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「T3-G1だ! ぼくを迎えに来たんだ」
トウリは音の主が近くにいないか、キョロキョロとあたりを見渡す。
すると、木の向こうから、鉄のかたまりロボットがこちらへ向かってきた。
『トウリ、ヤットミツケマシタ』
「T3-G1!」
トウリは嬉しそうな顔をして、鉄のかたまりに近づいた。
『トウリ。ハヤク、フネヘカエリマショウ』
鉄のかたまりがトウリに向かってそう言った。
自然とは思えない音。
どこか不愉快な音の羅列が、鉄のかたまりロボットから発っせられている。
「あっ、T3-G1! こっちにいるのがユニなんだ。ぼくを助けてくれたんだよ」
『トウリ? ソコニハ、ダレモイマセン』
どうやら鉄のかたまりロボットには、ぼくの姿が見えないらしい。
鉄のかたまりの言葉にトウリはぎょっと顔を強ばらせた。
ゾクッ
トウリは帰るのか?
このまま残ってくれないのだろうか?
そんなことを考えているときだった。
『トウリ。ハヤクフネヘ』
鉄のかたまりロボットがユニを小さな箱宇宙船に乗せようとしている。
トウリは一瞬こちらを向いたが、すぐに笑顔でこちらに手を振って、宇宙船に乗り込もうとする。
「ユニ、またね! またここへ来るから、そのときはクッキーを一緒に食べよう!」
ガツンと殴られたような衝撃を受けた気がした。
あんな笑顔見たことがない。
何だよ、ぼくだけだったのか友達だと思っていたのは。
ふつふつと怒りがこみ上げてくる。
怒りで化けるしてコントロールができないのか、ぼくの姿がコロコロと変わり安定しない。
その様子を見たトウリは、顔をこわばらせた。
あの表情は、ぼくのことが怖いと思っている顔だ。
自分の内側で何かが湧き起こってきた。この感覚は初めてトウリにあったとき以来。
トウリがぼくを不安そうに見ている。ぼくたちは友達だと自信を持って言い放った顔が、不安の表情を隠せずにいる。
ぼくはトウリのその表情が、すごくたまらなく好きだなあと感じた。
ああ、ぼくはやっぱりモンスターなんだ。
人間を驚かして、自分の存在を示すモンスターなんだ。
自分の中で、もやもやしていた気持ちが消え、すとんと腑に落ちた。
「ユニ……?」
どこか不安そうに見るトウリを安心させるように、人間の子どもの姿に化けるする。
そしてぼくは、人間の右手をあげて手を振った。
「うん、トウリ。”またね”」
トウリが宇宙船に搭乗する直前、ぼくを不安そうに、どこか怯えたように見ていた気がして、ぼくの中で何かが生まれた。
この日、ぼくは自分の本性に目覚めたんだ。