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『声の届かない場所で』
tg視点
朝。
目が覚めたら、しおたんが隣で静かに座ってた。
俺の寝顔、ずっと見てたらしい。
so ちぐちん、ほんとに可愛い顔して寝るよね
tg うぅ。恥ずかしい……
so 恥ずかしがるのも可愛いから、見てたいのに
髪をそっと撫でられて、俺は小さく縮こまった。
撫で方がやさしくて、まるで子ども扱いされてるみたいで、
だけど、それが悪くなかった。
tg 今日、学校、どうしようかな……
so 休めば?
tg えっ
so だって、昨日泊まってくれたんでしょ?疲れてるでしょ?もう少し一緒にいたいなって、思っただけ
しおたんの声は、優しい。
押しつけるわけじゃなくて、ただ俺の気持ちを肯定してくれるみたいで。
tg うん。じゃあ……一緒にいても、いい?
so もちろん
俺は布団をぎゅっと抱きしめた。
学校に行かないって、ちょっとだけ後ろめたくて、でもしおたんがいるから平気だった。
スマホを見ると、通知がいくつか来てた。
「ちぐ、今日どうしたの?」とか、「風邪?」とか、クラスのグループLINE。
でも、既読をつける気になれなかった。
なんか——全部、遠く感じた。
tg ……しおたん
so なぁに?
tg なんか、俺、今すごく静か……。全部の音が、しおたんの声だけになった感じする
so …ふふ。それは、いいことだよ
tg え?
so ちぐちんが聞くべき音は、俺の声だけでいいんじゃない?
優しいのに、ぞくりとする言い方だった。
でも、それがすごく甘くて、俺はまた頷いてしまう。
tg 俺、しおたんの声、好き
so 俺も、ちぐちんの声が好き。だから、他の人の言葉なんて、いらないでしょ?
俺のスマホに、また通知が来た。
でもその瞬間、しおたんがすっと手を伸ばして、画面を伏せた。
so ……今日は、俺だけ見てよ
囁かれた言葉が、耳に絡まってほどけない。
そのまま、布団の中に戻されて、胸に抱きしめられる。
tg しおたん……俺、なんか最近変だよ。みんなの声、届かなくなってく……
so …それでいいの。ちぐちんが“ちゃんと俺だけ”になれば、それでいいの
外の音が、またひとつ遠のいた気がした。
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