えてる?」
ジャスティンは眠る竜馬に優しく話しかけた
「それは間違っているよ、竜馬」
竜馬の毛布をかぶった、美しい筋肉質な尻の盛り上がりを視線で愛でる
「俺も愛しているよ竜馬・・・俺がどれほどお前を愛しているか夢の中で教えてあげよう・・・お前が目を開けている時は俺は何も言えない、ただ・・・馬鹿の一つ覚えのように愛してるとブツブツ言うだけだ・・・なんの芸もない 」
そっと竜馬の髪に手を入れ、優しく撫でる
「冬の真夜中のようなお前の黒髪、星を集めたようにキラキラと輝くお前の大きな瞳、笑った時に美しく曲がる唇・・・その小さな顔に全部収まっているだけでは飽き足らず、完璧なお前の体・・・もしかしてお前は本当にエルフなのかもしれないと何度思ったことか、その優しい言葉遣いさえも・・・俺にどれほどの影響を与えるかお前は知らない、お前はいったい俺にどんな魔法をかけたんだ?これほど年月が経ってもサッパリ覚めない」
聞こえているのかいないのか、夢の中の竜馬は目を閉じたまま大きくため息を漏らした
「お前の横にいると俺は小さくなった気がする・・・訳もなくニヤけるんだ、これが愛なのかとつくづく感じる、何をしてもお前が良いんだ、お前が一番なんだ」
ゴホンと一つ大きな咳をして顔をしかめた、ああ・・・肺が痛い・・・
「愛は尊い・・・お前のために俺は良い人間でありたいと思ってしまう、出来ればずっとお前の傍にいたかった、一緒に年を取りたかった、お前の子供をこの腕に抱きたかった、でも俺の人生そう悪くないのかもしれない、なぜなら竜馬・・・人生の早い時期・・・少年の頃に、お前に出会ったから」
ジャスティンも一つ竜馬の横で一つ大きなあくびをした
「俺は死んだら大気に溶けてまたお前の元に戻ってくるだろう・・・冬の訪れを知らせに小さな初雪になって、お前の肩に降り落ちるよ・・・溶けても全然かまわない・・・たとえ一瞬でも、お前のその温かさに触れられるなら・・・」
タンクトップでは寒そうなのでそっと竜馬の肩まで毛布を掛けてやる 、そしてモソモソとジャスティンも隣に横になる
「春には小鳥になってお前の周りで歌ってあげる・・・歌は・・・そうだな・・・苦手だけど、小鳥だからなんとかなるだろう また・・・お前が「寂しい」と泣いている時は、優しい小雨となってお前の涙を隠そう・・・お前はよく泣くから・・・」
ジャスティンが竜馬の手に手を重ねた
「そして・・・お前が幸せだと笑っている時は、何よりも明るい太陽となってお前を照らそう、ああ・・・願わくば・・・お前を心から笑わせてくれる人がこの先、お前の人生で現れますように・・・」
まるで祈るようにそっと囁いた
「お前がその人に俺の事をどう語るかは、お前に任せる・・・もしその人が耳を傾けてくれるなら、もし、俺のことをその人に語れるとお前が思ったなら・・・その時はこう言ってくれ・・・・俺が感謝していると・・・そして憎いほど嫉妬していると・・・」
笑い交じりに竜馬の手をぎゅっと握った
「俺もまた愛を学んでいる途中だ・・・だから今はお眠り・・・竜馬・・・」
ジャスティンは力尽きたように、静かに目を閉じた
「この愛を語るには、あと百の夜が必要だ・・・」
。 .:・.。. .。.:・
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