テラーノベル
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「流星が早く帰りたい気持ちもわかるよ」
お腹いっぱいと言う春人さん。結構作ったつもりだったけど、綺麗に食べてくれた。
「私が自由にご飯を作れるのは瑞希くんのおかげなんです。私がお世話になってるのに、食費まで出してくれるから」
「当たり前だろ」と瑞希くん。ちょっと顔が赤くなってる。
「流星はねー、葵ちゃんに一途だから。それは信じてあげて?まぁ、こんな仕事している俺たちだけどさ」
はいと静かに返事をすると
「本当に一途なんだよ!今日だって、葵ちゃんの元彼を騙した子を……!あっ、なんでもない」
私の元彼を騙した子?
「バカ」
瑞希くんが怒っている。
「私の元彼を騙した子を?どうしたんですか?」
何をしたの?
瑞希くんが
「実は……」
そう言って、今日のことを話してくれた。
「そうだったんですね。やっぱり騙されてたんだ」
尊が可哀想とかそんなこと微塵にも思わない。
ただ一生懸命働いて将来のために貯めていたお金をやっぱり使われちゃってたんだ。
ああ、なんてバカだったんだろう。
瑞希くん、私のためにそんなことまでしてくれたんだ。春人さんには申し訳なかったけど、正直嬉しい。
「ご馳走様でした!」
帰る春人さんを二人で玄関まで見送る。
「俺、葵ちゃんのご飯を食べたくて、また遊びに来ちゃうかも?」
帰り際に春人さんに軽くハグをされた。
「おいっ!」
瑞希くんが彼を睨みつける。
「ばいばいー。おやすみ!」
最後まで明るい人だったな。玄関を閉めて、部屋に戻る。
「瑞希くん、お茶淹れようか?」
「大丈夫、ありがとう。シャワー浴びてくる。葵、先に入る?」
彼はワイシャツを脱ぎかけていたが、私に気を遣ってくれた。
「ううん、私、まだ片付けがあるから。先に入って」
「何か手伝えることある?無理にご飯作ってもらっちゃってごめんな」
私の頬に手をあててくれる。
「大丈夫、もうちょっとで終わるから。明日休みだし。先にどうぞ」
「うん。わかった」
彼はフッと一瞬笑みを向けてくれた。
瑞希くんが、シャワーを浴びている間、いろいろ考え事をしてしまう。
瑞希くん、春人さんには私のこと話しているんだなとか。今日も私のために動いてくれたんだって。その後、仕事だったのに。こんなに大切にされていいの?ただただ嬉しい。
そんなことを考えていたら、瑞希くんがシャワーを終えて、リビングに戻ってきた。
「ごめん、先に。入ってきて」
上半身裸だ。髪の毛はまだ濡れている。
「ダメだよ、まだ髪の毛濡れてるよ。ゆっくりで良かったのに」
私はタオルを取り、背伸びをしながら彼の髪の毛をわしゃわしゃと拭いた。
「はいっ、これでちゃんとドライヤーして。風邪ひいちゃうよ」
彼と目が合う。
あっ、かっこ良い。
ドキッとしてしまって、視線を逸らす。
「あぁ、幸せ」
瑞希くんはそう呟き、私をギュっと抱きしめた。
「葵は今日の話聞いて、元彼が可哀想だって思った?」
シャンプーの良い匂いがする。
「思わないよ」
「じゃあ、どう思った?」
「正直に言っていい?」
「うん」
正直に彼に伝えて、引かれないかな。
「まず、一生懸命貯めたお金が無くなっちゃったことが悲しかった。バカな自分って、心から思う。それに優亜って子は許せない。尊を擁護するわけじゃないけど、人を騙してまでお金を求めちゃダメだと思う。あと、嬉しかった」
「嬉しかった?」
シャワーを浴びた直後の温かい背中に手を回し
「瑞希くんがここまで考えていてくれて。私のことを想っていてくれて。大切にしてくれて。嬉しかった。ありがとう」
目線を上にあげると、彼の鎖骨の下に私がつけたキスマークが残っていた。
それを見て恥ずかしくなり、彼から離れようとした。が、彼は私を強く抱きしめたまま離さない。
「これが正直な気持ちだよ。瑞希くん、早く髪の毛……」
早く髪の毛を乾かさなきゃって言おうとした時
「ごめん。今日も葵のこと、我慢できそうにないかも」
へっ?それはどういう?
彼は私を離して、浴室に戻って行った。
私の気持ちは、瑞希くんと一緒にいたい。
もし彼が私を彼女にしてくれるのならーー。
仮に彼女になったとしても、彼が仕事を辞めない限り、女の人の影が離れることはない。
例え、瑞希くんにとっては仕事かもしれないけれど、他の女の人と彼が楽しそうに会話をしているという想像をしただけで苦しくなる。
私だけを見てほしいし、私だけに触れてほしい。
かといって、瑞希くんに仕事を辞めてほしいとは思わない。
なんだろう。ああ、頭の中がぐちゃぐちゃだ。
ソファで膝を抱えて座っていると
「葵、ごめん。遅くなって。シャワー浴びてきて」
瑞希くんが戻ってきた。
「あっ。うん。ありがとう」
泣きそうになっていることを隠すために、彼と目線を合わせないようにした。
「ちょっと待って。葵、泣いてる?」
ダメだ、泣きそうじゃなかった。もう涙が出ていたんだ。
「ごめん。なんでもないから」
彼から離れようとした。だけど、そうはさせてくれない。
「ダメ。理由教えて?」
瑞希くんが好きでこんなに悩んでいるなんて言えないよ。
「なんでもない」
彼は私の腕を離してはくれない。
「わかった、じゃあ。強制的ね?」
彼は私を引き寄せ、ふわっと軽く持ち上げた。
「ちょっ!!やだ!おろして!!」
男の人ってこんなに力があるの?
寝室へ連れて行かれ、ベッドの上に下ろされる。
馬乗りになられ、身動きがとれない。
「教えてくれないと、ここから動かない」
それは困るけど。
「俺、さっきの葵の言葉で今日は我慢できそうにない。もうシテもいい?」
そう言われ、彼にキスをされた。
「んん!」
やだ、シャワー浴びてない。
「はぁっ」
唇が離れる。
「話してくれたら、シャワー浴びてきてもいいよ」
どうして夜の瑞希くんってドSなんだろ。さっきまで子どものように可愛かったのに。私が無言でいると、彼は私の首をペロッとゆっくり舐めた。
「いや!」
「話してくれる?」
私が話さなかったら、服を全部脱がされそう。
「話すから、おろして」
私は起き上がり、座り直した。
「私、瑞希くんとずっと一緒にいたいって思っちゃったの」
「えっ」
彼の表情を見ることはできなかった。
コメント
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尊は自業自得。気にすることないよ‼️それより楽しいご飯タイムだったね。葵ちゃん大変だったけど。